「正月の地震よりひどい」 濁流に土砂崩落、住民ら眠れぬ夜 能登
毎日新聞 / 2024年9月23日 11時25分
能登半島を21、22の両日襲った豪雨で、石川県奥能登地方の交通の大動脈・国道249号など幹線道路の多くで土砂崩れが発生し、通行できない状況が続いている。停電や通信の途絶もあり、正月の能登半島地震発生時と同じ状況に陥っている集落が多数ある。県の22日夕のまとめでは、奥能登地方で100カ所以上が孤立している状態だ。【竹中拓実、阿部弘賢、国本ようこ、深尾昭寛】
元日の能登半島地震で、真っ先に集団避難した石川県輪島市東部・南志見(なじみ)地区の住民が電話とSNSで状況を伝えてくれた。
南志見地区の槌谷博之さん(57)は「正月の時どころじゃない。レベルが違う。もう、わやくそ(めちゃくちゃ)や」と嘆いた。
地区中心部の低地に県の肝いりで造られた木造長屋型の仮設住宅に今夏ようやく入居できた槌谷さん。伝統芸能・御陣乗(ごじんじょ)太鼓保存会の事務局長として復興の後押しを求めて、公演行脚もしてきた。
21日午前の雨は経験したことのない強さだった。脇の小河川・南志見川はみるみる増水し、仮設住宅の基礎部分まで浸していった。「危ない。高い所に行こう」。声を掛け合い、高台の小学校跡地に向かった。停電して断水、電話はつながらない。元日と同じ眠れぬ夜だった。
地区内では多くの電柱が折れ、道路の寸断は数え切れないほど。5月にようやくつながった輪島市街地への道は土砂崩れで再び途絶えた。逆方向の東隣・同市町野町に行く仮設道路も年内開通を目指し、形が見えていたが、徒歩で乗り越えた人の話では、造り上げた部分が数え切れないほど崩落しているという。槌谷さんは正月の時の記憶を頼りに、当時、地区内で唯一、時折電波が通じた名舟海岸の「奇跡のスポット」に行き、22日午後、毎日新聞に連絡した。
「どの方向にも行けない。半径100メートルしか動けないと分析しとる人もおるわ。地震の時よりひでえ。当面の食べ物は、まああるけど、支援物資はまだ何も来ない。(地震後に入居していた)金沢市のみなし仮設アパートは引き払ったけど、もう一回借りなあかんか、と話しとるとこやわ。ほんでも、低地は全部仮設住宅にしたさけ、今度はヘリコプターが降りる場所もねえかも」と心配を語った。【竹中拓実】
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