名張毒ぶどう酒事件:再審棄却 第10次請求、名古屋高裁

毎日新聞 / 2017年12月8日 11時30分

名張毒ぶどう酒事件の再審請求が棄却され不当決定の幕を掲げる弁護団の男性(左)=名古屋市中区の名古屋高裁前で2017年12月8日午前10時6分、兵藤公治撮影

 三重県名張市で1961年3月、女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」の第10次再審請求で、名古屋高裁刑事1部(山口裕之裁判長)は8日、2015年に収監先で89歳で死亡した奥西勝・元死刑囚の妹、岡美代子さん(88)の請求を棄却し、再審を認めない決定を出した。高裁は「(弁護団の)新証拠は無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たらない」とした。

 奥西元死刑囚の死後、再審請求に対する初めての判断だった。第10次請求は高裁、検察、弁護団による3者協議が開かれないまま決定が出された。弁護団は異議申し立てをする方針。

 弁護団は第10次請求で、ぶどう酒瓶の王冠に巻かれていた封かん紙から、製造段階と異なるのりの成分が検出されたとの大学教授の鑑定結果を新証拠として提出した。封かん紙を貼り直したことを示すものだが、捜査段階の自白や確定判決の認定にそうした行為はなく「元死刑囚以外の真犯人が一度開栓して毒物を混入した後、のりで貼り直した可能性がある」と主張した。

 混入毒物は確定判決が認定した「ニッカリンT」でないとの主張を補強するデータも出した。さらに、30人で実験したが自白通りの犯行は不可能だったとも訴え、いずれも元死刑囚以外に真犯人がいる可能性を示す新証拠としていた。

 これに対し高裁は封かん紙ののりの分析結果は誤っているとの見解を示した上で、封かん紙の状況について「事件から長い時間が経過し、このような実験などから結論を導き出すのは合理的でない。実験方法に多大の疑問がある」とした。毒物のデータに関しても「条件のわずかな違いで結果は異なるのに、事件当時の条件の詳細は分からず、実験は何の意味も持たない」と退けた。犯行再現も客観的意味を持つとは考えがたいと判断した。

 奥西元死刑囚は第9次再審請求中の15年10月、収監先の八王子医療刑務所で病死した。岡さんが請求人となって同11月、第10次再審請求をしていた。刑事訴訟法で、有罪判決を受けた人が死亡した場合は、配偶者か直系親族、兄弟姉妹が再審請求できる。

 この事件を巡っては第7次再審請求で名古屋高裁刑事1部が05年に再審開始決定を出したが、同高裁2部が取り消した。最高裁が審理を差し戻したものの、刑事2部は改めて決定を取り消し、最高裁も支持した。【道永竜命、斎川瞳】

毎日新聞

トピックスRSS

ランキング