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テレビ番組のアイデアは「テレビマンが考えること」より「実際に起こること」の方が面白い

メディアゴン / 2015年7月16日 7時0分

高橋正嘉[TBS「時事放談」プロデューサー]

* * *

「テレビ番組をどう作るか?」を考えるとき、方法論というのが重要なポイントになる。だが、今この方法論に無自覚な人が結構多いような気がする。バラエティに慣れすぎているからだと思える。

バラエティは一度考え付いた方法をずっと使い続ける。パターンにはめ込む。このことが長所になっている。一度パターンが確立すると、同じやり方でずっと続けられる。これで成功していれば悩む必要はなくなる。チーフディレクターがチェックすれば、それほど経験の無いディレクターでも、パターンに押し込むことは出来る。

方法論に悩む必要はないのだ。

一度うまく行かなくなると、方法論に悩み始める。だが、方法論に無自覚な教育を受ければ、方法論のノウハウを持っていない。だから、考えられないか、既存の方法論をいただくことになる。どこか似ている番組が生まれる。

方法論にはいろいろな種類がある。

中でも目立つのは「弱いものを見つけて、それをいじり、それを笑おう」というものだ。困るとすぐこれが出てくる。何故笑えるかわからないというやつが多い。まあ、いじめだ。いじめられるほうに入りたくないから、いじめるほうに入る。テレビではあまり露骨なことは出来ないから、攻守所を変える形にしようとする。だが実際には強いものと弱いものは変わらない。

かつて、この方法がウケたのは、いじられるのは決まって上に立つものだった。あるいはエスカレートがエスカレートを生み、いつか攻守所を変えていた。

このパターンで以前面白い番組を見たコトがある。といってもラジオだが、「葛飾区対足立区」という対決ものだった。一般視聴者からの自慢話、相手より優れている点などを電話で聞いたり、手紙を披露したりするのだが、これが笑えた。

攻守がどんどん変わってしまうのだ。県境の話になったりする。葛飾区は川を越えればすぐ千葉県だ。よくある田舎を馬鹿にしようという魂胆だ。すると、「足立区なんて、歩いていると、いつから埼玉県に入ったか分からない」となる。通常、区の境なんて意識したことはない。葛飾区と足立区の境もよくわからない。

ともかく弱いものを見つけてわが区の優位性を見せつけようとするパターンが繰り返される。竹ノ塚と金町の細かい比較をされても分からない。西新井大師と柴又帝釈天の違いを微に入り細に入りされても、どちらがどう優れているかわからない。だが近くに住んでいるものはよく知っている。

熱くなってどんどん話題が出てくる、いかに人は自慢が好きで人が劣っているということを指摘することに闘志を燃やすかがわかる。差別の塊だ。だが、聞いているとそれが自慢には聞こえない。区別がつかないからだ。聞いている人は、また新たな差別意識で聴いているのかもしれない。東京の東のはずれの話だ、と。

そうは言っても、そう後味の悪さはない。どっちが優位か決まっていないからだろう。双方とも攻守所を変えることができる。差別が固定化されない、これが笑いの原点だろう。

これは素人の言葉だったから成立したと思う。これを芸人で成立させるのは難しい。すぐにしゃれにならなくなる。攻守所を変えることもできなくなる。

たぶんこの番組では弱いところを探しなじるパターンが面白いのではない。素人の本音をうまく引き出せたことが面白かったのだろう。でも、素人が面白くやれることをプロがやればもっと面白くなると錯覚しそうになる。で、芸人にやらせようとすることになる。ここにパターン化の間違いがある。

番組はうまく行かなくなったときに、新しいパターンを考えようとする。

そのとき「自分で考えることが面白い」と過信しやすい。その過信がパターンを作っていく。だが、実際は考えついたパターン化を持続させるのは難しい。大体は見たことがあると飽きが来る。いつまでも新鮮さを維持することは出来ない。

大体の人が忘れているのだ。自分で考えることより、実際に起こることのほうが面白いということを。想像を超えた面白さが実際の場合にはある。本物のシチュエーションとはそういうものだ。人間の面白さもそこにある。

年取った人の一言の面白さはなかなか芸人には出せない。だからそれを引き出せる人が面白いということになる。たぶん大事なのは、実際の出来事にどうしたらぶち当たれるかだろう。

方法論を考えるとき、パターン化するものは実は多数ある。その中でどうパターン化するかが大事だ。軽率は禁物だ。

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