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原発の是非と東電の適格性 福島原発を記者が視察、悩んだ3日間

毎日新聞 / 2024年11月30日 11時0分

東京電力福島第2原子力発電所内のサイトシミュレーター室で説明を受ける毎日新聞の記者たち=福島県楢葉町で2024年11月13日午前10時13分、玉城達郎撮影

 東京電力福島第1、第2の両原発を2泊3日で視察した。立地する4町のうち3町には、いまだ帰還困難区域があり、原発事故から13年たった現在もその影響は色濃く残る。発電所内では困難を極める廃炉作業も垣間見た。福島復興と東電の信頼回復に取り組む現地社員とも接し、原発の是非と同社の原発運転主体としての適格性について煩悶(はんもん)した3日間だった。【木下訓明】

 第1原発は福島県双葉、大熊両町に立地する。避難解除された区域は、大熊町で約60%、双葉町では約15%にしか達していない。震災前人口は、大熊町が約1万1000人、双葉町は約5300人。帰還者数は大熊町で287人、双葉町は72人にとどまっている(いずれも10月末現在)。

 11日夕に富岡町に入り事前研修を受け、翌12日朝、ホテルから第1原発に向けて出発。大熊町に入り、国道上の空間線量計は「1・130マイクロシーベルト/h」と表示。一般公衆の線量限度は年間1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト)だ。

 道すがら、道路の両側には耕作できなくなった田んぼが荒涼と広がる。まばらに残る無人の民家の屋根には雑草が茂り、壁面をツタ類が覆い、室内の障子やカーテンは破れ放題。胸が締め付けられた。

 原発敷地内はスマートフォン持ち込み禁止。保安検査の後、視察の導入説明など受けて、事故を起こした1~4号機へ。1号機建屋を外からマスクなしで約100メートル先まで近づき眺める。空間線量は52・8マイクロシーベルト/hに跳ね上がっていた。社員いわく、昨年は80マイクロシーベルト、一昨年は3ケタあったという。目には見えない放射線の増減に事故の影響を感じた。

 その後、電源喪失を免れ事故に至らなかった5号機に線量計を付けて入る。ヘルメットとカバーオール(無じん服)、綿手袋の上にゴム手袋を着用し、二重の靴下と専用靴を履き、原子炉格納容器に。中腰で10人がひしめく直径約4メートルの密閉空間。頭上には制御棒を出し入れする「CRDハウジング」が迫る。このすぐ先に原子炉があると思うと、核燃料がないと分かっていても心拍数が上がった。

 汚染水を浄化する多核種除去設備「ALPS(アルプス)」と処理水の海洋放出の現場も視察した。

 事故当時に第1原発にいた社員は、複数機同時廃炉という前例のない作業に当たる心境について、「自分たちがやらなければ誰もやれないという責任感しかない」と率直に語る。東電への厳しい評価も受け止めつつ、「『東電を潰したら一体誰が廃炉をやるのか』と思う」と静かに話した。

 13日は富岡、楢葉両町にある第2原発へ。4号機建屋内で使用済みと未使用の核燃料が入った燃料プールなどを視察。富岡町の廃炉資料館を見て、新潟への帰路についた。

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