<ドラマのロケでのサイン色紙の貰い方>佐藤浩市さんにお願いした400枚以上の日付入りサイン色紙

メディアゴン / 2014年11月26日 1時52分

貴島誠一郎[TBSテレビ制作局担当局長/ドラマプロデューサー]

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松本清張の長編ミステリー「砂の器」は1974年に野村芳太郎監督によって映画化され、その後、テレビでも5度のドラマ化がされました。謎を解く鍵になった舞台は、島根県奥出雲のJR木次線・亀嵩(かめだけ)駅。

筆者は昨年、別のドラマで奥出雲ロケがあり、亀嵩駅を訪れました。小さな駅舎は「扇屋」という蕎麦屋の店舗になっており、乗降客1日30人程度の1面1線の無人駅です。

映画「砂の器」で撮影されたのは、同じ「木次線」ですが、ホームは出雲八代駅、駅舎は八川駅でした。亀嵩駅を使わなかった理由は、蕎麦屋の看板が邪魔になったのと、崖が迫っていてカメラが引けないとの理由からでした。

2004年の中居正広主演のTBSドラマ版も、給水塔が印象的な山口線の篠目駅で撮影されました。駅舎以外は亀嵩地区でロケが行われていましたが、現地に行くとその理由が納得できます。周囲は温泉もあり、日本の原風景ともいうべき風光明媚な米所であり蕎麦所でもあります。またその風景を守るために、奥出雲町では商業的な看板の制限も行っています。

「出雲そば」の看板が邪魔になったという扇屋さんは、気さくな夫婦2人で営まれ、夕方までの営業です。壁には、原作の松本清張をはじめに、映画ロケで訪れ仲代達矢さんや緒形拳さん、ドラマ版で訪れた原田芳雄さんと渡辺謙さんの日付の入った達筆のサイン色紙が飾ってあり、ロケ地の所縁と歴史を感じさせます。

故人となられた緒形さんは40年前、原田さんは10年前に「砂の器」でこの地で撮影をされ、蕎麦に舌鼓をうたれたのかと思うと、ドラマを通じて親交のあった筆者は、タイムスリップしたような感慨に包まれました。今回のロケで同行した佐藤浩市さんや橋爪功さん、山口智子さんのサイン色紙も飾られているはずです。

特に地方ロケに行くと、ロケ場所や地域の関係者から山のような色紙を預かり、サインしなければならない俳優さんは結構な重労働です。もちろん撮影隊がお世話になっているのですから、俳優さんもイヤな顔をする訳ではありませんが、次に重たいシーンがあったり、時間がなかったりすることもあるので、サインを頼むタイミングは一般の人には分かりにくいと思います。

筆者のようなプロデューサーが同行している場合は、いったん預かって食事が終わったタイミングや、一段落したところでサインと写真を撮ったりします。

亀嵩駅で特に感じたのは、映画やドラマのタイトルよりもサイン色紙には日付を必ず記してもらうこと。緒形さんや原田さんのような俳優の後輩たちが撮影に訪れ心を新たにし、また映画やドラマを観てロケ地を訪ねるファンのためにも、制作サイドは撮影記録としてサイン色紙を残すのは重要なことだと、改めて思いました。

3ヶ月に及ぶドラマの地方ロケで、名前入りも含めて400枚以上の日付入りサインを佐藤浩市さんにお願いしたことがあります。地方だと、なかなか俳優さんの撮影現場にでくわすことも稀ですから、気持ちは解らない訳ではありませんが、親戚一同まで名前入りの色紙を頼まれる方もいます。

俳優も人間ですし仕事で来てますので、そういう時の気遣いはお願いしたいものです。プロデューサーも大量の色紙を抱えて、俳優さんの顔色を窺いながら、一枚の色紙に複数のサインをもらったり、一度にお願いする枚数を調整したりしています。サイン色紙を嫌がる俳優さんはいません。あくまでもタイミングが大事なのです。

ちなみに、俳優部の宿舎となった亀嵩温泉玉峰山荘は美人の湯でも知られ、宿泊した俳優さんの毛筆サインも展示してあります。

名産の仁多米や仁多牛の食事ともに、生きてる「どぶろく」は俳優さんが正月用の土産に持ち帰ったほどの逸品です。また特筆すべきは、奥出雲町の方々が地域振興のため、手弁当でエキストラや炊き出し等のロケ協力をしていただけることです。亡くなられた清張先生も緒形さんも芳雄さんも、亀嵩は忘れ難き地ではないでしょうか。

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