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<批判は思想の違い?>安倍昭恵夫人のズレた感性と軽率さ

メディアゴン / 2017年3月22日 7時49分

両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

* * *

「これスクープかも」と思ったネタがどこも追随しないので、そのまま消えてしまうことがあります。たとえばTBSニュースが伝えた、「塚本幼稚園のHPに、昭和天皇が来園したという嘘」というニュースです。

HPを見ると園児が陛下に花束をお渡しする写真とともに、

 「昭和61年5月11日昭和天皇陛下御臨幸 昭和天皇陛下には、全国植樹祭の途次、当園に御臨幸賜り、園児より紅白のカーネーションをお渡し致しました。」

とありました。宮内庁が「昭和天皇は行っていない」というのですから、これは明らかなウソでしょう。

これと同様にテレビ朝日「羽鳥慎一・モーニングショー」が伝えた渦中の安倍昭恵総理夫人のコメントもおそらく他番組は伝えませんでした。いま、昭恵夫人のコメントにはバリューがあるはずなのですが・・・。

安倍首相曰く、「妻は独立した人格の私人です。」ならば昭恵夫人が独立した大人として自ら説明しなければならないことがたくさんあるはずです。

まずは当事者である100万円についてです。この件は展開によっては内閣が吹っ飛びかねない話です。ご主人により間接的に伝えられる夫人の主張は籠池理事長と真っ向から対立しており、説明のディテールこそが信憑性を裏打ちしますから、昭恵夫人ご自身が2015年9月5日の状況を説明するのは当たり前です。名誉校長であった責任を考えれば最低限の義務です。

このことをはじめ、安倍昭恵首相夫人が説明すべきことは山のようにあります。

昭恵夫人の活動は講演、施設訪問、式典、イベントなど実に活発です。連日のように、日本各地で、あるいは世界各地で安倍晋三首相夫人としての影響力を発揮しています。

その首相夫人が「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長を辞任されました。塚本幼稚園を何度も訪問し、2度にわたって講演し、その教育を褒め称えるという発信をされ続けていた方が、ひとたび森友学園が問題になると、突然に名誉校長を辞されました。一片の説明もないのは実に非礼です。いっぱしの社会人なら、いつまでも、ヘマをして親の陰に隠れている子どもじみたことをしていてはいけません。

安倍昭恵首相夫人は、教育勅語と改正教育基本法についても、ご自身の考えを世間に説明しなければなりません。

【参考】<記憶力も読解力も疑問?>トラブルメーカー・稲田防衛相の教育勅語観

昭恵夫人と森友学園の関係は数年に及びます。当然ながら教育勅語を重んじるかなり偏った塚本幼稚園の教育方針についても充分に理解されていたはずです。しかし、総理大臣夫人たるもの、教育勅語の信奉については一度立ち止まってみるのが常識だったはずです。

教育勅語を評価される方の多くが、親孝行、夫婦・兄弟・友達とは仲良く、博愛、勤勉、等々の素晴らしい道徳律が示されていて、何も悪いことはなく現代でも評価すべきだと言います。しかし、これらの道徳観はいつの世も、世界中どこの国でもごくあたりまえの価値観です。なにもわざわざ戦前の教育勅語を引っ張り出すまでもありません。

教育勅語を通読されれば誰でもすぐに分かることですが、教育勅語の核や精神はただ道徳を教えるものではありません。朕、すなわち現人神で主権者である天皇が、臣民、すなわち一般人に向かって、一身を捧げて天皇に忠孝をつくすことを求めた言葉です。そして安倍昭恵首相夫人が心にとめるべき重要なことは、これが主権在民の日本国憲法とはまったく相容れないことです。国会でも衆議院は、

*根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている

*明かに基本的人権を損い、

として教育勅語を排除しています。当然ながら、安倍晋三総理もこれに則って施政を行っています。ご主人である安倍晋三首相ご自身の手で改正した教育基本法ですら、その前文で、主権在民の「日本国憲法の精神にのっとり」とうたっています。よって教育勅語は明らかに改正教育基本法にも反するのです。

