ホリエモンの名言「AIがレシピをつくっても、それを食べてうまいと思えるのは人間だけだ」
メディアゴン / 2016年11月3日 7時40分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
人間が「人工知能」をつくることの意味は、一つの「鏡」のようなもので、自分自身を理解したい、という衝動のようなものかもしれない。人間の「知性」の本質とは何か。人工知能が人間を凌駕しつつある今、私たちは理解したが、同時に優位性を手放した。
「知性」がコモディティティしていく今、焦点が当たりそうなのは、感性やパーソナリティ(人格)である。感性については、かつて、ホリエモンが、「ワトソンがレシピをつくっても、それを食べてうまいと思えるのは人間だけだ、ざまあみろ」という名言を吐いた。
人格は、いわゆるビッグ・ファイヴ(開放性 Openness、誠実性 Conscientiousness、外向性 Extraversion、協調性 Agreeablness、神経症的傾向 Neuroticism)で記述されるが、興味深いのは、「正解」がないことである。
「知性」には正解がある。問題には答えがあり、命題には証明がある。最適化は、関数が与えられれば、パラメータ空間の中で正解がある。将棋や囲碁は、次の最善手という最適解を求める試みである。しかし、人格には、そのような最適化、正解がない。
【参考】なぜ日本には英語が喋れない「インテリ」がたくさんいるのか?
たとえば、外向的な人は、内向的な人に比べて、コミュニケーションなどの点で有利で、望ましいように思われるけれども、実際には内向的な人にはそのユニークな意味がある。内向的な人にしか気づけないことや、そのような人にしか担えない役割がある。
神経症傾向(neuroticism)は、くよくよ悩んだり、迷ったりすることで、通常は困ったことのように思われるけれども、実際には神経症だからこそ、できることもある。たとえば、映画監督のウディ・アレン。
ウディ・アレンは明らかに神経症的で、その映画は、そのような傾向を全面的に出したものだけれども、だからこそ表現できること、描ける物語がある。実際、ウディ・アレンの映画は、その神経症的傾向の一つの果実であるとも言える。
進化の過程で、さまざまな性格的傾向の多様性が残ってきたのは、それぞれの性格に意味があったからだと考えられる。性格には正解がない、多様性こそが大切なのだ、ということを心にしみこませて、自分自身のユニークな人生を送りたい。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
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