敏腕エコノミスト「靖国神社の桜」が示唆する日本の景気動向

MONEYPLUS / 2019年4月19日 6時30分

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敏腕エコノミスト「靖国神社の桜」が示唆する日本の景気動向

2012年12月から始まった景気拡張期間が今年1月で74ヵ月と、いざなみ景気の73ヵ月を抜いて戦後最長になったという見方があります。その一方、戦後最長更新は“幻”で、2018年10月・11月頃をピークに後退局面入りしているという見方をする人もいます。

このように景気は微妙な局面にありますが、今年の桜は「景気が拡張局面にあること」を示唆しているようです。その理由を解説します。


海外発“下振れリスク”の現状

最近の景気動向は冴えない状況が続いています。筆者は、戦後最長の景気拡張期間は更新をした可能性のほうが高いとみています。より正確には「悪くはなっていないので、景気拡張期間は続いている」という状況でしょう。景気は足踏み状態にあるとみています。

今回の景気回復は、高度経済成長期の「いざなぎ景気」などと比較して経済成長率や賃金の伸びが低く、“実感なき景気回復”という感が強い状況です。また、米中貿易摩擦問題、中国経済の動向など、海外発の下振れリスクがあります。こうした環境下、1月分の鉱工業生産指数の前月比は▲3.4%(4月17日の年間補正で▲2.5%に変更)と大幅減少になりました。

政府は1月の「月例経済報告」で、景気の総括判断を「緩やかに回復している」に据え置きました。この判断からみると、景気拡張期間が1月で74ヵ月と、いざなみ景気の73ヵ月を抜き、戦後最長になった可能性があることになります。

直近3月の「月例経済報告」(4月分は18日公表)でも「このところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やかに回復している」と、基本的には「緩やかに回復している」の判断を継続しています。

日本経済研究センターが毎月実施している日本のエコノミストのコンセンサス調査である「ESPフォーキャスト調査」では、2017年6月以降、偶数月に「半年から1年後にかけて景気上昇を抑える(あるいは景気を反転させる)可能性がある要因(3つまで)」を特別調査として実施しています。

2019年4月調査によると、「中国景気悪化」を挙げた人が26人で第1位ですが、2月の31人からは5人減りました。「米国景気の悪化」が23人で第2位、「円高」が16人で第3位です。4月調査から新たに加わった「消費税率引き上げ」が13人で、「保護主義の高まり」の11人をかわし、第4位になりました。

なお、先行きに関して、明るい材料もあります。「ESPフォーキャスト調査」2019年2月特別調査では中国製造業PMI(購買担当者景気指数)見通しを尋ねました。結果は年央以降に期待が持てる内容でしたが、さっそく3月分の実績が50.5と、景気判断の分岐点の「50」を上回りました。中国政府の経済対策で中国景気悪化に歯止めがかかることを期待したい局面です。

「下方への局面変化」で踏みとどまるか

そもそも、にわかに「景気はすでに後退局面ではないか」という見方が浮上したのは、鉱工業生産指数などの悪化を受けて、1月分の景気動向指数が弱かったためです。

1月分一致CIの前月差が大幅下降になりました。そして、7ヵ月後方移動平均も下方修正の条件を満たしました。機械的な基調判断は「足踏み」から「下方への局面変化」に下方修正されたのです。

「下方への局面変化」は、事後的に判定される“景気の山”がそれ以前の数ヵ月にあった可能性が高いことを示す判断です。もう一段階、判断が下方修正されると、景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」になります。

「悪化」になる条件は、(1)一致CIの3ヵ月後方移動平均が3ヵ月以上連続して下降すること、(2)当該月の一致CIの前月差が下降すること、の2つを満たすことです。2月分速報値では、一致CIの3ヵ月後方移動平均が4ヵ月以上連続して下降したのですが、一致CIの前月差が上昇だったので、「下方への局面変化」で踏みとどまりました。

4月分になると、一致CIの前月差がよほど大幅な下落でなければ、非常に弱かった1月分が抜けるので、3ヵ月後方移動平均は上昇に転じることが見込まれます。3月分で一致CIの前月差が下降にならなければ、「悪化」への下方修正は回避され、景気後退説が弱まることになるでしょう。3月分の製造工業生産予測指数の前月比がプラスなので、その可能性は大きそうです。

東京の桜開花が早いと景気後退にならず

ところで、桜の開花の時期と景気局面には実は密接な関係があることを、皆さんご存じでしょうか。気象庁は1953年から「生物観測調査」を実施しています。その調査項目の中に、全国各地の桜の開花日と満開日があります。

気象庁が観測している東京の桜の標本木は、靖国神社の桜です。東京の桜の開花日は、平年では3月26日。現在の平年は1981年から2010年の30年間の平均です。ちなみに、1つ前の平年は10年前の1971年から2000年の30年間の平均で、東京の桜の開花日は3月28日でした。

靖国神社の桜は景気の動きがよくわかるようです。東京の桜の開花日が平年より5日以上早い3月21日以前だった年は、桜の開花時期が景気後退局面になったことは一度もありません。

「生物観測調査」が実施された67年間(1953~2019年)で東京の桜の平年開花日3月21日以前に開花した年は14回あります。一番早かったのは2002年と2013年の3月16日。次の早い開花第3位は2018年の3月17日です。第4位は2004年の3月18日。第5位が1966年など4回あった3月20日でした。

桜の開花と株価

今年の東京の桜の開花は3月21日になりました。歴代9位タイです。昨年の3月17日より4日遅かったのですが、平年の3月26日より5日早かったのです。

日本人は毎年、桜の開花を待ち望んでいます。桜の開花が早いと、何となく気分もウキウキしてきます。消費者心理にプラスに働くようです。

また、実際に消費支出にも好影響を与えます。開花が早い年は3月の気温が高い傾向があり、春物衣料が早めに買われ出します。なかなか桜が咲かずに寒い日が続いていると、冬物をいつまでも着用し、春物を買う必要があまりなくなります。

加えて、日本人は桜が大好きです。開花後は花見に出かけ、桜を眺めながらの宴会で盛り上がります。お花見目的の旅行などへのニーズも大きいものがあります。これが満開を過ぎて散るまで続くため、その間が長ければ長いほど、景気にはプラスに働くことになります。

長く花見できると景気も持続

東京の桜が平年の3月26日より早い開花日の年で、開花から満開までが長く、花見がたくさんできた年は、その後1年超にわたって景気の拡張局面が長く続く傾向があります。

これまでは1966年の16日がトップで、その年は景気拡大が1年超続きました。平年より早い開花日で満開までの日数が11日以上の年は計9年ありますが、そのほとんどで1年超にわたり景気拡張局面が継続しています。

今年の満開は、開花から6日後の3月27日で、間隔は平年の8日より2日短かったのですが、満開後に寒い日があったので、4月6日・7日の土曜日・日曜日頃まで見頃が長く続きました。満開になった後もすぐ散ってしまうのではなく、長く花見ができたという珍しいケースになりました。 

今のところ、日本の景気はもたついています。3月の日銀短観では大企業製造業・業況判断DIは悪化しましたが、類似調査の4月のQUICK短観4月調査では2月・3月に比べ改善し、底打ち感が出ています。景気も桜のように満開を迎えられるかどうかが、注目されます。

(宅森昭吉)

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