住宅ローン返済を「とりあえず35年」にするのが危険な理由

MONEYPLUS / 2019年2月27日 18時30分

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住宅ローン返済を「とりあえず35年」にするのが危険な理由

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、マイホームの購入を決めた35歳男性。とりあえず35年で住宅ローンを組んで繰り上げ返済すれば大丈夫だと不動産屋に言われましたが、定年後の70歳まで支払いが続くと思うと不安だといいます。相談者の悩みにFPの平野泰嗣氏がお答えします。

現在、家族4人で賃貸マンションに住んでいます。子どもが大きくなり、家の中で走り回ったりするので、周りに迷惑をかけていないか心配です。ちょうど良いタイミングで近所に新築分譲マンションが売り出されたので、保育園を変える必要もないし、長男が小学校に入る前にマイホームが欲しいと思っていたため、購入を決めました。資金計画を立て、住宅ローンの審査に出すところなのですが、住宅ローンをどのように組んだら良いか悩んでいます。不動産屋さんは「とりあえず35年でローンを組んで、繰上げ返済や退職金で完済すれば大丈夫ですよ」と言いますが、完済時の年齢が70歳になるので心配です。勤めている会社は、65歳定年制が導入されましたが、60歳以降、収入は減ります。退職金は、65歳時に2,000万円程度になる見込みです。


<相談者プロフィール>
・男性、35歳、既婚(妻:33歳・パート)、子ども2人(5歳、3歳)
・職業:会社員
・居住形態:賃貸マンション(マンションを購入予定)
・手取り世帯月収:43万円
 夫:35万円
 妻:8万円
・手取り年間ボーナス:約150万円
・貯金:800万円(自己資金支出後は300万円)


<購入資金計画>
・購入価格(諸経費込):5,000万円
・自己資金:500万円(予定)
・住宅ローン:4,500万円(借入条件は検討中)
・購入物件の管理費・修繕積立金:毎月2.5万円(年間30万円)
・固定資産税:年間12万円


【家計の状況】
・毎月の支出:32万円(うち、家賃12万円)
・毎月の貯金:11万円(児童手当は含まない)


平野: マイホームの購入で、物件選びに次いで悩ましいのは住宅ローンの組み方、その中でも特に返済期間です。返済期間を短くすれば、月々の返済負担は重くなり、返済期間を長くすれば、相談者様のように完済時期が定年を過ぎてしまいます。今回は、住宅ローンの返済期間の考え方について解説します。

返済期間が家計に与える影響を試算する

相談者様の不安は、定年後65歳を過ぎても住宅ローンの返済を続けていけるかどうかです。そこで、60歳までの25年間で住宅ローンを組んだ場合と、70歳までの35年間で住宅ローンを組んだ場合を比較してみましょう。ローン金利は、比較しやすいように固定金利とし、25年は1.35%、35年は1.50%で元利均等返済とします。

25年の住宅ローン: 毎月の返済額 176,817円
35年の住宅ローン: 毎月の返済額 137,782円

25年ローンの場合、毎月の返済額は17.7万円(年間212万円)で、現在の家賃より5.7万円多くなります。このマンションを購入した場合は、住宅ローンの返済のほかに、管理費・修繕積立金が毎月2.5万円、固定資産税は1ヵ月当たり1万円が別途かかるとのことなので、その分を加味すると、現在の家賃よりも月当たり9.2万円の支出増加になります。

現在の毎月の貯金額は11万円なので、なんとか返済可能ですが、子どもの成長にともなう生活費の増加や、これからの教育資金の準備のことを考えると、25年ローンだと心もとなく感じます。家計を見直して、支出を減らすという方法もあるかもしれませんが、家賃を除いた生活費は4人家族で20万円なので、それほど支出が多いというわけではなさそうです。

家計への負担が大きいのはどっち?

では、35年ローンの場合はどうでしょうか。35年ローンの場合、毎月の返済額は13.8万円(年間165万円)で現在の家賃と比較すると、1.8万円多くなります。管理費・修繕積立金・固定資産税を加味すると、現在の家賃よりも月当たり5.3万円の支出増加になります。25年ローンと同様に、現在の家賃と比較すると支出増加には変わりありませんが、毎月の貯金がギリギリというわけではなさそうです。なんとかやりくりしてやっていける水準で、近い将来、家計が破たんする可能性は低くなります。

けれども、完済までの利息の総支払い額を25年ローンと35年ローンで比較すると、25年ローンは約804万円、35年ローンは約1,287万円で、35年ローンの方が25年ローンよりも約483万円多くなります。つまり、長い目で見れば、35年の方が支払う利息が多く、家計への負担も大きくなり、さらに、定年後も返済が続くので、老後破たんの危険性も高いということになります。

一方、25年ローンは、長い目で見ると35年ローンよりも利息の負担は少なくなりますが、直近の家計はギリギリで、近い将来、予期せぬことが起こった場合、早い時期に家計が破たんしてしまうかもしれません。

無計画では繰上げ返済はできない

「今は、住宅ローンの返済負担を軽くしたいから、長めに借りて、後で繰上げ返済をすれば良い」と考える人も多いですが、手元にある貯金だけを見ながら繰上げ返済をしていくような無計画な返済方法はあまりおすすめできません。

というのも、繰上げ返済をするためには、意識して繰上げ返済に充てるお金を貯めなければなりません。けれども、繰上げ返済は「しなければいけない」というものではないので、ついつい後回しになって、思うように繰上げ返済の資金を貯めることができないのです。直近の返済負担を抑えるために、35年ローンを組む場合でも、働くことのできる期間できちんと完済するような繰上げ返済計画を立てることが大切です。

相談者様のケースでは、働くことのできる期間は65歳までなので、65歳に完済することを目標に設定します。

子どもが大学を卒業するまでの期間は、生活費や教育費が今よりも増加することが見込まれるので、繰上げ返済する時期は今から20年後、相談者様が55歳の時とします。55歳から60歳までの5年間は教育資金の負担がなくなることを考慮し、毎年100万円程度を繰上げ返済しましょう。以降は、収入が減る見通しなので、約定通りの返済をするとし、65歳にもらえる見込みの退職金2,000万円から完済(一括繰上げ約230万円)するという計画を立ててみました。ここでは詳細な計算は省略しますが、利息の総支払額が1,192万円となり、35年ローンをそのまま返し続けるよりも95万円、節約するとことができます。

住宅ローンの繰り上げ返済効果

購入後に返済計画を立てても後の祭り?

先ほど立てた返済計画よりも前倒しで繰上げ返済を行えば、利息の総支払額をさらに少なくすることができますが、教育資金などの将来に必要な資金や、万が一のために手元に残しておきたい資金を考慮しつつ、繰上げ返済をする必要があります。そのためには、ライフプラン(将来の家計の収支や金融資産残高の推移を予測し、表わしたもの)に合わせて住宅ローンの返済計画を立てると良いでしょう。ライフプランがあれば、繰上げ返済の時期や返済額をより具体化することが可能になります。

繰上げ返済の計画を含めた、住宅ローン全体の返済計画を立てると、購入予算を含めた資金計画に無理がないかを検証することもできます。

物件を決めて契約を結んでから住宅ローンの返済計画を立てると、後になってから無理な購入だったと気づく恐れがありますが、それでは後の祭りです。先にライフプランや繰上げ返済を踏まえた住宅ローンの返済計画を立ててみると、無理なく買える物件の購入予算など、全体の資金計画も明確になります。

(平野泰嗣)

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