ウルトラ兄弟に入れず…謎多き「セブン上司」とは何者なのか? 果たした役割は?
マグミクス / 2022年6月12日 9時10分
■部下に命令無視された挙げ句、消息不明…
「セブン上司」と呼ばれる存在をご存知でしょうか。『ウルトラセブン』の最終2話「史上最大の侵略」(48、49話)に登場したM78星雲人であり、立ち位置としては『ウルトラマン』のゾフィーに近いですが、再登場に恵まれず、メジャーになれなかった存在です。
本稿では、セブン上司とは何者なのか、彼が果たした役割とは何だったのかを考察します。
はじめてセブン上司が登場するのは、ゴース星人との闘いで疲弊し高熱にうなされるモロボシ・ダン(=ウルトラセブン)の夢枕に立った場面。ダンに「M78星雲に帰る時が来た」と帰還指示を出しますが、その時、地球にはゴース星人と彼らが操る最強の怪獣・パンドンの総攻撃が始まる最悪のタイミング。ボロボロでも戦おうとするダンに、セブン上司は「変身してはいかん」と何度も警告しますが、ダンは制止を振り切ってウルトラセブンに変身。結局止めることはできませんでした。
前作『ウルトラマン』の最終回に登場した「ゾフィー」が、「ウルトラ兄弟」の長兄、「宇宙警備隊隊長」として以後のシリーズで大活躍したのに対して、セブン上司は部下のセブンに帰還命令を無視された挙げ句、フェードアウト。その後の消息は不明です。
●セブン上司が果たした役割とは
そんなセブン上司が果たした役割とは何だったのでしょうか。シリーズ終盤での登場という点では、ゾフィーと共通点はありますが、物語上の役割で言うと全く異なる存在だと言えます。
メタ的に言えば、ゾフィーはウルトラマンを救いに来た(物語を強引に解決する)神の如き存在で、作中でも科特隊に「ウルトラマンの仲間」として認識されています。一方、セブン上司は、ダンの変身を阻止する(物語を進める上での)「障害」「カセ」を与えるキャラクターです。「変身してはダメだぞ!」「変身するなよ!」「絶対に変身してはダメだぞ!」とひたすらダンに葛藤をあたえ続け、それが最終変身へのカタルシスにつながっていきます。
お笑いの「押すなよ」「押すなよ」「絶対に押すなよ」という、お約束パターンにも似て、セブン上司が「引き立て役」「ネタふり役」として物語を盛り上げたことで、セブン最終2話が、燦然と輝く傑作ドラマとなったとも言えます。
●セブン上司の正体は?
「セブン上司」はセブンとそっくりな見た目のため、彼が登場するシーンはダンとセブンの対話だと考えた人もいたようですが、円谷プロの公式資料ではダン=セブンとセブン上司は別人として扱われています。
そもそも、脚本家の金城哲夫氏のシナリオでも「ウルトラセブンそっくりなM78星雲人」と明記してあります。脚本によればセブンのテレパシー能力を通じて送られてきたイメージのようです。
セブン上司が、ダンの変身を阻止するため、変身アイテム「ウルトラアイ」を念力でフクロウの時計に飛ばすシーンもありました。これは彼がゾフィーとは違って現場には来れず、これが物理的干渉の限界であることを示しているとも言えます。
また劇中でセブン上司は、セブンのことを「340号」と呼びます。設定では「恒点観測員340号」となっており、上司はそれを管理する存在と考えられています。それではこの「恒点観測員」とは何なのでしょうか。企画段階の設定ではセブンは「宇宙軌道図作成のための恒点観測のために派遣された」存在であるようなのですが、実は「恒点」なる言葉は辞書には載っていない独自概念のようです。
来年2023年は「セブン上司」登場より55年。もし、セブンの若き日が描かれることがあるとすれば、セブン上司の実像とともに、セブンの昔の「恒点観測員」の仕事内容も明らかになるかもしれません。
(やましなミミッチ)
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