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<大森カンパニー公演「いじはり」>20歳の女優・仲村星凛が見せた可能性

メディアゴン / 2016年11月13日 7時40分

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高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

昭和50年代から小劇場で笑いをやり続けてきた座長達も今や父親となった。

東京乾電池の柄本明(昭和23年生)は、2人の息子・柄本佑、柄本時生の兄弟ユニットET×2に父、明の盟友ベンガルを迎えてのサミュエル・ベケット作、明演出の「ゴドーを待ちながら」が来年1月に。(前売り 3500円)

一方、東京ヴォードビルショーの佐藤B作(昭和24年生)は息子佐藤銀平と初共演。親子ユニット「東京No.1親子」は福原充則作・演出の「あぶくしゃくりのブリガンテ」。父とそっくりの顔だが2枚目の銀平が状況劇場バリの 河原者の底力を見せつけた。(前売り 3500円)

父それぞれの人柄や好みを感じさせる演目で昔からのファンとしては大変興味深い。若い役者がどんどん育っているのはリアルの芸能の充実を望んでいる筆者としては大変嬉しい。

さて、佐藤B作率いる東京ヴォードビルショーの劇団内分派活動、大森カンパニーは息子世代の良き手本となる安定感のある笑いを提供している。作・故林広志・大森博(昭和38年生)、演出・大森博による「人情喜劇シリーズ vol.5 いじはり」を見た(前売 4600円)。

コストパフォーマンスの大変良い舞台である。芝居とは何か、笑えると言うことはどういうことか、効果音楽というのはどういうものか、役者をやりつづけるとはどういうことか、役者が演出や芝居を若い人に伝えるというのはどういうことか、制作費が少なくてもやれるとはどういうことか。すべてを感じさせてくれる舞台である。

筆者も高校生時代にこの舞台を見ていたら。まちがって役者になって、今頃老体にむち打ち稽古をしながら運命を恨んでいるかも知れない。

【参考】<一番優れている笑いって何?>今、金を払ってみる「笑いの舞台」こそ面白い

舞台は銭湯「大黒湯」の休憩所。「大黒湯」は虐待を受けた子どもやDVを受けた女性の駆け込み寺となって、それらの人を預かり、従業員として育ててきた。近くにスーパー銭湯が出来て客の入りは良くない。

しかもスーパー銭湯の幹部は嫌がらせをして「大黒湯」の廃業を目論んでいた。そこにかつて「大黒湯」を守って三勇士と呼ばれた男達が集結した(坂本あきら、山口良一、大森ヒロシ)

坂本明は老練の手を抜いたかに見える軽い味、山口良一は自由自在の軽みとインチキ臭さ。共にすばらしい。伽代子は口跡が良くなり笑いに欽ちゃん仕込みの好テンポがある。及川奈央はストーカーの元夫が表れたときのおびえの芝居に真実感。

そのなかで今回特筆すべきは、少々ネタバレになるかも知れないが二役を演じる20歳の女優仲村星凛(なかむらあかり)である。はつらつとして老練に混じって物怖じしていない。アクションがきちんと出来る。

二役の気持ち・人格の入れ替わりはどこで行われれば良いのか。詳しく書くと本当のネタバレになってしまうので書けないが、二役目の気持ち・人格は一役目で舞台に登場したときから既に存在しているのではないか。仲村星凛はそれを独特の役者の勘で分かって演じているのではないか。ただ者ではない。

演出の大森にコント芝居「更地」にも仲村星凛を使うように進言した。大森は「コント芝居はまだ早い」と言いきった。役者の世界は厳しい。

顔を上げて挑め仲村星凛。

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