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感染者急増なのに遠隔地移動を推進する怪 -植草一秀

メディアゴン / 2020年7月12日 23時33分

植草一秀[経済評論家]

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ワールドオメーターサイト(https://www.worldometers.info/coronavirus/)のデータによると、東アジア諸国・地域と欧米のコロナウイルス被害状況に巨大な相違があることが分かる。コロナウイルスの感染状況は十分な検査が行われないと把握できない。安倍内閣は日本の感染者数が抑制されていると主張するが、日本の感染者数が少ない最大の理由は日本の検査数が少ないことだ。

コロナウイルス感染症では、無症状の感染者、軽症の感染者が多数存在する。したがって、検査が十分に実施されていない場合、確認されていない感染者が多数存在すると推察される。日本では検査を拡大すれば比例的に感染者数が拡大することになるだろう。

したがって、コロナウイルスの感染被害を正確に知るには、十分に検査が行われている国のデータを検証する必要がある。東アジアで十分な検査を実施しているのがシンガポールだ。

人口100万人当たり検査数は7月9日時点で14万8072件に達している。このシンガポールの感染者数が45298人。人口100万人当たり感染者数は7742人。死者は26人、人口100万人当たり死者は4.4人で、感染者に占める死者の比率は0.057%である。致死率0.057%ということになる。

欧州で検査数が多いのが英国。人口100万人当たりの検査数は16万2625件。英国の感染者数28万6979人、人口100万人当たり感染者数は4227人だ。人口当たり感染者数はシンガポールよりも少ないが、死者は4万4517人、人口100万人当たり死者は4227人で、致死率は15.51%に達する。

これらの統計数値が概ね正確であることが前提になるが、英国の数値が示すことはコロナウイルス感染症が重大な疫病であるということ。感染者の16%が死亡してしまうなら、感染を回避する最大の措置が必要になる。

他方、シンガポールの場合、致死率は0.057%である。2009年に流行した新型インフルエンザの致死率は0.5%以下とされるが、この10分の1の水準だ。

「コロナはただの風邪」という指摘が妥当性を持つ。

コロナウイルス感染症による被害において、東アジアと欧米および南米で決定的な相違が観察されている。日本の死者は欧米に比べて抑制されている。コロナ死と判定されていない死亡者のなかにコロナ死が存在することが想定されるが、他の容認で説明できない「超過死亡者」をコロナ死と仮定しても、欧米の被害状況よりははるかに軽微である。

ただし、東アジア地域のなかで比較すると、日本は最悪グループに属する。フィリピン、インドネシア、日本の3国のコロナ死者数が圧倒的に多い。したがって、日本のコロナ対応は失敗したと判定する必要がある。不幸中の幸いでコロナウイルスの被害が東アジア地域で極めて軽微にとどまっている。

問題はその原因が明らかにされていないこと。人種的に抵抗性のある遺伝子を保有している可能性が高いと推察される。それでもコロナウイルスは変異のスピードが非常に速く、東アジアにおいて深刻な被害をもたらす感染が拡大する可能性を否定できない。

コロナウイルスの感染は冬期において活発化する可能性が高いとされており、2020年秋から2021年春にかけての感染第2波が警戒される。このコロナ問題に対する安倍内閣と小池都知事の対応が定まらない。安倍内閣と小池都知事のコロナ対策は失敗続きなのだ。

幸運にも東アジアの被害が著しく軽微であったために、政策対応の失敗が隠蔽されてきた。単なる「結果オーライ」に過ぎない。安倍首相と小池都知事のコロナ対応に共通するのは、完全な「自分ファースト」だ。都知事選に合わせて営業自粛協力金が支払われ、都知事選に合わせて東京アラートが廃棄された。

いま、安倍内閣は10月総選挙実施に向けて暴走を始めた。経済活動を全開させ、GO toキャンペーン実施を強行しようとしている。財政資金を選挙の買収資金に活用するスタンスなのだ。

コロナ問題に正面から向き合うことが必要なのに、小池都知事も安倍首相も、コロナを自分のために利用することしか考えていない。このような政治を排除することこそ日本の主権者にとっての最重要課題だ。

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