エイズの知識「アップデートを」 活動30年の支援団体が呼び掛け
毎日新聞 / 2024年12月1日 13時58分
エイズはかつて不治の病として恐れられたが、原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染しても服薬で健康な人と同じ日常生活を送ることができる。
HIV陽性者らを支援する認定NPO法人「ぷれいす東京」代表の生島嗣さん(66)は「科学の進歩は速くても、差別や偏見の解消には時間がかかる。自分自身や大切な人のために、知識をアップデートしてほしい」と呼び掛ける。
1日は、エイズのまん延防止や、患者や感染者に対する差別・偏見の解消を目的とする「世界エイズデー」。
世界で初めてエイズ患者が報告されたのは1981年。日本では85年から統計を取り始めた。増加傾向だった新規報告者は2013年をピークとして減少傾向となった。ただ、23年は7年ぶりに増加に転じ、HIV感染・エイズ患者の新規報告数は計960件となった。
人の免疫を乗っ取って機能させなくするHIVの増殖を止めるため、あらゆる治療戦略が試みられてきた結果、現在は非常に効果的な抗ウイルス薬が開発された。生島さんは「2~3カ月に1回の通院と1日1錠の服薬で体調維持が可能になりました」と話す。
一方で、感染の認識があるのに検査を受けなかったり、スクリーニングテストで陽性のリスクが判明した後、放置したりすることを問題に挙げる。
「治療を受けるには、自分自身が感染と向き合わなくてはいけません。治療しながら日常生活を送るには、周囲の理解も必要です。そのためには社会が知識をアップデートしなくてはいけません」
「ぷれいす東京」が活動を始めたのは、30年前の1994年。当時は、支援対象の病名を公言できず事務所を設ける物件探しに苦労した。
電話相談や居場所づくりなどを地道に続け、十数人だった会員は今、250人にのぼる。支援される側が、支援を担うスタッフとして参加するケースもあるという。
生島さんは「小さなコミュニティーとはいえ、陽性者と非陽性者が心を開いて交流できる環境を作ることができてうれしい。世代交代という課題はあるが、明るく乗り越えられるような気がする」と話した。【山崎明子】
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