意外だけどうまい手!実写化のまさか過ぎるキャスティング 「森田」つながりで…?
マグミクス / 2022年6月10日 15時10分
■「似ている」かどうかは別として思わず納得!絶妙な「実写化」キャスティング
マンガの実写化は、時に「諸刃の剣」です。大人気の作品を、3次元の俳優さんを起用して映像作品に仕上げることがどれだけ大変であるかは、素人でもわかります。ファンタジー作品ならCG技術、バトルマンガであればド派手なアクションシーンの撮影などいろいろな要素が必要になりますが、何よりもその作品のファンが注目するのは「キャスティング」ではないでしょうか。原作の雰囲気と、「似ている」ならよし。「似ていない」「イメージと違う」なら、公開前でもレビューに「低評価」がつけられるなんてこともしばしばと、まさに「キャスティング」は実写映画の肝なのです。
しかし、実写化作品において、たまに「似ている」「似ていない」とは別に、「その手があったか!」と原作ファンも思わず膝を叩く、そんな不思議と「納得できてしまう」キャスティングもあります。今回は、意外とハマって高い評価を得た、そんな絶妙なラインのキャスティングをいくつかご紹介します。
●「森田」だから?と思ってたら……『ヒメアノ〜ル』森田剛
2016年公開の『ヒメアノ〜ル』は、今や巨匠となった古谷実先生の同名マンガの実写化映画です。同作の主演で、人の首を締めることで快感を覚えるサイコキラー「森田」を演じたのは、まさかの当時現役のジャニーズアイドルだったV6・「森田」剛さんです。
R指定作品でジャニーズ俳優が殺人鬼役というだけでビックリですが、さらに森田さんといえばバラエティ番組でイジられ、時にはしゃぎ倒す、そんなイメージがあっただけに意表を突かれました。「森田」つながりだけのキャスティングなのか(ちなみに森田が狙う主人公(演:濱田岳)の名前は「岡田」)、と危惧しましたが……とんでもありません。
焦点の合わぬ眼と無気力な喋り方で平然と嘘をつき、淡々と殺人を重ねていく森田さんの怪演ぶりは、ビジュアルは全然違っていても、まさに『ヒメアノ〜ル』の「森田」そのもの。日常が一気にひっくり返る作品のテイストをキャスティングの時点で暗示していた、まさに「その手があったか!」なキャスティングでした。
■子役がいないから……で諦めない
二階堂ふみとGACKTがポスターの段階で謝っている『翔んで埼玉』ビジュアル (C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
●原作者が「正気かおまえら」 『飛んで埼玉』のGACKT、二階堂ふみ
大ヒットした埼玉ディス映画『翔んで埼玉』(原作:魔夜峰央)は、2022年に続編が公開予定です。多くの方がご存知の通り、原作は1982年に発表されたもので、埼玉をひたすらおちょくる不条理ギャグマンガにして、未完の作品です。大前提として、まず「実写化」されること自体が奇跡のようなものでした。ましてや「人を傷つけない笑い」が全盛の現在においてです。当然、いろんな「お叱り」が想定されているなかで、同作はキャスティングもかなりチャレンジングでした。
主人公で令嬢のような格好をした男子高校生・壇ノ浦百美の役に女優・二階堂ふみさん、転校してきた魅惑の美少年(実は埼玉県人)・麻実麗役に40代のGACKTさんがそれぞれ抜擢されています。この「現実感のなさ」こそまさに、『翔んで埼玉』がただのディス映画に終わらないための肝。監督の武内英樹氏がインタビューでキャスティング意図を「この映画がファンタジーであることを強調するため」と語っているように、性別を超越した二階堂さんの演技力、さらに「寝室に滝がある」なんて普段からTVで浮世離れした言動をし続けているGACKTさんの「非現実性」があってこそ、実現した実写化だったのでしょう。「ボーイズラブ」という形で、ふたりのキスシーンがあるのも不思議な気持ちになります。
●『名探偵コナン』のコナン……は無理だから新一で実写化
「その手があったか!」と思う実写作品では、2006年のドラマ版『名探偵コナン』も挙げられるでしょう。このドラマはタイトルこそ『名探偵コナン』を冠してはいますが、基本的にはコナンの元の姿である天才高校生探偵・工藤新一が主人公です。つまり、無理に「子役」に頭のよすぎる7歳児を演じさせる必要がないのです。
そして「工藤新一」役として抜擢されたのが、小栗旬さんでした(第1作・第2作)。小栗さんは後の実写版『ルパン三世』でルパン役にも抜擢されています。余談ながら、2013年にはアニメ映画『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』が公開されており、一部のファンの間では「小栗旬VS小栗旬」と話題になりました。小栗旬さんの知的で軽妙な雰囲気があれば、ルパンも工藤新一も演じられてしまうのも納得です。
他に例を挙げると、実写版『銀魂』のdTVオリジナルドラマ版『銀魂2 -世にも奇妙な銀魂ちゃん-』では、マダオこと長谷川泰三役をアニメで声優を務めた立木文彦さんご本人が演じ、見事に原作・アニメファンのイメージ通りの演技を披露。また、映画『いぬやしき』では、本来オーラあり余るとんねるずの木梨憲武さんが、実年齢より老けまくりの親父主人公・犬屋敷役になって、機械の体で新宿の空を飛び回ります。同作では、佐藤健さんが20代後半にして高校生役&初の悪役を演じたことも、話題になりました。
上記のように、あの手この手の意表をつくキャスティングで、観客を引っ張りこむ作品は他にもたくさんあります。ビジュアルの再現は確かに重要ですが、「似てる」か「似てないか」とはまた違う、鋭い角度のキャスティングもまた作り手、俳優の腕の見せどころです。
(片野)
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