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史実を描いた映画「ダンケルク」は「大英帝国バンザイ」映画

メディアゴン / 2017年9月20日 7時40分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

クリストファー・ノーラン監督・脚本・製作による『ダンケルク』 (Dunkirk) を見た。観た日が日曜日とあって客席は8割の入り。

「ダンケルクの戦い」(Battle of Dunkirk)は、ご存じのとおり史実である。その概要は以下のようなものだ。

「第二次世界大戦の西部戦線。ドイツ軍は圧倒的な軍事力でフランスに侵攻。英仏軍は、ダンケルクの浜に追い詰められて、撤退戦を余儀なくされる。1940年5月24日から6月4日の間、イギリス軍は輸送船の他にスーパーマリン スピットファイア戦闘機、小型艇、駆逐艦、民間船などを動員して、イギリス本国に向けて40万人の将兵を脱出させる作戦(ダイナモ作戦)を実行した。」

映画は、イギリス、オランダ、フランス、アメリカ合衆国の4カ国合作映画であるが、クリストファー・ノーラン監督がイギリス人であるからだろうか、描かれるのはほぼイギリスの撤退戦である。撤退戦を援護する飛行機のパイロット、愛国心から救助に向かった英国の民間船家族、撤退する兵隊達、三つの視点から淡々と撤退の悲惨を描いてゆく。

3つの視点はカットバックによって描かれることになるがその時制は一致していない。効果的な挿入を目指して、そのような編集になったであろうが、特に混乱することはなく見られる。

ドッグファイトに破れて落水する戦闘機、駆逐艦の沈没、逃げる兵隊の悲惨などは実に克明に描かれており、戦争の現場に行ったことのない筆者は、これが真実に近いのだろうと圧倒される。

【参考】映画『ジーサンズ はじめての強盗』邦題と日本側スタッフがひどすぎる

撤退戦は、戦の中でも、もっとも難しい戦いだという。応仁の乱以後の戦乱の世の中でも殿(しんがり)、つまり、軍勢の一番最後に撤退する軍のことだが、その殿を指揮する武将には、とくに勇猛なものが選ばれた。撤退の仕方によって次の合戦に大きく影響するからだ。

イギリス軍も兵を温存して撤退したかった。ドイツ軍はそれを阻止したい。メッサーシュミットが襲いかかる。

特におどろくような物語は用意されていないし、セリフも少ない。だから、感情移入で映画を見ようとする人には至極物足りないだろう。

ところで見終わった僕の感想だが「イギリス軍はよくやったのだということを描きたかった映画だったなあ」と言うものである。なんだが日本バンザイの戦争映画を見たような気がした。

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