宮崎県警発案:自転車盗まれる前に「思いやりロック」

毎日新聞 / 2018年1月14日 7時15分

無施錠の自転車に鍵をかける山下巡査(右)ら=宮崎県日向市の日向市駅駐輪場で2017年12月11日、田崎春菜撮影

 市街地の駐輪場で、盗難防止のために無施錠の自転車に警察官が鍵をかける宮崎県警の「思いやりロック作戦」が全国に広がり出している。県警が8年前に開始し、宮崎県内の盗難自転車数は作戦前から半減した。所有者の了解なしに自転車をロックする手法に疑問の声もあるが、成果を上げている作戦に専門家も注目している。

 「駅では無施錠の自転車が目立つ」。昨年末、JR日向市駅近くの駐輪場で山下隆一巡査が、無施錠の自転車の後輪に駅前交番の電話番号を記した鍵をかけた。約15分後、延岡青朋高校3年の黒木佑真さん(18)が交番にやってきて、ロックは解除された。黒木さんは「電車に乗るために急いでいて鍵をかけ忘れた」と話した。

 県警によると、ロック作戦は2010年6月にスタート。生活安全企画課の調査で盗難自転車の半数が無施錠と分かり、「盗まれる前に鍵をかけてしまおう」と発案した。駅やスーパーの駐輪場などを警官らが回って、無施錠の自転車に連絡先を記した鍵をかける。持ち主が連絡してくれば24時間対応する。

 09年の県内の盗難自転車数は2473件だったが、作戦に取り組んだ結果、16年は1357件とほぼ半減。17年は11月末で1167件となっている。

 作戦は他県にも広がっている。熊本県警玉名署は16年11月にJR駅近くの駐輪場で実施し、盗難自転車数は同年1~11月の10件から、17年同期は2件に減少。山梨県警甲府署は昨年7月にJR駅周辺で始め、それから5カ月間の盗難自転車数は9件で前年同期の35件から激減した。山形県警鶴岡署も13年から実施し、同様の傾向にあるという。

 一方で作戦名は「思いやり」だが、「鍵をかけられると不便」「勝手に鍵をかけるのはどうか」との声も出ているという。JR宮崎駅近くの駐輪場を利用した女性会社員(45)は「夕食の準備で急いでいる時に鍵をかけられると手間がかかる」とこぼす。

 宮崎県警生活安全部の日高靖和統括官は「犯罪抑止に効果があり、説明すれば分かってもらえる」と語る。

 自転車盗難に関する論文などがある信州大の今井章教授(実験心理学専攻)は「警官が持ち主に無断で自転車をロックすることは聞いたことがないが、盗難数が減っており興味深い取り組み。作戦によって警官が見回ることも盗難の抑止力になっている」と話した。【田崎春菜】

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