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麻薬探知犬みな成田育ち 最強バディーへの道、まず「遊び」から

毎日新聞 / 2024年9月23日 8時45分

空港見学会で、座り込んで麻薬(ダミー)を嗅ぎ当てたことを示す麻薬探知犬=千葉県成田市で2024年8月2日午前11時40分、合田月美撮影

 鋭い嗅覚で、海外から空港や港にひそかに持ち込まれた違法薬物を嗅ぎ当てる麻薬探知犬。どうやって育成しているのか。全国で唯一の養成施設「東京税関麻薬探知犬訓練センター」(千葉県成田市)で、麻薬探知犬と、ペアを組む「ハンドラー」の育成に取り組む同税関監視部麻薬探知犬訓練センター室上席監視官の小副川幸雄さん(47)に聞いた。【合田月美】

 ――どんな施設なのですか。

 ◆麻薬探知犬は1979年に米国から2頭が導入されたのが始まりで、センターでは開設された87年から春と秋の年2回、ブリーダーや警察犬訓練所などから公募で約20~30頭を集め、全国9税関から集まったハンドラー候補とペアになって約4カ月間の訓練をします。テストを重ね、最終的に麻薬探知犬として認定されるのは約3割です。

 ――なぜ違法薬物を嗅ぎ分けられるようになるのですか。

 ◆まず(タオルを筒状に巻いた)「ダミータオル」をハンドラーと引っ張り合うことで遊ぶ楽しさを教えます。その過程でタオルに麻薬のにおいを染み込ませると、犬はハンドラーに遊んでもらいたい一心で麻薬のにおいを探すようになるのです。見つけた時は「グッドボーイ!」と言って目いっぱい褒めて遊んであげます。現場の状況によってその場で遊んでやれなくても「今のは合っていたんだよ」ということを全身で犬に伝えます。

 ――相手は動物。思い通りにいかないことも多いですか。

 ◆犬を飼っている人なら分かると思いますが、犬は人の動きをよく観察しています。なので私たちも常に心情をフラットに保つように心がけています。また、こちらも犬の小さなシグナルを見逃さないようにしています。例えば犬はストレスがかかると首をブルブル震わすことがありますが、その多くはハンドラーの扱い方に原因があります。人間でも相性が悪かったり、気分が乗らなかったりする時ってありますよね。同じだと思います。

 ――思い出深い犬はいますか。

 ◆ハンドラー時代、前任から引き継いだロッキー号ですね。現場では「残臭」といってかばんに付着した大麻のにおいも嗅ぎ当てていきます。かばんの持ち主は「大麻は使ったが、日本には持ち込んではいない」と言うのですぐにお手柄とはなりませんが、そんなケースが続き、初摘発も近いと言われていたのに、突然、嗅ぎ当てられないようになってしまいました。いろいろ試しても駄目。そのうち犬が私を信頼していないことが原因だと分かりました。

 そこで、私が手を差し伸べた所には必ず麻薬があるという設定での訓練を繰り返し、私の言う通りにすると得をすると思うように仕向けました。こうして立て直すことができ、間もなく郵便物に隠された大麻草を摘発しました。犬との信頼関係ができていないと、ハンドラーは務まらないことを実感しました。

 ――全国には約130頭の麻薬探知犬がいるそうですね。インバウンドは増加しており、今後も麻薬探知犬の活躍の場は広がりそうですね。

 ◆犬の嗅覚の仕組みについての大学の共同研究に加わったことがありますが、世界的にもほとんど解明されていないそうです。それが解明されない限り、麻薬探知犬の活躍は続くのではないでしょうか。一頭でも多く能力の高い麻薬探知犬と、優秀なハンドラーを育成すること。そのために今後も指導者を育てていきたいと考えています。

おそえがわ・ゆきお

 北九州市出身。1997年、東京税関に入る。取締部門を経て、麻薬探知犬訓練センターに配属。インストラクターとして約19年にわたって麻薬探知犬やハンドラーの育成に携わってきた。関わった候補犬は約300頭に上る。

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