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【追悼】さいとう・たかを先生が残した、『ゴルゴ』だけでない偉大な作品たち

マグミクス / 2021年9月30日 7時40分

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■……だが、物語は続く。

『ゴルゴ13』で知られる漫画家のさいとう・たかを先生が、9月24日にすい臓がんで亡くなられました。84歳でした。66年にわたる画業に終止符が打たれる日がついに来てしまったことが残念でなりません。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 マンガを読んだことのある日本人で、さいとう先生の代表作『ゴルゴ13』を知らない方はいないでしょう。床屋で、ラーメン屋で、コンビニで買ったスペシャル版で、本屋で買った単行本で、駅の売店で買った「ビッグコミック」で。

 どこにでもあり、どこででも読めた。それが『ゴルゴ13』という作品でした。それはとてつもなく偉大なことなのです。

 どこにでもあり、誰でも読めるということは、多くの人が興味を持つ題材を扱い、理解できるように構成し、すべての絵とストーリーが一定以上のクオリティを保っていなければいけないからです。

 世界各地で起こる紛争をはじめとする時事問題を積極的に取り上げ、マンガとしての面白さを追求した作品に仕上げるのは、極めて難易度の高い作業です。しかも『ゴルゴ13』は連載作品であり、年4冊のペースで単行本を刊行しているためスピードも要求されます。

 さいとう先生は連載開始当初から『ゴルゴ13』はチームプレーが必要だと判断し、脚本家をはじめ、武器などの資料の担当者、作画担当者といったスタッフを集めて分業制を敷き、結果として50年以上の長期連載を実現させました。

 NHKで放送された「漫勉」に登場した際、さいとう先生は「ゴルゴ13」ことデューク東郷のみを自分で描き、他の部分はスタッフに任せる姿が映し出されていました。当時は年齢面の問題かと思っていましたが、いま思い返せば、さいとう先生がいなくなる日に備えた体制だったのです。

 結果として、さいとう先生の訃報を聞いたその日に、連載誌であるビッグコミック編集部から「だが、物語は続く」と、衝撃的なリリースが発表されました。

 さいとう先生は生前から「自分抜きでも『ゴルゴ13』は続いていって欲しい」という希望をお持ちで、ご自身がいなくても連載を継続できるように、さいとう・プロダクションを作り変えていたそうです。優れた才能を集めて作品を永遠のものとする。さいとう先生が作り上げたシステムが見せてくれた未来は、今後も多くの作品を未完の運命から救い出してくれるのかもしれません。本当に偉大な方でした。

■ゴルゴだけではない、さいとう先生の残した多彩な作品

『バロム・1』Kindle版第1巻(リイド社)

 もちろん、『ゴルゴ13』だけがさいとう先生の魅力というわけではありません。1967年に「週刊少年マガジン」で連載された『無用ノ介』をはじめ、『影狩り』『雲盗り暫平』『サバイバル』『ブレイクダウン』など、枚挙にいとまがありません。

 特に、1970年から約1年間連載した『バロム・1』は、1972年に特撮番組『超人・バロム1』として放送され人気を集めましたが、さいとう先生自身も『バロム・1』に対する思い入れは強かったようです。

 マンガ『カメントツ漫画ならず道』(著:カメントツ)で取材を受けたさいとう先生は、『バロム・1』は石ノ森章太郎先生の『仮面ライダー』や『人造人間キカイダー』よりも早かった。現代版へのリブートをやるなら、他の人には任せず自分でやりたい……と語っておられました。実現は極めて難しかったと思われますが、令和の時代に蘇った『バロム・1』をできることなら見てみたかったと思うのは、筆者だけではないでしょう。

 旺盛な創作意欲で多数の作品を世に送り出してきたさいとう先生ですが、メインスタッフが逝去した事情もあり、近年は『ゴルゴ13』と『鬼平犯科帳』の2作品に絞って活動されていました。特に『鬼平犯科帳』は原作者の池波正太郎先生が1990年に亡くなられていたこともあって原作が尽きており、池波先生の他の作品からストーリーを借りるなどして今日まで連載が続けられています。

 このような創作活動を可能にしたのは、もちろんさいとう先生が作り上げたプロダクションの力であることは間違いないでしょう。2021年には『ゴルゴ13』の外伝である『銃器職人・デイブ』の連載も始まっています。

 まだまだやり残したことも多かったと思いますが、さいとう先生のマンガを読むのが生活の一部になっている方々のもとに、これからもずっと新しい作品が送り届けられる。過去、多くの偉大なクリエイターの死とともに抱いた、「あの作品の最後はどうなるはずだったんだろう」という切ない思いを感じなくて済むのは、それは素晴らしいことだと思うのです。

 さいとう先生、長い間ありがとうございました。これからも先生の作品を楽しませていただきます。

(ライター 早川清一朗)

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