<宮迫博之の闇営業>芸人としての才能を潰しかねない
メディアゴン / 2019年6月17日 7時30分
高橋維新[コラムニスト]
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雨上がり決死隊・宮迫博之が後輩芸人であるカラテカ・入江慎也の仲介で、反社会的勢力が関係しているとみられるグループの宴会に参加し、闇営業をしたのではないかという週刊誌報道があり、大きな話題となっています。法律の勉強をした身として、私見を述べさせていただきます。ただ、普通のことしか言えません。
問題は2つあります。「闇営業をした」ということと、「反社会的勢力の酒宴に出た」ということです。
前者に関してはあくまで吉本と宮迫との契約の問題です。闇営業が禁じられるのは、事務所とそういうことをするなという契約をしているから、です。事務所に所属していないフリーの芸人であれば(あるいは、事務所所属の芸人でもそういった明確な契約がなければ)、自分で仕事をとってきてその報酬を全部自分の懐に入れても何も問題はありません。なので、この問題に対しては、吉本がどういう措置をとるか、ということでしかないでしょう。
宮迫の事務所に対する貢献度は大きいでしょうから、吉本としても今回の件を仲介したとされる入江ほど簡単に切ることはできないでしょう。吉本が動くとすれば、「宮迫を残すことによるデメリット」が「切ることによるデメリット」より大きくなった場合です。紳助は、そうなったからこそ引退にまで追い込まれたのでしょう。
後者に関しても、宮迫の行為が直ちに法に触れるということにはならないと思われます。例えば東京都の暴力団排除条例(暴排条例)は、事業者に対して、一定の場合に契約の相手方が暴力団関係者であることを確認する努力義務、また契約の相手方が暴力団関係者であることが判明した場合に契約を直ちに解除することができる旨の条項を盛り込む努力義務を課しています(18条)。ただしいずれも努力義務に過ぎず、罰則もないほか、暴力団関係者と契約すること自体が禁じられているわけではありません。そもそも、宮迫が出席したパーティーの列席者が「暴力団関係者」なのかどうか(またそうだとして、どのレベルの「関係者」なのか)は、実はあんまりはっきりしていないと思います。
宮迫が今回の営業でギャラをもらったのかどうかはあまりはっきりしませんが、もらっているにしろもらっていないにしろ、契約書までは作っていなさそうなので、解除の条項を盛り込むなどということは当然していない可能性が高いですし、契約の相手方(=営業の依頼主)が暴力団関係者であるかどうかをきちんと確認していないのは確かだと思われます。ただそういったことを全くしていなかったとしても、元が努力義務でしかないので「しようと努力はした」と言い訳をする余地が残っています。またその言い訳が通らなかったとしても、努力義務違反にしかならないので、直ちに何か法的な効果が生じるということではありません。
(※仮にギャラをもらっていたとすれば、それをきちんと申告したかどうかという税法の問題は残ります。)
そうすると、あとは努力義務違反の可能性がある宮迫を世論やスポンサーがどう思うか、ということになります。バッシングの声が広がれば、宮迫が出ている番組から下りるスポンサーが今後増えていくでしょう。そうなると、メディアとしても宮迫の起用を避けるようになります。
すると、宮迫の吉本に対する貢献度も下がっていき、吉本としても「宮迫を残すことによるデメリット」が「切ることによるデメリット」を上回る状況ができ上がるかもしれません。他方で、吉本と直接取引関係のある大企業が吉本との取引をやめようとするかもしれません。そうなれば、吉本に直接のダメージが入ります。そこまでいけば、吉本としても宮迫に対する処分に動き出すかもしれません。
ただまあ、現状世論がそこまでの盛り上がりを見せているようには見えない、というのが正直なところです。週刊誌報道後最初に放映されたアメトーーク(2019.6.13OA)も、この問題に関する謝罪や言及も特になく、普通に放映されていました。今後、この問題はそのまま沈静化していくのではないでしょうか。
私としては宮迫みたいなきちんと実力のある芸人にはちゃんと生き残っていて欲しいと思っているのが正直なところです。
確かに宮迫は、有吉の言葉を借りれば、プライドが高すぎて芸人であるにもかかわらず自分をイジらせない「バリア」を張っています。芸人なのに、ハゲも不倫もビビリも奥さんのこともファッションセンスがダサいくせに変にカッコつけていることも満足にイジれないのです。そのくせ自分はそのバリアの中という安全な位置から他の芸人をイジりまくるので、対等なプロレスができておらず、一方的なイジメに見えてしまって笑いを阻害する(=宮迫から一方的にイジられている芸人がかわいそうに映ってしまう)というとんねるず化現象が起きています。
色々なことができすぎる反面分かりやすく突出した武器があるわけでもないので器用貧乏の誹りは甘んじて受ける必要があるでしょうし、コント向けの敢えて若干クサさを醸し出す芝居がコント以外の局面では鼻につくこともあります。
しかし、あれだけ芝居もできて歌も上手くて誰かがスベってもきちんとツッコんでフォローできる芸人も珍しいのです。芸人として必要な「芸」の基礎がほとんど全ての分野で備わっているんです。そんな吉本の宝を、易々と手放してほしくはありません。
だから、これからはきちんと自分がイジられて笑いをとるという方向性の仕事も解禁していったらどうでしょうか。自分から敢えてヨゴれて、普段自分がバカにしているヨゴレ芸人の戦場に降りていき、一緒に泥に塗れるのです。そうやって仕事の幅を広げれば、吉本への貢献度も上がるかもしれません。そうすれば、首の皮がつながる可能性も上がります。
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