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<はれのひ騒動は氷山の一角?>なぜ「メルカリ」は問題が乱発するのか?

メディアゴン / 2018年1月12日 7時30分

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藤本貴之[東洋大学 教授・博士(学術)/メディア学者]

* * *

振袖の販売やレンタルなどを手がけていた「はれのひ」が1月8日の成人式当日に事業を停止し、晴れ着も社長も行方がわからなくなっている今回の騒動。

計画倒産や社長の海外逃亡説まで囁かれるなど、混乱を極めている。さらに「メルカリ」などのフリマアプリで振袖の大量出品が発覚し、「はれのひ」関係者が客から預かっていた着物を転売しているのでは? といった疑惑まで持ち上がっている。

メルカリといえば、昨年、現金売買などの違法取引や詐欺的出品、ジョークを含めた根拠不明な怪しげ取引が乱発され、その運営が問題となったことは記憶に新しい。

昨年の騒動の際に「安心・安全な取引のために」と題して規制・監視強化を表明したものの、今回の「はれのひ」事件がきっかけとなり、再びメルカリの運営に注目が集まっている。

振袖大量出品と「はれのひ」の関係性は明らかになっておらず、現段階での転売疑惑はネットを中心とした憶測でしかない。しかしながら、メルカリがそのような疑惑の土壌になってしまうこと自体に、その運営に危うい「ネットビジネスの闇」を感じる。

メルカリは振袖の大量出品騒動を受け、1月10日付の「お知らせ」において、次のようなメッセージを出し、真相究明に取り組むことを表明した。

「一部報道において、メルカリ上で『振袖』を複数出品しているアカウントが『はれのひ』の関係者ではないかという憶測がなされておりますが、現時点でそのような事実は確認されておりません。なお、インターネット上でその関連性が指摘されている該当アカウントにつきましては、『はれのひ』との関係性の有無にかかわらず、法人利用の禁止という利用規約違反の疑いがあるため出品中の商品を一時的に非公開とし、商品の入手先や本人確認を行っております。」

しかしながら、この一見して企業としての真摯な対応に見えるメッセージにこそ、メルカリのネットビジネス運営者としての危うさを垣間見ることができる。

例えば、「利用規約違反の疑いがあるため出品中の商品を一時的に非公開とし、商品の入手先や本人確認を行っております」という一文である。

シリアルナンバーや所有者情報が商品に刻印されていたり、同じ物がない一点物のような商品であれば、商品の出どころも確認できるかもしれない。しかし、多くは大量に販売される量販品・量産品であり、その出所の確認など至難の技だ。仮に出品者を問い詰めたところで、いくらでもいいわけは可能だ。

少なくとも、出品者に「『はれのひ』商品の転売ですか?」と聞いて、たとえそうだとしても「はい、そうです」などと答えるはずもない。もちろん「はれのひ」のような業者が倒産直前に振袖を転売し、更にそれを知らずに購入して個人で出品している「善意の第三者」である可能性もある。まったくの無関係で「誤爆」のある可能性もある。

いづれにせよ、よほどでなければ商品の出所の探知をメルカリ側ができるとは思えない。量販品の出所の探知が事実上不可能であること、いいわけなどいくらでも可能であることはメルカリも理解しているはずだ。そもそも、今回の振袖に限らず、大量に同じような商品を出品しているアカウントは少なくないのだから。

【参考】<「おしゃピク」って何?>インスタ女子たちの歪んだリア充

「利用規約違反の疑いがあるため出品中の商品を一時的に非公開」と述べている点も理解に苦しむ。少なくとも、当該アカウントによる大量出品は、2ヶ月以上前から始められているという。そうなると、「規約違反疑惑」が少なくとも2ヶ月は放置されていたことになる。

むしろ、1月8日の成人式騒動を受け、事件化した後の1月9日になって公開を停止している。今回のように、SNSやニュース報道という第三者による指摘がなければ、永遠に「規約違反疑惑」は放置され続けた可能性すらあるのだ。

メルカリは昨年の一連の騒動を受け、2017年4月22日より以下の実施を表明している。

*24時間365日の体制で禁止出品物のチェック

*200名以上のカスタマーサポートが年中無休で対応

しかし、今回の騒動では「規約違反疑惑」が2ヶ月以上も放置されている(当然、他の事例も放置されている)。SNSユーザーが見つけて騒いでいるような出品を、200名以上のスタッフが24時間365日稼働しても探知できなかったのだろうか。もしそうであれば、メルカリにはほとんどチェック機能も運営管理もできていないことになる。

事件との関連性は不明とは言いつつも、こういった騒動がとりだたされることにこそ、メルカリの危うさがある。この「危うさ」は、他のフリマアプリと比べてもメルカリは突出しているように筆者は感じる。

例えば、メルカリと併用されることの多い楽天が運営するフリマアプリ「フリル」では、利用登録には氏名と住所が求められ、匿名による商品の授受もできない。一方で、メルカリは、利用登録はニックネームでも可能だし、配送も匿名が可能だ。

一見すれば瑣末な違いにも感じるが、このわずかな差によって、利用の敷居は大きく変動する。少なくとも、登録や配送に記名が求められるだけでも、利用者の緊張感は一気に高まる。もちろん、そういったルール作りが不正利用を抑止し、信頼性を高める一方で、ユーザーにとっては「煩わしさ」となって、利便性を低下させ、ユーザー離れを引き起こす。

あらゆるネットサービスにおいて、信頼性の向上と利便性の向上はいわば諸刃の刃である。しかし、その絶妙なバランスを調整することが、ネットビジネスでは何よりも重要であり、近年のネットサービス、ネットメディアでは最も求められていることだ。そしてそのことをメルカリの運営者たちが知らぬはずはないだろう。

しかしながら、もしそれを理解した上で、ユーザーと売り上げの拡大のために見て見ぬふりをしているのであれば、20年前のインターネット黎明期の頃の「アングラサイト(地下サイト)」のように、メルカリが単なる「闇市」と化し、違法売買や脱法取引の温床になってゆく危険性すら内包しているように思う。

フリマアプリが隆盛を極める今日、運営者たちのモラルが試されているのではないか。

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