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奥能登の伝統行事「あえのこと」 地震被害や高齢化で存続正念場

毎日新聞 / 2024年12月14日 16時15分

田の神様へのお供えものには地域住民が用意した煮物や能登で水揚げされたタイ、支援物資のリンゴなどが並んだ=石川県輪島市で2024年12月5日午後2時36分、国本ようこ撮影

 田の神様を家に招いて収穫に感謝する石川県奥能登地方の伝統行事「あえのこと」が、今年も各地で営まれた。地震被害や高齢化などが影響し、例年とは異なる段取りで行われた家もあるなど、次代へ残すべき地域の営みは存続へ正念場を迎えている。

 「あえのこと」は12月5日に神様を家に招いて休んでもらい、翌年2月9日に田に送り出す民俗行事。2009年にユネスコの無形文化遺産に登録された。保護団体「奥能登のあえのこと保存会」によると、1979年には行事を継承する会員が255人いたが、15年には高齢化で11人に激減。地震の影響で、さらに減少した可能性があるという。

 「今年もお迎えに来ましたぞ」。同県輪島市三井町では、主人役の「ゴテ」を務める小山栄・三井公民館長(74)がかみしも姿で田に赴き、「田の神様」に呼びかけた。同町では行事継承のため地域住民で開催してきたが、例年神様を迎えていた建物が地震で被災したため、別の施設でお供えの料理などを用意。稲で目をつき盲目になったとされる神様に「ここは段差があります」などと声をかけながら案内した。

 終了後、小山館長は「最高です。震災から11カ月たち、周りは(被災家屋を)解体する車しか見えない。そんな中でも稲穂が実った。大事な祭りが無事にできて喜びでいっぱい」とほっとした表情を見せた。

 行事を諦めた家もある。同県珠洲市若山町で行事を続けていた田中茂好さん(72)は、地震で自宅の母屋が全壊し、暮らしている離れも9月の豪雨で床上浸水した。今も泥の片付けに追われており、来年以降の開催も見通しがつかない。「暮らしが落ち着かず、気持ちの余裕がない」

 同県穴水町の森川祐征さん(85)は、避難生活で足を痛めたため、床の間の前に料理を供えるにとどめた。妻の美恵子さん(81)が用意したけんちん汁などを並べ、感謝をささげた。「母ちゃんのおかげ。来年は足を治して開催したい」と話した。【国本ようこ】

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