スズキ自動車で一体何があったのか。鈴木会長の電撃退任までを分かりやすく解説
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2021年6月10日 10時0分
スズキ自動車で一体何があったのか。鈴木会長の電撃退任までを分かりやすく解説
「ハスラー」や「ジムニー」など他の自動車メーカーにはあまりないタイプの製造を手掛けるスズキ自動車。スズキ自動車のカリスマ経営者として40年以上指揮をとってきた鈴木修会長が電撃退任を発表しました。一時期、不正問題に揺れたスズキ自動車に今何が起こっているのでしょうか?株価の推移も追ってみました。
日本の自動車産業をわかりやすく説明
日本の自動車メーカーは以下の表のように、巨大な売上高を誇るトヨタ自動車、日産、ホンダの3強が牽引しています。特にトヨタ自動車は世界市場でトップクラスの販売数を誇っており、2019年の販売台数はフォルクスワーゲンについで世界2位です。日本の上場企業全体の売上高ランキングでみても、1位のトヨタ自動車に続いて、2位はホンダ。日産が8位にランキングしています。日本の自動車産業は日本の産業を牽引しているといっても過言ではありません。
近年、安全自動運転装置の技術進歩やEV(電気自動車)の開発など、開発競争はさらに加速。夢の自動運転の可能性さえ見えてきています。自動運転が実用化となれば、自動車産業の構図がガラッと変わります。
自動運転をするためには、車に高度な情報通信システムを搭載する必要がありますが、そのシステムを手掛けているのはAndroidで有名なGoogle。もはや、自動車業界の競合は同業だけではなくなってきているのです。
スズキ自動車の特色
スズキ自動車は公式ホームページに経営の基本方針を掲げています。
「小さなクルマ、大きな未来。」をスローガンに、お客様の求める小さなクルマづくり、地球環境に配慮した製品づくりに邁進いたします。法令遵守のもと、安全及び品質を第一とし、「小さく・少なく・軽く・短く・美しく」を徹底し、効率的な健全経営に取り組んでいきます。
スズキの代表的な車種として、「アルト」、「ワゴンR」、「ジムニー」、「ハスラー」、「スペーシア」などがありますが、軽自動車や小型自動車ばかり。独自の技術による燃費の良さには定評があり、そこにスズキの基本方針が色濃く反映しているといえるでしょう。
自動車メーカーとして独自路線を貫くスズキは、ダイハツとよく比較されます。現在、軽自動車のシェア1位はダイハツに明け渡しているものの、この2社の切磋琢磨が日本の軽自動車と小型自動車(コンパクトカー)の品質を押し上げてきたといっても過言ではありません。
スズキ自動車を長年率いてきたのは、2021年6月に退任する現会長の鈴木修氏です。早い段階で海外進出に挑み、特にインド市場では圧倒的なシェアを獲得するといった経営手腕を発揮し、鈴木氏は強いリーダーシップと現場主義で長年にわたり、スズキ自動車を牽引してきました。
しかし、この鈴木会長のリーダーシップはいつしか、「ワンマン経営」とささやかれるようになります。それが事実であることを証明したのが、一連の不祥事です。
スズキの不祥事問題を振り返る
スズキ自動車は、2016年に燃費測定不正問題を起こしました。ただ意図的に数値を改ざんしたわけではなかったため、検査体制改善の必要性は明らかになったものの大きな問題にはなりませんでした。不正をせず、正しく測定をしていたらもっと良い数値になっていたこともあり、技術的なミスとして片付けられました。
しかし、2018年に発覚した完成検査不正は単なるミスではありませんでした。調査を続けていくうちに、1980年代から無資格者が検査していたことが組織的に隠蔽されていたことも明らかになります。
これは工場の人員削減が進められた結果、検査体制がないがしろになっていたことが原因として指摘されます。スズキ自動車の経営方針である「小さく・少なく・軽く・短く・美しく」が、行き過ぎた結果となったのです。
また、長年鈴木会長が経営を担っていたため、トップダウンの企業体質になり、誰も鈴木会長に意見できなかったことも明るみに出ました。
この問題で、スズキ自動車は約200万台の大規模リコール(回収・無償修理)を実施し、813億円の特別損失を計上することになりました。窮地に追い込まれたスズキ自動車ですが、2019年3月、トヨタと業務提携を発表。お互いのメリットを生かして協業を模索していくことになります。
現在、スズキ自動車では会長の長男の鈴木俊宏氏が社長となり陣頭指揮をとっています。鈴木修氏は、会長として一定の発言権を残していましたが、会社に将来のめどが付いたという理由で、2021年2月に会長職退任を電撃的に発表しました。実際の退任は、6月の株主総会後となります。
スズキの株価推移を投資家目線でチェック
スズキ(7269)の株価は、最初の不正があった2016年5月に2,450円まで下落し、そこから反騰しました。2018年8月に7,100円台をつけたところで不正が再度発覚し、下降トレンドに入ります。
さらに、米中貿易摩擦がスズキの売上に影響するとの観測からトレンドは継続、そのまま新型コロナウイルスによる景気減速感を受けて、2020年3月には一時期2,400円まで下落しました。2021年4月23日現在では、4,340円まで回復しているという状況です。
これはスズキ自動車の業績が比較的安定しているためと考えられます。上場企業は、投資家向けに公式ホームページで定期的に業績を発表しているので一部内容をピックアップすると、スズキ自動車の通期決算(2020年4月~2021年3月)は、売上高3兆円(前期比14%)減、営業利益1,600億円(25.6%)減の見込み。営業利益前期比16.6%減を見込んでいるトヨタとそれほど変わらない水準です。
売上・利益の見通しが大きく外れるようになると、株価に悪影響を与えことになるでしょう。特に新型コロナウイルスの感染が急拡大している今のインドの状態は、大きな懸念材料。この問題が収まるまでは、様子見ムードと考えます。
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