米FRB利下げにも現実味?2016年に見る今年のドル円相場の行方

MONEYPLUS / 2019年1月22日 6時0分

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米FRB利下げにも現実味?2016年に見る今年のドル円相場の行方

今年は2016年と状況が似ているとされます。一体どういうことでしょうか。同年と比較しながら、為替市場の今後の動向を占ってみたいと思います。


為替相場の転換は2018年に起こっていた

さて、年初のドル急落はともかくとして、円高ドル安基調がスタートしたのは昨年終盤でした。特に10月上旬は為替相場の転換点とも言えるだけに、ここで一度おさらいをしてみようと思います。

重要な役割を果たしたのは何と言っても米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長です。10月3日の講演で同氏は、中立金利まで長い道のりがあるという認識を示しました。米国経済の力強さを考えると、ある程度のタカ派的な発言は自然だったかもしれません。

市場は当然のように利上げサイクルが道半ばであると理解し、米国債利回りは上昇余地を試す展開となりました。このこと自体はドルの支援材料と言え、ドル円は翌4日に一時114円55銭と同年の円の最安値を示現しました。

一方、株式市場にとって大幅な金利上昇は逆風であり、パウエル議長の発言以降、売りに押される展開となっています。金利上昇による米株式市場の急落は昨年2月にも見られた現象ですが、昨秋はなかなか歯止めがかかりませんでした。結局、リスクセンチメントの悪化が米国債利回りの低下を招き、連れて円買いドル売りが次第に優勢となりました。

大荒れの金融市場はFRBに方針転換を促すことになります。11月28日、パウエル議長は、現在の金利はいわゆる中立金利の推定レンジをわずかに下回ると軌道修正。さらに年明けの1月4日には利上げ休止の可能性にも踏み込みました。

このように振り返ってみると、円高ドル安を主導したのは皮肉なことにパウエル議長のタカ派発言だったとみられます。

なお、パウエル議長はその1月4日の講演において、2015年末時点で2016年は4回の利上げがFRBの予測中央値であったが、実際には1回しかできなかったことを引き合いに出しています。

セントルイス連銀が公表している金融ストレス指数を見てみましょう。2015年から2016年初めにかけて金融環境が急速に引き締まったことが見て取れます。

当時は中国株や原油価格の急落が市場センチメントを大きく悪化させました。直近の同指数も一時、2016年以来の水準まで上昇しており、このことがFRBの軌道修正につながったと考えられます。

2016年のドル円相場はどのように動いた?

では、その2016年のドル円相場を振り返ると、年初からほぼ一本調子で円高ドル安が進行し、6月には一時99円02銭を示現しました。ちなみに年初の水準は1ドル=120円程度だったため、20円以上円高に振れたことになります。

FRBの利上げ一時休止が円高ドル安の原動力だったとすれば、今年は同様の環境が見込まれるだけに、同年になぞらえて円高の進行を予想することは決して非合理とは言えません。2016年当時、FRBは利上げ再開に慎重を期し、年末まで待ったことを参考にすれば、少なくとも今年前半は様子見姿勢が続く公算が大きいでしょう。

なお、円が高値を記録した同年6月はEU離脱を問う英国の国民投票が実施され、離脱賛成派が勝利しました。今年は英国の「合意なきEU離脱」が警戒され、市場の重石となっています。“Brexit”をキーワードに相場を重ね合わせる向きもあるでしょう。

カギとなるのは米中貿易協議

ただし、FRBの利上げ停止だけでは円高余地はそれほど広がらず、今年1月3日の104円87銭を試すには利下げの織り込みが必要ではないでしょうか。その意味で最大の注目はやはり米中貿易協議の行方です。交渉期限とされる3月1日までに合意できなければ、米中両国のみならず、世界経済への打撃はかなりのものになることが予想され、FRBの利下げも現実味を帯びるはずです。

もっとも、こうした展開はメインシナリオではなく、あくまでリスクシナリオに過ぎないと考えています。注目すべきは1月17日、一部メディアが、「ムニューシン米財務長官が中国の輸入品に課されている関税の一部または全部を撤廃することを提案した」との観測記事を伝えたことです。

その後、財務省はこの報道を否定していますが、こうした記事が出ること自体、トランプ政権内での力関係の変化を感じさせます。つまり、これまでは米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表のような対中強硬派が主導権を握っていましたが、ムニューシン財務長官に代表される穏健派が巻き返していることが窺えます。当然、トランプ大統領の意向が反映されていると考えられます。

米国が仕掛けた対中貿易戦争は次世代のハイテク覇権争いという大きなテーマ抜きでは語れません。しかし、トランプ大統領には経済を犠牲にしてでも貿易戦争を戦い抜くという覚悟はないと思われます。大統領再選を考えた場合、重要なのは経済であり、外交や安全保障が票に結びつきにくいことは大統領選経験者だけに熟知しているはずです。

おそらく、トランプ氏は構造問題を後回しにして、対中貿易赤字の縮小という実を取ることに方針転換したのではないでしょうか。2月中には米中協議の落とし所が見え、リスクオンムードが広がるとともに円売りが優勢となる展開を予想しています。

<文:投資情報部 シニア為替ストラテジスト 石月幸雄 写真:ロイター/アフロ>

(大和証券 Market Plus執筆班)

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