気候変動と戦った弥生人に迫れ 奈良の環濠集落跡 5年プロジェクト
毎日新聞 / 2024年9月23日 7時30分
弥生時代の大環濠(かんごう)集落にどのような気候変動があったか、それによる自然災害や凶作と弥生人がどう戦ったかを探る調査研究「唐古・鍵遺跡気候変動プロジェクト」を遺跡のある奈良県田原本町と山形大が合同で進めている。地球全体の気候を探る古気候学と連携した新しい考古学研究で、今年度から5年間の予定。町内で22日講演会があり、山形大の白石哲也准教授(考古学)らが概要を説明した。
プロジェクトは国の科学研究費助成事業(科研費)に採択された総合研究「『暴れる気候』と人類の過去・現在・未来」(研究代表=中川毅・立命館大教授、2024~28年度)の一環。福井県の水月湖底の堆積(たいせき)物から地球の十数万年間の気候変動を知る古気候学の「年縞(ねんこう)」研究の応用編だ。
気候が慢性的に不安定だった約1万年以上前の氷河期の「暴れる気候」や、その後現在に続く各時代の気候変動に、人類がどう適応してきたかを探るのが全体のテーマ。
考古学調査の対象地域は、海外では気候変動で9世紀に衰退したとされる中米のマヤ文明の遺跡、国内は唐古・鍵遺跡のほか、縄文時代草創期の福井洞窟(長崎県)などが選ばれた。唐古・鍵プロジェクトは弥生時代の稲作技術研究で知られる白石准教授と田原本町が中心となり、年内に遺跡で試掘調査を行い、25年度以降に本格発掘を実施する。古気候学と考古学の両データとの照合で唐古・鍵遺跡の各地層ごとのより正確な年代を割り出す。さらに気候変動に弥生人がどう対応したかを調べる。
大和盆地中央の沖積地約30ヘクタールに広がる唐古・鍵遺跡は弥生時代を代表する遺跡として国史跡に指定されている。環濠集落は弥生前期に当たる紀元前5世紀から古墳時代に移行する紀元後3世紀まで約800年間続いた。特に弥生中期には全長2キロに及ぶ大環濠や重層建築「楼閣」が築かれ繁栄を極めた。紀元前後の中期末には大規模な洪水が起きて環濠が埋没したが、弥生後期に環濠は再掘削されており、弥生人は災害に遭っても唐古・鍵を放棄しなかったことが分かっている。
白石准教授は「列島に稲作が普及したのは弥生前中期の温暖期。弥生後期には冷涼な時期もあり、降水量も増加した。そうした変化に人々がどう順応していったかを唐古・鍵を通じて明らかにしたい」と話している。
町は町内の「唐古・鍵考古学ミュージアム」(0744・34・7100)にプロジェクトを紹介するパネルなどを展示している。【皆木成実】
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