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あまりにお粗末だった新元号「令和」発表の段取り

メディアゴン / 2019年4月6日 6時45分

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植草一秀[経済評論家]

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新元号が発表されたが全体としてお粗末感を拭えない。新元号は11時半に発表するとされながら、実際に発表されたのは11時40分を回っていた。予期せぬアクシデントが発生したわけでもない。時報を告げるような正確さで発表するべきだろう。10分以上の遅れは規律の乱れ、能力の欠如を表すものでしかない。

菅官房長官が揮毫を掲げて新元号を発表したが、首相談話があるなら、併せてそれを代読すれば済む。安倍首相がしゃしゃり出てきて会見を開く必要などない。時間の連続性を遮断するのが元号であり、そもそも元号は君主が時間空間を支配するために用いてきたものであり、国民主権の現在の日本で元号を使用すること自体が適正でない。

天皇制と切り離して元号を用いることを定めた元号法に準拠して元号を用いるなら、その制度に則って粛々と作業を進めればよいだけのことだった。揮毫の文字も「平成」の方がはるかに良かった印象だ。

「令和」とされたが、「令」は「命令」の「令」、「巧言令色」の「令」である。「和」は命令によって創り上げるものではない。「和」は人々の自発的な行動によって創り上げられるものである。

最大の「お粗末」は、元号騒ぎで内閣支持率が上昇したと発表されたことだ。内閣支持率が上昇したわけではないのだろう。内閣支持率が上昇したと発表されただけのことである。

新元号発表、改元のすべてが政治利用されている。4月7日、4月21日に統一地方選と衆院補選が投開票日を迎える。この日程を踏まえて新元号発表、改元が設定されている。その狙い通りに、情報空間を改元騒ぎが占有している。その情報空間の占拠も、主権者の側の自発的なものではなく、政治権力が主要メディアに指令して実行させているものだ。

狙いは選挙の投票率を引き下げることにある。狙い通りに投票率の引下げに成功すれば、メディアが流布している自公サイド有利(大阪の場合は維新の有利)情報通りの結果を引き出すことができる。

しかし、選挙の投票率が上昇するとすべてが狂ってくる。政治権力が望む結果を引き出すには、低投票率が必須の条件なのだ。低投票率を実現すれば、創作した選挙情勢情報、内閣支持率情報が選挙結果と齟齬を来さない。

悪質な情報操作の実態が露見せずに済むことになる。着実にこの方向に事態が誘導されている。メディアは新元号に批判的な見解が「少数意見」であるように演出している。人心が、新元号に批判的見解に対して批判的になるように誘導を試みている。

それは、取りも直さず、4月7日、4月21日に投開票日を迎える選挙に向けての投票誘導工作なのだ。主権者国民はメディアの情報操作、情報誘導を見破らねばならない。トランプ大統領が指摘するように、フェイクニュースが蔓延している。フェイクニュースが蔓延するなかで、問われるのが、主権者の側の選別眼である。

メディアリテラシーという言葉も使われるが、メディア情報の本当とウソを見分ける能力を主権者が保持することが大切だ。この点で日本の主権者の評点は世界最低水準と言われている。「だまされやすさ」ランキングで日本国民は世界のトップだと見られているのだ。

アリストテレスは次の言葉を遺している。

「若者は簡単に騙される。何故なら、すぐに信じるからだ。」

若者にアベノミクスを信じ、安倍内閣を信じる者が多いと言われる。彼らはすぐに信じるから、簡単に騙される。「いまの若者は」と言うつもりはないが、若い人々はメディア情報を鵜呑みにせずに、幅広く情報を収集し、自分の頭でものごとを考える習慣を身につけるべきだ。

塩野七生氏が『ルネサンスとは何であったのか』に記した言葉「ルネサンスとはすべてを疑うこと」の意味を見つめ直すべきである。

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