民俗学ホラー漫画「みくまりの谷深」の素晴らしいアイデアを殺したのは誰?
メディアゴン / 2017年12月27日 7時40分
保科省吾[コラムニスト]
* * *
小川幸辰「みくまりの谷深」(KADOKAWA)はパニック系ホラー作品「エンブリヲ」で独自の世界観を開拓した小川ひさびさの意欲作である。
「日本には(世界には)太古に人と別れた水生人類が生存しており、ヒトはその水生人類みくまりと交雑しながら命を長らえている」という、民俗学的なモチーフのアイディアはすばらしく良い。
だが、読み進む内に、がっかり感が増してくる作品でもある。
まずストーリーの運びがおおざっぱすぎる。日本書紀や古事記を引用しながら進むが、その扱いが実に中途半端である。そして漫画としては致命的だが、素人が見てもコマ割りがいい加減に感じる。突然、場面転換が挿入され話が飛ぶような場面すらある。
【参考】<アニメ「君の名は。」は残念?>無理のある「とってつけたような設定」に違和感[ネタバレ注意]
そして、これも重要なことだが、主人公の女子大生は萌え系の姿で描かれるが、その姿と展開される物語に違和感を感じてしまう。もちろん、萌え絵や美少女キャラで作られたホラーやサスペンス漫画の良作は多いが、そういったものともちょっと違った「萌え感」だ。これでは感情移入は難しい。
ここまで考えて気づいたことがある。このがっかり感の責任は漫画家・小川幸辰にあるのではなく出版社側、つまり編集者にあるのではないか、と。これだけの大きな構えの話をわずか上下2巻で描くのは無理である。最低でも倍、できれば5巻ぐらいは欲しいところだ。短くなっているせいで無理が生じ、様々な破綻が生じているように感じる。
ストーリーやコマ割り、萌え系のキャラクター造形などの違和感も、本筋が充分な長さで描かれていれば薄まっていただろう。せっかくの傑作(を予感させる作品)を殺したのが出版社(編集者)であるとすれば、なんとも残念だ。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ベテラン漫画家が手がける「鬼平」のネームはまるで下絵。「緊張感を持ちながら構成しています」
文春オンライン / 2024年4月25日 11時0分
-
【漫画】友達やコンビニでの会話が分からない…「聞き取り困難症」の男子の苦労に16万人共感
マグミクス / 2024年4月16日 11時10分
-
生田斗真×ヤン・イクチュン『告白 コンフェッション』恐怖と狂気の本ポスター&新場面写真
ORICON NEWS / 2024年4月15日 12時0分
-
多様化する「恋愛演出」の現在地、“乾いた”愛情表現がトレンドのなか“ド直球”は再び主軸と成り得るか?
ORICON NEWS / 2024年4月2日 8時40分
-
押切蓮介のホラー漫画「サユリ」実写映画化 監督は『貞子vs伽椰子』の白石晃士
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年3月28日 17時0分
ランキング
-
1活動自粛から約3か月、スピードワゴン・小沢の風貌は「寺尾聡より宮﨑駿」…渡辺正行が近況明かす
スポーツ報知 / 2024年4月24日 22時10分
-
2「心療内科に通うほど苦痛を与えた」『半沢直樹』俳優がセクハラ謝罪、女性を苦しめた不必要なスキンシップの中身
週刊女性PRIME / 2024年4月24日 18時0分
-
3「ぶっ飛んでる」きゃりーぱみゅぱみゅの斬新すぎる“妊娠報告”写真が物議、“マタニティハイ”の落とし穴
週刊女性PRIME / 2024年4月24日 17時30分
-
4あのちゃん、ブレイクきっかけ「水ダウ」に感謝も「ラヴィット!あれから1度も呼ばれていない」
日刊スポーツ / 2024年4月24日 23時22分
-
5広瀬アリスと破局で心配される大倉忠義の〝豆腐メンタル〟 Aぇ!groupのデビューに影響も
東スポWEB / 2024年4月25日 5時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください