竹久夢二:若き日のサイン?表紙「ST」の謎

毎日新聞 / 2018年5月17日 10時34分

「揺籃」の裏表紙に記された「ST」の文字=東京都千代田区の日比谷図書文化館で2018年4月23日、西本勝撮影

最も古い絵画作品掲載の冊子を初公開

 美人画で知られる画家の竹久夢二(1884~1934年)の挿絵入り冊子「揺籃(ようらん)」が、東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1)で19日に始まる特別展で初公開される。冊子は夢二が学生時代に自作したと考えられ、最も古い絵画作品とみられる。資料的価値はもちろんだが、専門家は表紙に記された「ST」の文字に注目する。これまでに知られた夢二のサインと異なり、「新発見につながる可能性がある」という。【高橋昌紀】

 竹久夢二学会(会長・高階秀爾大原美術館館長)によると、夢二は洋画家の藤島武二(1867~1943年)を敬慕し、特に雑誌「明星」や歌集「みだれ髪」の表紙に描かれたアール・ヌーボー的な作品に強い影響を受けた。1905年から使い始めた「夢二」の雅号は「武二」にちなんだという説が有力で、「夢二」「YUMEJI」「YUME」などのサインを用いたことが知られている。

 冊子「揺籃」(縦24.7センチ、横17.0センチ)は、「夢二」を名乗る2年前の03年制作とみられる。表紙に題名と「S」「T」を重ねた飾り文字があり、裏表紙に制作年月日と思われる「1903 DEC 23」と、再び「ST」が記されている。

 夢二の本名は「竹久茂二郎(もじろう)」。同学会理事の岡部昌幸帝京大文学部教授(近代美術史)は「STのサインは見たことがないが、『T』はおそらく姓の頭文字だろう」と指摘し、「Sは『しげる』を意味しているのではないか」と推論する。

 さらに「雅号の由来から分かるとおり、夢二はサインにこだわりを持っていた。『ST』には重要な意味があるはずで、若き日の思いが込められているのではないか。調べてみたい」と話した。

 「揺籃」は出版社「龍星閣」が2015年、関連資料約1200点と共に千代田区に寄贈した。同区文化財事務室によると、夢二が親しい周辺者などに譲渡し、龍星閣が夢二の画集などを刊行していたことから、夢二の死後に持ち込まれたのではと推測している。

 特別展「夢二繚乱(りょうらん)」は7月1日まで。

毎日新聞

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