「フーゾクに行きたいんだ!」と警察で号泣した男

メンズサイゾー / 2014年8月11日 12時0分

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 明治43年の話だ。富山県出身の清次郎(27)という男がいた。3年ほど前から洲崎遊郭(現在の東京・江東区深川にあった遊郭)に通うようになり、ある店の信夫(しのぶ)さんという女性の常連となった。さんざん通いつめたあげく、おそらく現金も底をつき仕事もなくなってしまったのであろう、郷里の富山へと帰っていった。

 それでも清次郎、やはり遊郭と信夫嬢に未練があったのだろう、半年ほど過ぎた頃に再び東京に戻ってきた。そして、なじみの店である荒川楼に顔を出して「上がらせてほしい」と告げた。しかし、東京まで来るのがやっとで、遊べるだけの現金は持っていなかった。

「お金がないのでしたら、無理です」

 当然、店からは断られる。すると清次郎は、あきらめて帰るどころか、店先でいきなり声をあげて泣き出した。

「お客様、困ります」

 驚いた店の者たちが、なだめたり、やんわりと脅かしたりしたものの、まったく動こうとしない。仕方なく、見かねた店で呼び込みをしている金一郎が、遊郭の中で営業している寿司店に紹介して、なんとか仕事ができるように世話した。しばらく働いて、お金がたまったら店に来ればいいというはからいであった。

 しかし、それでも我慢できなかったのだろう、寿司店で働きだしてまだようやく20日ほど経った6月22日の深夜2時頃、荒川楼を訪れた清次郎は、おそらく手持ちの現金すべてと思われる4銭を金一郎に差し出して「上がらせてくれ」と頭を下げた。

 とはいえ、4銭では妓楼で遊べるはずもない。当時、アンパン1個が1銭、かけそばが3銭程度だったというから、現在の価値になおせば4銭というと400円から500円くらいということになろうか。ソープランドやデリヘルの受付で、500円玉を差し出して「遊ばせてくれ」と言っているようなものである。

 多少足りないというのであれば、何とかできたかもしれない。だが、たった4銭ではさすがに金一郎もどうにもできない。

「あと10日も我慢すれば、お給金がもらえるでしょう。1円もまとまってからまた来て下さいな…」

 金一郎がそうなだめて引き取ってもらおうとしたが、またしても清次郎、その場でわあわあと大声を上げて泣き出してしまった。

(またかよ…)

 あきれる金一郎や店の者たちがいくらなだめても、先般と同じように清次郎はまったく動こうとしない。もう手がつけられないと判断した店は、警察に連絡。清次郎は駆けつけた警視庁・洲崎分署の警官に連行された。そして警察官からコンコンと諭された。

 しばらくは大人しくしていた清次郎だったが、今度はその署内で号泣し始めた。

「信夫に会えないと、ボクは死んでしまいます!」

 そう叫びながら、ワーワーと泣きわめく始末。これには百戦錬磨の警官たちも手がつけられず、仕方なく警察署内でしばらく保護するハメになったという。

 その後、清次郎がどうなったのかはわからない。

 ちなみに、明治から昭和初期の新聞をめくると、遊郭に行きたいがためにいろいろな犯罪に手を染めるケースがいくつも見つかる。たとえば、学生が本を盗んでそれを売った金で遊郭に駆けつけるとか、遊郭に行く金欲しさに強盗するとか、「そこまでして行きたいのか」と思うような事例は多い。
(文=橋本玉泉)

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