<自閉症研究に画期的報告>自閉症スペクトラム者は「共感力」が乏しいのではなく「タイプの違うものを共感できない」だけである

メディアゴン / 2015年1月6日 1時0分

高橋秀樹[放送作家/日本自閉症協会・日本自閉症スペクトラム学会・日本社会臨床学会各会員]

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自閉症スペクトラム者は(以下ASD:Autism Spectrum Disorder)がある人はは社会性に困難があり、共感性が乏しいと考えられてきた。しかし、この「共感の乏しさがすべての他者に対するものか?」の研究はこれまで行われてこなかった。

昨年2014年11月、京都大学と福井大学が共同で行った研究で、画期的な事実が判明した。その論文の題目は「自閉スペクトラム症がある方々による、自閉スペクトラム症がある方々に対する共感」(2014年11月06日)である。

研究者からのコメントは、以下の様なものである。

 「これまで、ASDがある方は共感性が乏しいと考えられてきましたが、本研究において、ASDがある方はASDの行動パターンをする他者に対して、よく共感できるということが示されました。臨床場面への応用として、ASD傾向の強い方ほど、ASDがある方への支援者にふさわしいかもしれないという知見を提供できると考えられます。教育場面への応用として、特別支援学級をデザインする際にも有効な提言ができるかもしれません。今後は、ASDがある方の他者理解方略を解明し、支援に役立てることをめざします」

つまり、ASDの人はASDの人の気持ちがよく分かるということなのである。当たり前ではないかと思うかもしれないが、これは画期的な知見だ。何故、画期的かは後に説明するが、まず、この研究の実験方法を説明したいと思う。

(以下論文より引用、読みやすいように筆者が助詞を補っている)

 「本研究では、ASDがある方々は、ASDの特徴がある方々について考えるときに共感が起こるかどうかを脳科学的手法で検討しました。ASDの特徴がある人物の行動パターン記述文(ASD文)と、定型発達者(以下TD:Typically developing)の人物の行動パターン記述文(TD文)を、ASDの成人と、年齢、知能指数を合わせたTDの成人に読んでもらいました。呈示された文に関して、自分にあてはまるか(自己判断課題)、文の主語である人物が自分と似ているか(他者判断課題)どうかを判断してもらいました。その結果、ASDの成人はASDの特徴がある人物を判断する際に、自己の処理、共感に関わる腹内側前頭前野が有意に活動しました。
 ASDがある方を対象とした従来の研究では、ASDがないTD(定型発達、Typically developing:TD)人物を対象に作られた文章課題を用い、ASD群とTD群を比較し、TDの人が作った基準によって結果を解釈する研究が多かったといえます。TDの人たちが自身と類似した他者について理解しやすいのと同じように、ASDがある人たちも自身と類似したASD特徴がある他者について理解しやすい可能性が考えられます。本研究グループの一連の研究から、ASDとTDの人たちを対象とした物語理解の研究において、ASDがある人はASDがある登場人物の記憶検索に優れることが明らかになってきました。」(以上論文より引用)

つまり、ASD者は共感が乏しいのではない。タイプの違うものを共感できないだけなのである。そのような共感することに困難のある2者の例なら世の中に無数にある。

・キリスト者とイスラム者
・カソリックとプロテスタント
・スンニ派とシーア派
・富裕層と貧困層
・日本人と韓国人
・専業主婦とキャリアウーマン
・白人と黒人
・政治家と有権者
・Gayとnon-Gay
・大きな政府支持派と小さな政府支持派
・正社員と非正規雇用者
・香港の市民と中国政府
・原発反対派と推進派
・沖縄県民とそれ以外の都道府県に住む日本人
・資本主義者と共産主義者高齢者と若者
・体罰肯定者と否定者
・男と女

そして、同様にASD(自閉症スペクトラム者)とTD(定型発達者)も同じであるということだ。統計によって違うがASDは、全人口の1%から5%、するとTDは99%から。95%になる計算である。

ここで挙げたそれぞれの2者には、共感の進み方に濃淡がある。互いに共感しようという行動か起こっているかどうかでその濃淡はついている。

これらの2者が共感し合うには、話し合うしか無い。お互いのことを学ぶしか無い。ASD者はこれまで、療育やあらゆる面でTD者のことを学ぶという方向で、共感の形成を行い、それが全てであったが、それだけでは決して溝は埋まらず、TD者がASD者のこと学ぶという課程が互いの共感形成には不可欠なのである。

画期的な研究成果と私が判断するのはこの点を科学的に立証したことにある。

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