お米が高い!ふるさと納税やネットショッピング...困窮する子育て家庭を"得意の仕組み"で企業が支援「単純に子どもがお腹を空かせてちゃだめです」
MBSニュース / 2024年12月12日 15時48分
子どもがいる困窮家庭で、米をはじめとする物価高騰に苦しむ声が多く聞かれます。そうした中、“お金の寄付ではない方法”で困窮する子育て家庭を支援する企業を取材しました。
困窮家庭の声「お米が高すぎて買えません」「お腹いっぱい食べさせてあげたい」
今年夏の「令和の米騒動」以来、新米が出回り始めても米の値段は高止まりのままです。総務省小売物価統計調査によれば、コシヒカリ1袋(5kg)(東京都区部)の2024年11月の値段は3985円で、2023年11月の2367円に比べて1600円以上も値上がりしています。
困窮家庭の子ども支援をしている認定NPO法人キッズドアが支援登録している世帯を対象に行った調査(2024年10月29日~11月9日)でも、米をはじめとする物価高騰で苦しむ声が多く聞かれます。
・お米が高すぎて買えません。子どもたちに満足な食事をさせてあげることができません。お菓子なんて贅沢品です。
・とにかく子どもがたくさんご飯を毎日食べられるように、食の少しだけでもいいので提供や、無料の子ども食堂などがあると助かります。親は毎日 3 食満足に食べられなくてもいいので、なんとか子どもだけでもお腹いっぱい食べさせてあげたいと言う気持ちでいっぱいです。
・物価高で食料品が購入できず、子どもの健康に支障が出ています。この冬もコタツでなんとか乗り切る予定ですが毎年季節を乗り切れるか不安です。食料支援が継続的に受けられると嬉しいです。
キッズドアで食糧支援を担当している川崎法江さんは「とりあえずお米があればなんとかなる、その安心感が困窮する子育て家庭には大事」だと話します。キッズドアが夏と冬に定期的に行っている食糧支援でも、これまで3kgだったお米を、今年の夏から5kgに増やしました。
ネットショッピング感覚で子どもを支援「理不尽を補正したい」
「お腹を空かせている子どもを支援したい」と思っても、どういうアクションを起こしたらいいのか。お金の寄付とは違った方法を本業の延長で提案している企業があります。
LINEヤフー株式会社では、Yahoo!ショッピングで購入した商品を支援したい団体に贈れる「買って応援便」を2023年11月から始めました。Yahoo!ショッピングというネットショップと20年の実績があるYahoo!募金の2つの仕組みを融合させたサービスで、応援する団体を「子ども支援」「動物支援」「災害支援」の3つのカテゴリーに分け、支援を希望する団体が必要としている物品を掲載しています。そこからユーザーが商品を買うと、その品物が団体に配送される「代理購入」というシステムで、ネットショッピング感覚で支援ができます。
この事業の発起人として立ち上げのきっかけを作ったLINEヤフー株式会社執行役員サステナビリティ推進統括本部長の西田修一さんは、「買って応援便」の特徴は「寄付の手触り感」にあると説明します。物品の寄付はそれがどのように役立っているのかが想像しやすい、例えば米を贈るとそれを食べている子どもの姿が浮かぶといったもので、それは寄付した側の喜びにつながりやすいと考えました。
このサービスを推進する原動力はどこにあるのか。西田さんは大前提としてCSR(企業活動において社会的公正や環境などに配慮する義務)があるとしながら、そこに「想い」があることが必ず必要だと話します。西田さんの思いは「理不尽を補正したい」というもので、自分が選んだわけではない境遇に置かれてしまっている「理不尽」も、誰かがちょっとしたアクションを起こすことで少しだけでも補正されれば、それが喜びだと語りました。
キッズドアには「買って応援便」を通じて寄贈された米が8月から12月までの間に63袋(5kg)届いていて、ある程度まとまった量になったら登録家庭へ送付されます。
ふるさと納税の仕組みで子どもを支援「子どもがお腹を空かせていてはいけない」
ふるさと納税サイト大手のふるなびでは、「ふるさと納税クラウドファンディング」を使ったつくばみらい市への3000円の寄付につき米(5kg)をひとり親家庭に贈る事業を始め、今年で4回目になります。この仕組みはふるなびを運営している株式会社アイモバイル専務取締役の文田康博さんが、9年前にひとり親支援についてNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長に話を聞き、現状が想像以上に深刻なことに衝撃を受けたことがきっかけで企画されました。
そして、ふるなびからつくばみらい市に提案し、しんぐるまざぁず・ふぉーらむの食糧支援システムを使って米の支援を始めました。つくばみらい市は米どころとしての歴史が長いものの農業従事者の高齢化などの課題も抱えていますが、この事業によって出荷量の増加や認知度の上昇といった効果を見込んでいます。
一方、3250世帯へ食糧支援を行っているしんぐるまざあず・ふぉーらむにとっては支援物資としての米を確保でき、ふるなびは自社のプラットフォームを使って社会課題の解決に寄与できるという、3者のメリットが合致した事業だといいます。
ふるさと納税のスキームを使う強みは「寄付控除」の対象になることで、文田さんは「控除があるのでとりあえず一回試しにやってみようかという心理的ハードルの低さ、これをきっかけにして寄付という経験を積み重ねていってもらえれば」と話します。そしてこの事業の意義について「企業が事業を継続していくためには、社会が持続可能であることが必要で、困窮する子ども支援はそのための社会作りに必要なもの」と説明しつつ、「単純に子どもがお腹を空かせていてはいけないでしょう」と話しています。
日本の子どもの相対的貧困率は11.5%(厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査」)で、決して少数者ではありません。少子高齢化が加速している現状において、社会全体で子どもの成長を支える機運を今後高められるのは、こうした経済界の動きかもしれません。
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