契約をする際に契約書を作成すべき理由とは|トラブル事例を交えて解説
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2021年12月24日 10時0分
契約をする際に契約書を作成すべき理由とは|トラブル事例を交えて解説
契約は、口頭でも成立します。それなのにわざわざ契約書を作る理由は何でしょうか?実際の事例を交えて契約書が無い場合のデメリットを説明します。
契約書とは
契約書とは、契約があったことを契約当事者間で証明する文書のことです。契約は、申し込みと承諾の意思の合致により成立するもので、一部の例外を除き、文書で契約することが契約の成立要件となっているわけではありません。したがって、口約束の契約も法律上有効となります。
それではなぜ契約書を作成する必要があるのでしょうか?実際に契約書を作成する場合、作成をするごとに社内のリーガルチェックを受けて、出来上がった契約書に押印をして郵送する作業が発生します。なかなか返信が来ない場合は相手方に問合せをするなど、契約書を作成するのは、非常に面倒です。こんな面倒な作業をしなくても、口約束だけで取引をした方が事務作業の手間は省けます。
契約書がなかったらどうなる?
契約をしたけれども、契約書がなかったらどうなるでしょうか?筆者が弁護士として相談を受けただけでも、次のようなケースが挙げられます。
①契約内容について、後から言った言わないで揉める
②社長や担当者が交代した際、契約内容について言うことが変わった
③突然取引を中止すると言われた
④トラブルが起き、裁判にまで発展してしまった
契約書がないと、トラブルが発生した際に契約内容について証明するものがなく、損害が発生しても泣き寝入りになってしまったケースがほとんどです。皆さん一様に「契約書があれば」とおっしゃっていましたが後の祭りでした。
実際にあった契約書をめぐるトラブル
建設業界では基本的に契約書を作成する習慣がなく、元請会社の権限が非常に強い傾向にあります。そうして起きてしまったトラブルのたとえをご紹介します。
ある下請会社は元請会社と契約書を作らず、口頭で建設業務を受注していました。しかし業務が始まる前日になって突然、元請会社から「コロナで業務が突如中止になったので、依頼を取りやめる」との連絡を受けました。下請会社は、人材の確保や資材の発注など大方の準備を済ませていたのですが、業務がなくなってしまい、多大な損害が発生してしまいました。元請会社と交渉はしましたが「正式に契約はしていない」の一点張りで、結局は泣き寝入りとなってしまいました。
このように、力関係が対等でない当事者間の取引において、契約書がなかったためトラブルになるケースは後を絶ちません。個人事業主やフリーランスとして仕事を受けたことのある方のなかにも、このような不合理な経験をされたことがある方もいるのではないでしょうか。
契約書がない場合のトラブルを未然に防ぐために
契約書がない場合でも、契約内容を証明する方法はあります。例えば「注文書」「納品書」「メモ」「メール」等の書面の記載に注意を払うだけでも変わることがあります。具体的には、代金、支払期日、納品日、返品、補償等、取引について自分が気になることは基本的に文書として明記することが大切です。実際の裁判においてもメッセージアプリの「LINE」のやりとりに契約内容の細かな条件について書かれていたことが、決定的な証拠になって勝訴した事例がありました。
トラブルに発展しやすい契約書とは
中小企業の社長さんや個人事業主の方々の中で、大手の取引先から契約のチャンスが舞い込んできた時に喜ばない方はいないと思います。そのような場合に、とにかく契約をすることを優先しすぎて、相手方のいいなりの契約書にサインをしてしまう場合も少なくありません。
過去には、あるシステム開発会社に、大手メーカーからシステム開発の話が舞い込み、このシステム開発会社は「とにかく契約を急ぎたい」という一心から、相手が作成した契約書をよく確認せず、「システムの仕様変更は無償対応をする」との条項があることに気づかないままサインをしてしまうという事例がありました。結果、システム開発の途中で無償での大幅な仕様変更を要請されてしまい、大きな損害が生じてしまいました。
契約書の確認事項を絞り、スピード持たせるためには
大手との契約においてはスピード感もさることながら、交渉すべき事項を絞り込み、納得してもらいやすくするという配慮も必要です。そのためには、「取引における基本方針を確認する」「取引において生じ得るリスクをまとめる」「まとめたリスクを前提として、契約書において着目すべき点を絞り出す」「着目すべき点に集中して交渉する」という作業が必要になります。
たとえば契約締結時に、以下のような契約内容は確認されていますでしょうか。これらを意識的にチェックすることで、いざというときに身を守ることに繋がるかもしれません。
①業務内容は仕様書等で明確に特定されているか
②代金はどの仕事に対する対価として定められているか
③代金の支払い時期は定められているか
④仕事が終わったことを何で確定させるか
⑤業務終了後の補修については無償か有償か
⑥不具合の対応について期間制限を設定しているか
⑦著作権はどうなっているか
まとめ
商慣習として、契約書を作成しない業種はまだまだ多くあります。契約書を作成している場合でも、内容を確認せずに自分に不利な条項を結んでしまい、いざ紛争になって大損をして後悔をするというケースも少なくありません。今一度自分の取引を見直し、契約書を作成できるか検討してみましょう。契約書の作成が難しい場合でも、契約内容についてなるべく文書化してみるなどの対応をされてみてはいかがでしょうか。
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