<TBS『日本沈没』>第4話にして訪れた「転」で気になる4つのセリフ
メディアゴン / 2021年11月9日 7時30分
高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]
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『日本沈没ー希望のひとー』(TBS)に、第4話にしてようやく「転」が訪れた。「転」は、もちろん「起承転結」の「転」のことである。第4話の終わりで高層ビルが次々と倒壊しはじめたのである。この先どうなるのか期待感が高まる。
ちなみに、「起承転結」を英訳すると、「dramatic structure and development of traditional Japanese narratives」となる。直訳し直すとすれば「日本の伝統的な物語の劇的な構造と発展」である。つまり『日本沈没』で「物語の劇的な構造と発展」が始まったのである。
このドラマでは、官僚と政治家とマスコミの駆け引き、それらが内在する問題を描くことにも重きを置いているようなので、ここまで「転」の訪れが遅くなったのだろう。あとは、「転」「転」「転」「転」「転」波乱万丈の物語に目が離せなくなるはずだ。
ところで、今回の第4話には、気になる4つのセリフがあった。4つとも説明ゼリフであるが、それぞれ意味合いは異なる。まず、関東沈没の記者会見を決断した仲村トオル総理の独白。思い調子で仲村総理は言う。
仲村「総理というのは、どんな苦渋の時でも何らかの決断をしなければならない」
なぜ、心情を、説明してしまうのか。それも、そうだろうなあ、と大方の人が思っていることを、あんなに重厚に独白しなければならないのか。典型的な説明ゼリフだ。いらない。舞台とかでよくこういうセリフが入ることがあるが、それは大物座長に、「ここでなんか、格好いいセリフちょうだいよ」と演出家が言われて、必要ないと思ってはいるものの、丸く収めるために、入れてしまったというケース。脚本の傷となる。
つぎは、小栗旬環境官僚が、仲村総理を乗せるために言ったセリフ。
小栗「私は、総理が就任の際におっしゃった言葉に感銘を受けました。国民に寄り添ったガラス張りの政治。今こそそれを実現するときではないでしょうか」
「国民に寄り添ったガラス張りの政治」という言葉選びしか出来ない総理大臣、それに感銘を受けてしまうと言う高級官僚。通常私ならそのどちらも信用したくないが、どうだろう。これが、仲村総理がどうしようもないダメ総理であったとの話につながる伏線だというなら。それはそれでありだと思うが。日本でのキャスティング事情を考えると仲村トオルはダメ総理には出来ないようにも思われる。
[参考]ドラマ『日本沈没』と『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』に感じる「没入感」の差
最後の2つ。杏は休職、小栗は会議をクビに。そのときの杏週刊誌記者と小栗高級官僚の説明合戦。
杏「天海さんは、それでいいんですか。これから大きな災害がくるというのに、国民の命を守ろうとして総理まで動かした天海さんが、それでいいんですか」
小栗「国民に危機を知らせて住民避難も実現できた。後悔することはない」
故橋田壽賀子さんは「テレビを見ている人って、シーンが変わると前のシーンを忘れちゃうの、だから私は説明する」とおっしゃっているが、上記の2人の会話はそういうことだろうか。私は少なくとも、杏のセリフ上にある説明はいらないと思う。必要ならインサートカットの方がずっとよいと思う。
小栗のセリフはいわゆる裏ゼリフ(気持ちと反対のことを言う)だから良いという考えもある。だが「国民に危機を知らせて住民避難も実現できた」の部分はいらない。「後悔することはない」だけの方が気持ちが伝わる。
つまりここは、
杏「それでいいんですか」
小栗「後悔することはない」
だけで良いと思うのだ。この2言だけで良いように前半部分をつくるのは苦労だろうけれど。
さて、これから「転」「転」「転」「転」「転」と続く『日本沈没』私は、来襲(ワザ)も見ます。
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