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松本清張も愛した「栗饅頭」 湖月堂の代表菓、文化の薫り高く

毎日新聞 / 2024年11月23日 14時30分

小判型でつやのある栗色をした湖月堂の栗饅頭=2024年10月24日、田後真里撮影

 こっくりした栗色に小判型の「栗饅頭(まんじゅう)」は、北九州市小倉北区にある湖月堂が1895(明治28)年に創業した時からの代表菓だ。

 初代の小野順一郎は現在の広島県安芸高田市出身で、小倉で菓子職人の修業を重ねた。出身地は栗の産地で、正月の祝儀にも使われる勝ち栗を使った饅頭は、軍都・小倉で「縁起がいい」と評判になった。現在はむき栗の甘露煮を刻み、北海道産の大手亡豆(おおてぼうまめ)を主材料とした餡(あん)で包んでいる。

 屋号の名付け親は、陸軍第十二師団の師団長を務めた井上光中将。師団で軍医を務めた森鷗外(おうがい)の上司にあたり、小野とは囲碁仲間だった。

 湖月は江戸時代に著された源氏物語の注釈書「湖月抄(しょう)」に由来。紫式部が石山寺(滋賀県)で湖面に映る月を眺めて物語の着想を得たという伝説にちなみ、湖月堂のマークは上空と湖の二つの月を表現している。

 文化の薫り高い栗饅頭は、北九州市出身の作家、松本清張も愛した。子供のころから湖月堂の菓子や食品に「夢と憧れをもった」と回想している。広告図版の仕事をしていた20代後半に、頼まれて本店ショーウインドーのデザインをしたことも。当時の本店敷地は小倉城側に向かって数十メートル続いていたといい、湖月堂の営業部長、佐藤徹さん(53)は「どんな飾り付けだったのか想像すると楽しいですね」。

 本店から歩ける距離には市立松本清張記念館がある。古賀厚志館長(63)は「市内には文学の史跡があちこちにあります。ゆかりのお菓子を楽しみ、のんびり散策してみてください」と呼び掛けた。【田後真里】

湖月堂本店

 北九州市小倉北区魚町1の3の11。約260席のカフェ「喫茶去(きっさこ)」を併設。栗饅頭は6個入り972円。30個入りは4644円。本店(093・521・0753)。

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