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ジブリに負けて「コケた」ディズニー映画3選。面白いのに、出した時期がマズかった?

マグミクス / 2021年11月19日 20時0分

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■『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』に圧倒されてしまい…

 数々の名作を生み出しながら世界のアニメーション界を牽引してきたディズニーですが、長い歴史のなかでは浮き沈みも繰り返してきました。特に、90年代後半から2000年代にかけてはピクサーの『トイ・ストーリー』(1995年)の大ヒットを期に3DCGアニメが台頭し始める激動の時代。日本では、スタジオジブリが世界的なヒットとなる作品を次々と製作しています。

 今回は、ピクサーの勢いに押されたディズニー苦難の時代に製作され、ジブリ作品と公開時期が重なったために日本での知名度が上がらず、興行収入が振るわなかった3作品をご紹介します。

●ヘラクレス(1997年)

『ヘラクレス』は、ギリシャ神話をモチーフにしたアニメ映画。ゼウスの息子として生まれるも、死者の国を支配する神・ハデスの策略によって人間界で育ったヘラクレスが、人間離れした怪力を武器に、神となるためヒーローを目指す物語です。

 ゴスペル調の音楽に、神話の設定をディズニー風にアレンジしたキャラクターが特徴で、特にハデスはディズニーヴィランズ(悪役)として人気が高く、世界中のディズニーランドのハロウィンイベントに登場するほどです。日本でも、吹き替え版の声優にTOKIOの松岡昌宏さん、歌手の工藤静香さんが起用され、東京ディズニーランドでは同作をテーマにしたイベントが開催されました。公開当時の興行収入も全世界2億5300万ドルを記録しています。世界的にヒットを記録したのに日本では知名度が低い理由は……ジブリ作品でした。

『ヘラクレス』が日本で公開される2週間前、7月12日にスタジオジブリが『もののけ姫』を公開。エミシ一族の若者・アシタカがタタリ神の呪いを受けたことから始まる壮大な物語は、国内興収193億円を越え、当時の日本映画歴代興収の新記録を樹立した大ヒット作となりました。そんな状況のなか、『ヘラクレス』は日本国内で健闘したものの力及ばず……「神の誕生」物語が、「神殺し」をテーマにした作品によって印象が薄れてしまったのは皮肉といえるかもしれません。

●ラマになった王様(2001年)

『ラマになった王様』 DVD(ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント)

 南米の深いジャングルの彼方、とある王国の青年クスコは「ワガママ+イジワル+ゴーマン=超ヤなヤツ」として国民から全く信頼されていない王様。気まぐれでクビにした宮殿の相談役・魔女イズマの毒薬でラマになってしまったクスコは、偶然出会った心優しい農夫パチャと出会い、人間に戻るために奮闘します。ディズニー作品のなかでもかなりコメディに寄った作品ですが、生意気なクスコと人の良いパチャが喧嘩しながらも友情を育んでいく、笑って少し泣けるストーリーになっています。

 軽快な劇中歌「パーフェクト・ワールド」は、日本語版では「ラッキー☆ムーチョ」となり、西城秀樹がムーチョ☆ヒデ名義で歌っています。クスコの吹き替えは、俳優の藤原竜也さん、イズマの手下だけれど料理上手でリス語がわかる、どこか憎めない男・クロンクは、声優の堀内賢雄さんが担当しています。しかし、公開当時の世界興行収入は1億6960万ドルと、2000年代のディズニー作品では低記録、日本では興行収入ランキング上位50位にも入らないほど、ディズニー作品としてはふるわない結果となりました。

 そして『ラマになった王様』が日本で公開された2001年7月14日の6日後、7月20日にスタジオジブリの『千と千尋の神隠し』が公開。八百万(やおろず)の神たちが暮らす異界に迷い込んだ10歳の少女・千尋が魔女の湯婆婆が営む湯屋で働き、たくましく成長していく物語は、その年の国内興行収入316億8000万円を記録。当時の日本歴代興行収入第1位となり、2020年に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に記録を更新されるまで20年近くにわたり首位記録を維持していました。

 当時はアメリカでもピクサーやドリームワークスが台頭し、「ディズニー暗黒時代」と呼ばれていた時期ですが、『ラマになった王様』はあまりにもタイミングと相手が悪すぎました。

●トレジャー・プラネット(2003年)

『トレジャー・プラネット』 DVD(ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント)

 ディズニーファンのなかでも、このタイトルを見て、あらすじやキャラクターが思い浮かぶ人はどのくらいいるのでしょうか。『トレジャー・プラネット』は、ディズニー初の全編実写作品『宝島』(日本公開1951年)のリメイク作品です。海から宇宙へと舞台を移し、惑星モントレッサに住む少年・ジムが偶然、宝の惑星「トレジャープラネット」の地図を手に入れ、伝説の大海賊ナサニエル・フリントが隠したといわれる財宝を目指す冒険に出かけます。

 ディズニー作品のなかでは恋愛要素が薄く、スチームパンク調のデザインで統一された世界観など、これまでの作品と比べると冒険色の濃い作品となっており、「隠れた名作」としてコアなファンが多く存在しています。しかし、興行収入は振るわず、当時のディズニーアニメーション史上最高額となる制作費1億4000万ドルに対して興収は約1億ドルと、1985年の『コルドロン』以来の赤字を記録。同年3月に全米公開された『リロ&スティッチ』が2億7314万ドルを記録して世界的に人気が出たため、さらに作品の影が薄くなってしまいます。

 運の悪さはそれだけではありません。手描きとCGを組み合わせた技術と映像美が評価され、第75回米国アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされましたが、作品が全米公開された2002年は『千と千尋の神隠し』が欧米で公開開始した年でもありました。結果、その年は『千と千尋の神隠し』が日本作品初の長編アニメ映画賞を受賞。スタジオジブリに追い風が吹いた年ですが、世界市場に君臨していたウォルト・ディズニー・スタジオには暗黒時代が続く結果となりました。

***

 ディズニーは2006年にピクサーを買収し、創設者ジョン・ラセターがアニメ制作の最高責任者となるまで、厳しい時を過ごします。そこにスタジオジブリの質の高い作品の公開が続いたため、日本での作品の知名度や興行収入がいまいちとなってしまったのは、タイミングが悪かったとしかいいようがありません。

 ちなみに、『千と千尋の神隠し』の海外配給を担ったディズニーを宮崎駿に紹介したのはジョン・ラセター。80年代に、CGに手描きの仕事を奪われることを危惧したディズニー・スタジオから解雇された経験を持つ彼が一枚かんでいることに、因縁めいたものを感じずにはいられません。

 今回紹介した3作品は、配信サービス「Disney+」視聴可能です。興行的に振るわずとも、この時代は試行錯誤を繰り返し、実験的な作品や異色の作品が多いのも事実。ジブリ作品の影に隠れてしまった魅力あふれるストーリーをぜひ体験してみてください。
※本文を一部修正しました(11月20日10時55分)

(マグミクス編集部)

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