<「サンジャポ」見て気がついた>エンタメとして「不倫」と「喫煙」は似ている
メディアゴン / 2020年2月6日 16時34分
高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]
***
俳優の不倫を巡って世の中が喧しい。不倫した俳優はクズだとか、女優の奥さんは3人も子どもを抱えてけなげであるとか、やはり女優の不倫相手が匂わせツイートをしたのは最低だとか、そのくらいのことは、熱心にテレビを追いかけていなくても耳に入ってくる。
それでまた、この不倫男優のほうがテレビで叩かれ続けていることについて、ある芸能人が「他人の家のことはほっといてやれ」とかつぶやいたそうで、どう思うかをTBS系『サンデージャポン』が、取り上げていた。
筆者は『サンデージャポン』をほぼ8割は見ている。ファンだと言ってもいいかもしれない。番組が始まった頃「この番組は日テレ系TBSの番組だ」と太田光が発言したことがあって、若干、内情を知っていることも相まって、そのアウトローの志はすばらしい、生ぬるいTBSのワイドショーをかき回してくれと爆笑し、以来ファンなのである。
で、今回2月2日の放送を見ながら感じたことは「不倫」と「喫煙」は似ているということであった。では、どこが似ているか?
まず、
1.「不倫」も「喫煙」も娯楽である。
2.「不倫」と「(いまどきの)喫煙」は、どちらも、カミさんに隠れてやることだ。
3.「不倫」も「喫煙」も、法で禁じられてはいないが、実行すると、法を犯す人非人のように罵られる。
4.「不倫」も「喫煙」も、やめられない。
5.「不倫」の場合は相手をベランダに隠したりするが、「喫煙」は隠れてベランダでやる。
6.「不倫」は、おそらく依存症だし「喫煙」は、誰もが認める依存症である。禁断症状も出るはずだ。
7.「不倫」はテレビで取り上げられることで、世の中に娯楽(エンタメ)を提供するが、「喫煙」は、あいつは今どき喫煙するダメ男(女)という情報を提供することで』、非喫煙者に優越感を与える。
筆者がかつて担当した番組でMCの不倫騒動に巻き込まれたことがある。MCが、清潔感を売りにする人だったから、急遽、謹慎一時降板が決まり台本を書き直した。
[参考]<NHKクロ現>「超プレゼン術の極意」取りあげかたが残念
こういう時、不倫芸能人を使った番組を作っているプロデューサーは、謹慎降板にならないよう、自局の情報ワイド番組のプロデューサーのもとに駆けつける。「不倫を番組で取り上げないでくれ」と、泣きつく、あるいは高圧的に言い渡す。番組で何を取り上げるかはプロデューサーの編集権を元に成立しているわけだから、放送前に人の番組の内容に口出しするのは、ものを作る人間として言語道断のことだ。しかしながら判断がどうなるかは、芸能人本人・事務所・スポンサー・代理店・番組の視聴率・プロデューサーの人柄等々、力関係で決まる。
主演・東出昌大『ケイジとケンジ 所轄と地検の24時』を放映しているテレビ朝日は当該不倫に対する放送は腕がにぶる。『サンデージャポン』のほうは、不倫俳優のこのドラマにおける放送時間が少しずつ減っていることなどを調べていて、こういう重箱の隅をつつくセンスが、筆者は嫌いではない。
さて、「不倫」と「喫煙」の類似点を考えていくうちに、筆者は、「不倫」と「喫煙」が、最も違う点にたどり着いてしまった。それは、「不倫」した芸能人はワイドショーで叩かれるが、「喫煙」した芸能人がワイドショーで叩かれることはない、ということだ。そこから分かることは「不倫」は、ワイドショーの商品になるが、「喫煙」はワイドショーの商品にはならない、という当たり前過ぎることだった。
つまり、視聴率がとれてスポンサーに怒られなければ、ギリギリ下世話を狙うのがワイドショーなのである。なまじ理論武装などせずに、世間様が見たいものをやっているんだという覚悟がワイドショーのスタッフには必要だ。おそらく地上波デジタルテレビで生き残るのはワイドショーだけだろうと筆者は思っている。「喫煙」は、叩いたらスポンサーも怒るだろう。
ところで、喫煙者で不倫している人がいたとして、「不倫」と「喫煙」どちらかを止めなければならないとしたらどっちを止めるんだろう。
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