憲法にも改正教育基本法にも反する教育勅語を生徒に暗唱させかねない小学校の名誉校長に、憲法遵守義務のある現職総理夫人が就任するというのは、いかに独立人格の私人とは言え、信じがたいことです。

しかもご自身の講演では、瑞穂の國記念小學院」の必要性について、「せっかく塚本幼稚園で培ったものが公立学校へ入った途端に揺らいでしまう」とまで発言しています。多くの人の面前で教育勅語を暗唱させるような教育を称え、公立学校批判、すなわち現在の文部行政を批判しているのです。ぜひとも夫人の真意をじっくりご説明いただかなければなりません。

【参考】「瑞穂の國記念小學院」用地払い下げ問題の解明急務

森友学園が運営する塚本幼稚園にかかわる様々な問題、たとえば虐待とも言われかねない体罰的なしつけや、度重なる中国や韓国に対するヘイト的な対応などについての見解も昭恵夫人は説明しなければなりません。

総理夫人はファーストレデイとして多くの国を訪問され、夫人外交にあたられる立場ですが、もし中国や韓国を訪問したら、自国を蔑視する「ヘイト小学校」の名誉校長と言われかねません。夫人は日本の国際文化交流の拠点である国際交流基金の特別顧問などもなさる立場からも、名誉校長就任はあまりに軽率と言うべきでしょう。

これら塚本幼稚園の問題点は積年のことで、ネット検索をすればすぐに粗方の見当はつくほど世間に知られたものです。

にもかかわらず、ご自身あるいはスタッフが、塚本幼稚園についてなぜ事前に調べなかったのか。あるいは調べた上でなぜこれほど入れ込んだのか、ご自身の口で説明しなければなりません。昭恵総理夫人は長きにわたってこの学園の教育を褒め称えるという影響力を行使してきた責任があるのですから。

安倍総理は、自分たち夫婦は今回の問題に関わっていない、という答弁を続けました。しかし、国有地払い下げや認可に直接かかわってはいなくても、昭恵夫人は森友学園にかなり深く関わり、新設する小学校の名誉校長に就任したことは事実です。安倍首相ご自身も、総理の身でありながらここへ講演に行くつもりだったと言っています。

安倍総理は首相夫人が名誉校長だからと言って、役人が印籠を見せられたようにヘヘーイと言うことをきくものじゃない、と言いました。仮にそうだとしても、一連の安倍総理夫妻の振るまいが、森友学園と籠池泰典理事長にどれほど大きな信用の裏うちをしてきたかは否定できないはずです。

その裏うちが、役人の対応や寄付集めに何ひとつ影響がなかったと受け止めるのは無理があります。話題のノンフィクション作家・菅野完さんが言う「全自動忖度機」が関係各所で働いたとすれば、少なからぬ責任が安倍首相ご夫妻にはあるはずです。

こと、ここに及んでも、昭恵夫人が謝罪はおろか事情を説明することもなく、ひたすら黙りを決め込んでいるのはなぜなのでしょうか。その理由のひとつをうかがわせる報道が、冒頭で触れた3月9日の「羽鳥慎一・モーニングショー」だけ? が報じた今回の事件に関する安倍昭恵夫人のコメントです。

 「私を批判してきている人たちは、いろいろ思想的な違いだったりとか、いろんなことがあると思う」

しかし、夫人に対する批判は圧倒的に広範なものであり、思想的にかなり「右」の方々からも、あまりの脇の甘さを批判する声が多く聞こえています。昭恵夫人のこの呑気な受けとめ方は世間の感じ方とはかなりズレがあります。おそろしく鈍感、と言わざるをえません。

「批判する人の多くが思想の違う人」、と感じている昭恵夫人のあまりの鈍感さと、この大騒ぎの最中にそれを人前で言葉にしてしまう軽率さ、あえて言えばいまだに篭池夫人にメールしている軽さ、が今日の状況を生み出していることにまったくお気づきではないようです。

総理夫人、天真爛漫もけっこうですが、なにはともあれ、まずはご自分できちんと説明したらいかがですか。子どもじゃないんだから。

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