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<テレビマンは海外ロケで鍛えられる>撮影困難であった現場ほど「最高の映像」が記録されていることがある

メディアゴン / 2014年10月28日 1時31分

吉川圭三[ドワンゴ 会長室・エグゼクティブ・プロデューサー]

* * *

テレビマンとして一番鍛えられた体験は? と聞かれたら、筆者は「海外ロケ体験」と答えるだろう。

確かに「大御所のピリピリする現場」だったり「早朝から深夜まで続くコントの収録」なども、十分に「修行」なのだが、国内外ロケ、特に海外ロケはディレクター、プロデューサーにとってテレビマンの技量を鍛える必須体験だと思う。

テレビ業界以外の企業の方でも、海外赴任経験のある方は、なんか「余裕」と「人間的な深み」を感じさせてくれることがある。日本と価値観の全く違う海外での長い生活は複数の視点を人間に与えてくれることがある。

信じられない情勢の国での困難なビジネスを乗り切って来た企業戦士には、修羅場を乗り切った人間にしか出せない言い知れぬ雰囲気がある。もちろん、テレビは海外赴任というのは少なく、せいぜい「長期ロケ」である。

筆者も「ロス警察取材1か月」とかクイズで台湾、香港、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、トンガ王国、アメリカ10都市、トリニダード・トバゴ、ハイチ等、12か国以上の渡航経験がある。それはフジテレビの「なるほどザワールド」を真似したクイズ番組でのことだ。

ただし、悲しいほど予算がない。加えてADもなし。さらには、通訳・コーディネーターもなし、というような修羅場もあった。その場合、筆者の片言の英語でコーディネーター・ドライバーを現地で捜しクイズを撮影する。当時、インターネットが無かったので、事前に日本で本や雑誌、あるいは現地に行った人の話、大使館などの情報を頼って「調べて」から行くのだが、これらの半分が誤情報。仕方なく現地で他のネタを探す。カット割りもその場で考えるわけだ。

 「面白いものを探し出す。それをどうすれば魅力的にできるかを考える。」

これが「テレビ屋」の基本だ。灼熱のジャングルで、極寒の山岳地帯で頭をフルに働かせながら、自分が隊長だから冷静を装いつつ、カメラマン、ビデオ・エンジニア等のスタッフの晩飯のアレンジもしつつ「地獄の海外ロケ」を続ける。

そして毎回必ずといっていいほど「信じられないトラブル」が起きる。その対処の仕方でロケの進行に雲泥の差が出る。最終ロケが終わって食堂でビールで乾杯して、ようやく空路帰路に着くことになるのだ。

帰りの飛行機の中では、ほとんど眠れない。すべてのカットを思い出し、スクリプトを作っておかなければならないからだ。そうしないと成田に到着してすぐに編集所行きだからエライことになる。

帰国してから最低4日は徹夜だ。極限のハードワークだが、これで鍛えられた。日本テレビは国内外のロケ番組が多いが、これが筆者の基礎能力を飛躍的に高めたように思う。ロケに行かないでよい番組を担当する社員を横目に、筆者は様々な経験を積むことができた。特にタレントさんのいないロケは、主体がいないので表現を考え抜かなければならないから大変だった。

後に番組の総合演出になってからは、企画から海外ロケに行く前のスタッフと打ち合わせする時、帰ってきたスタッフの編集チェックをする時に、この経験が断然に生きてきた。

自分の頭で構築したことをただ作るだけなら良いが、テレビ屋は「予期できないことが起こったらどうするか?」を常に考えなければならない。危険地帯でのロケ。空港で機関銃を構えた複数の兵士に取り囲まれたとき、政府観光局の係官が恐ろしい詐欺師の様な男だった時、衛生状態が最悪でバナナとコーラしか食べられない国で1週間のロケでスタッフの士気を下げないためには、内乱が起こっているとは知らず入国した国から最低限の映像を押さえて脱出する方法・・・。

このように海外では想定外のことが必ず起こる。ただ、撮影困難であった国ほど、日本に帰国した時に、最高の映像が記録されていることがある。女優の小林聡美さんが若い頃に、カリブ海の国に連れて行ったことがある。ところがその国は「楽園のカリブ海」ではなく「地獄のカリブ海」であった。

その国の国情が無茶苦茶だった。危険だし極貧国だし政情不安だった。私はかつて映画の巨匠ヒッチコックが泊ったという部屋でベッドに横になりながら一睡も出来なかった。

 「情報が全然違う。明日は一体どうしよう?」

だが、小林さんは腹を括ってくれて嫌な顔ひとつせず演じてくれた。貧乏な村人の小さなカーニバルなど映像は最高だったが、ロケは過酷を極めた。筆者は帰路、経由地のニューヨーク・ブロードウェーで小林さんに人気ミュージカルを最高の席で見ていただいた。これ位のことしかできなかった。

このように、海外取材番組では映像は最高だが現場は地獄などということはごく当たり前にあることである。日本テレビの人気番組「世界の果てまでイッテQ」などは楽しい場面の連続だが、筆者にして見れば「スタッフはこのロケの後、果たして風呂に入れたのか?」とか「晩飯に何を食べていたのか?」などと余計な心配を想像してしまう。

世界にはレストランがなく、例えば昆虫や野鳥だけが主食という地域もたくさん存在するのだ。また、ロケ地にたどり着くだけでも、信じられない悪路や危険な乗り物で長時間かけて行くこともある。「イッテQ」はこの移動映像さえほとんどカットしている。エンターテイメントは苦労を見せないのが基本。

制作者たちは、エンターテイメントのことを良く分かっているのだ。

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