<窪塚洋介も大役をオーディションで獲得>巨匠マーチン・スコセッシ監督が遠藤周作の名作「沈黙」を映画化
メディアゴン / 2015年8月21日 7時0分
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
イギリスの古書店から取り寄せて1971年に制作された篠田正浩監督による映画「沈黙 SILENCE」を観た。日本の古本屋では10000円の値をつけている。言わずと知れた、クリスチャンの作家である遠藤周作の谷崎潤一郎賞受賞作『沈黙』の映画化である。
1966年に書き下ろされた「沈黙」 は17世紀の日本の史実・歴史文書に基づいて創作した歴史小説。江戸時代初期のキリシタン弾圧の渦中にマカオから命がけの航海を経て長崎にやって来た置かれたポルトガル人の司祭(パードレ)ロドリゴ。
ロドリゴの目的はイエズス会派の布教。そして、20年前に来日した恩師である司祭フェレイラを探すことであった。ロドリゴは案内をかって出た百姓キチジローに「救われ・騙され・役人に売られ」と、翻弄されながら布教を続ける。結局、長崎奉行に捕縛されたロドリゴは「転ぶ」ことを迫られるが・・・。
原作者・遠藤は篠田と共同で脚本を担当しているが、ロドリゴの棄教に至る経緯などは小説と比較して大幅な改変が加えられている。おそらく、映画の129分というサイズにするには小説全部、つまり小説の核心を描くことは不可能だったと考えたからだろう。
この映画について筆者は以下のように思った。
・ラストシーンは「これはないよ」というような終わりかたである。
・日本映画なので、欧米の上手な役者をキャスティングできていない。ロドリゴを演じる欧米人の役者がイモである。
・フェレイラ司祭のキャスティングは吹きだしてしまう。
・・・と、文句を並べ立てたが、この映画、駄作ではない。上記3点以外はじっと見てしまうレベルの映画だ。
この映画を「タクシードライバー」(1976)のマーチン・スコセッシ監督が映画化してクランクアップしたばかりだ。ロケ場所は残念ながら台湾であるが、これは期待してしまう。配役は以下の人たちだ。
・フェレイラ司祭:リーアム・ニーソン
・ロドリゴ司祭:アンドリュー・ガーフィールド
・通詞 :浅野忠信
・モキチ:塚本晋也
・キチジロー:窪塚洋介
・井上筑後守:イッセー尾形
このキャスティングにも期待してしまう。アンドリュー・ガーフィールド は「ソーシャル・ネットワーク」(2010)や「アメイジング・スパイダーマン」(2012)で有名だ。
窪塚洋介の役は大きな役だが、窪塚の名前がこれまで公にならなかったのは、この役を窪塚が、オーディションで勝ち得たからだ。
さて、篠田監督の時と違うのは原作者が脚本に関わらないことだ。これは良いことである。小説家と脚本家は違う。
さらに、巨匠スコセッシ監督は、原作を25年以上前に読んで以来、映画化をしたいと思ってきたという。
「遠藤周作がこの作品で描いたテーマは、僕の人生においても、本当に本当に若い頃からすごく重要なことだった。僕はすごく敬虔なカトリックの家庭で育ってきたから、宗教に深く入り込んでいたからね。だから、この本を1988年にもらって以来、強く惹かれてきたんだ」
と、米誌のインタビューに答えている。・・・と、言うことは、篠田作品のような省略はしないと言うことだろう。ますます期待してしまう。
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