散らかる家の共通点は?片付けの達人が感じた整理整頓とお金の関係

MONEYPLUS / 2019年6月15日 9時0分

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散らかる家の共通点は?片付けの達人が感じた整理整頓とお金の関係

「『ガラクタのない家』幸せをつくる整理術」(婦人之友社)などの著書がある、整理収納アドバイザーの井田典子さんに、片付けの極意を聞く企画の第2回。井田さんは、片付けに悩む200軒の家を訪問し、改善した経験があります。そこから感じた、散らかっている家の共通点とは……?

多くの実例を見てきた井田さんが指摘する、片付けとお金の気になる関係。そして、1Kなど狭い住まいの片付け方、コレクションがある人への片付けのアドバイスなども紹介します。


大事なことを仕分けできれば、すべてが上手くいく

――井田さんは、片付けで困っている方のお宅への訪問・改善も行っていらっしゃいます。200軒を訪れて感じた、片付いていない家の共通点はありますか?

井田典子さん

井田さん(以下同):まず、玄関を開けたときのよどみですね。窓を閉め切っているお宅が多いので、空気が淀んでいるんです。それと、壁や窓、廊下をふさぐモノの“圧”。玄関を入ると、のれんで仕切られていたり、ベランダに面した部屋のカーテンが引きっぱなしだったりするお宅では、しっかり光が入るように、まずはそこに風穴を空けることを目指します。

――風穴、ですか。

まずは光と風を入れてあげる。そうすると、「この家はこんなに明るかったんだ!」と驚かれます。それと、元々の間取り図がわからなくなってしまうんですね。台所は二方向から入れるはずなのに、一方の入り口にゴミ箱を置いてしまっているとか。「どういう家だったのか」を把握するため、最初は間取り図を確認します。

――家のポテンシャルが生かせていないのは、もったいないですよね。

それぞれの方に、言い訳や想いがあるんです。なので、片付けに行く前に、それを吐き出していただきます。「いろいろなことで悩んでいる」とおっしゃる方も、電話で20分ぐらいお話しすると、気持ちが軽くなるようです。「他にはありませんか?」と聞くと、「悩みがたくさんある気がしていたけど、こんなもんでしたっけ?」とおっしゃることも。

――前回、片付けが苦手な人に向けて教えていただいた、「いいことも悪いことも書き出してみる」に通じますね。

思考の 「だ・わ・へ・し」 (出す・分ける・減らす・しまう。詳しくは第1回参照)です。部屋が片付かない、お金が足りない、今日の献立が決まらない……。吐き出さないと、悩みがたくさんあるような気がしてしまう。でも、その根底にあるのは「お金が足りない」だけかもしれません。吐き出してみると、悩みの輪郭がはっきりしてくるものです。お宅訪問では、まずはその方の想いを吐き出していただき、受け止めます。ここでも整理が9割、収納が1割。仕分けて大事なことを見分けることができれば、何をやってもうまくいくんです。

家計と収納スペースを圧迫する“お買い損”

――片付けの悩みは、いろいろなことにつながっているんですね。お金との関連はあるのでしょうか?

井田さん:関係は大いにあると思います。片付けられない人は、家計簿をつけていない人が多いです。それと、気をつけてほしいのが、ドラッグストアでの買い物。消耗品の商品数が多く、毎日何かが安くなっています。そのため、買う予定がなかったものを買ってしまう。必要だからじゃなくて、安いから買ってしまうんですね。家に既にストックがあるモノを新たに購入すると、数が増えて管理が大変になりますし、いくつあるかも把握しづらくなります。片付け訪問をすると、棚の奥から忘れられたストックがたくさん出てきたりします。これではお買い得ではなく、“お買い損”ですよね。

井田さん引き出し
井田さんの家の全カトラリーが入っている

――「安く買える」と思うとつい手が伸びてしまいます。

マヨネーズもケチャップも、いつもどこかのメーカーのものが安くなっていますし、そんなに高くなることはありません。「安いから買う」ではなく、「今、必要なので買う」にスイッチを切り替えると、部屋も整理され、無駄にしてしまうこともなく、お財布にもやさしいですよ。習慣を変えるのは、今までの惰性を手放すこと。勇気がいりますが、切らしてから買うようにすると、「あれはまだあったかな」と考えなくてよくなります。とても楽ですよ。私が尊敬する羽仁もと子先生(月刊誌『婦人之友』の創刊者)は、「たたみかけてものを買わない」と表現しています。それに、ストックがたくさんあると、使い方も雑になってしまうんですよね。

――「あれを切らしたらどうしよう」と、みんなすごく心配性になっていますよね。

「食品用ラップを切らすの、怖くないですか」と聞かれることがよくあります。ただ、食品用ラップがない時代もありましたからね。切らしている間を自分の工夫で切り抜けるのは、やってみると楽しいこと。醤油がなかったら塩味に、みりんを切らしたら砂糖で代用すればいいんです。それに、「切らしてから買う」を徹底していると、「1年間にこれだけあればいいんだな」とメドがつく。予算を立てやすくなるんですね。“お買い損”状態で次々と買っていると、計画が立てられないんです。先の分まであれこれ買っている方は、「1年間、いくらで暮らせるか」の基本額が出てこない。

井田さん引き出し
ため込まない収納

――200軒訪問したなかには、「モノを捨てられない」タイプの方も多かったのではないでしょうか。

「私は捨てられない人」「私が死んだら全部捨ててね」とおっしゃる方は多いです。ただ、モノは勝手に消えてくれないんです。いつかは誰かが捨てることになる。それは娘さんや息子さんであることがほとんど。親御さんの死後、お子さんが自分で処分するなら手間と時間が、業者に頼むなら6畳で30万円ほど費用がかかります。「自分で捨てられないなら、その処分費用を残すしかないですよ」とアドバイスすると、「娘や息子は嫌がるわ」と気づいてくださいます。捨てないことは、捨てる辛さを誰かに譲っていることなのです。

――ただ、思い出の品はどうすればいいのでしょう?

自分たちにとっての思い出の品は、次の代の人にとっては基本的にいらないもの。私の場合、娘が子育てする時に役に立つかとずっと付けていた育児日記も、「ふ~ん」で終わってしまいました(笑)。私の代で捨てようと決めたので、思い出の品はすぐそばに置いて、普段から見返しています。押し入れや天袋にしまいこんでしまうと見返すこともなく、「いつかなんとかしなきゃ」と気にかかるんですよね。それよりは、「もういいわ」と思えたら減らしていくほうが軽くなれる。アルバムなど、思い出の品を見返すのは豊かな時間ですよ。

1Kの一人暮らし、本やコレクションがある人の片づけは?

――ここからは、生活スタイル別に、片付けの悩みについて教えてください。まず、私自身もそうですが、周りにも本が手放せなくて悩んでいる人が多いです。

井田さん:「この本はすごくよかったら、他の人にも読んでほしい」と考え、古書店に売るのはいかがでしょう。私の場合、この先3回以上読み返すと思ったものを残しています。ミヒャエル・エンデの作品や「長靴下のピッピ」など、童話が多いですね。孫にも読ませたいと思っています。夫は歴史小説を息子に読ませたいとずっと残していたのですが、息子は別の機会に読んでいたらしく、この間ついに手放していました。

――間取りが1Kやワンルームなど、狭い住宅で暮らしている人におすすめの方法はありますか?

広い家以上にモノの量を絞りましょう。しっかりとモノを選んで、「これもあったらいいかも」と思うぐらいでは買わない。モノの循環を意識して、使わないものを手放し、スペースを大事にしましょう。片付けには、週末を活用。「土曜日の午前中は片付けタイム」と決めて、その時間だけはフルに動いて片付けてみるのがおすすめです。片付けは、夜にはやらないこと。夜やると思い出に浸ってしまって進みませんし、時間が無制限に長くなってしまいがち。夜は「枠」がないんです。午前中に手を付けると、お昼にはお腹がすいて、時間の流れがわかります。終わりがはっきりしていたほうがいいですよ。

――どうしても手放せないモノや資料、コレクションがある人におすすめの整理術は?

たとえば作家さんや編集者の方は、資料としての本をたくさんお持ちですよね。そういった場合は、「活用できているか」を意識してください。資料を背の順に並べる、後ろの方に収納した資料も見えるようにしておく。必要なときにいつでも探し出せなければ意味がありません。洋服だって、たくさん持っていてもいいんです。ただ、全部見える状態にしていないと、活用できないものが出てきてしまいます。

訪問したお宅には、お父さんの趣味がプラモデルというご家庭もありました。箱は押し入れにしまい、組んだプラモデルはショーケースに並んでいます。そのスペースはお父さんの聖域だからそのままに。ただ、その「枠」をはみ出さないようにお願いしました。というのも、入り切らないものをお子さんの部屋に置いていたんですね。共同生活において、それはルール違反。自分のエリアで収まるよう、お父さんなりに考えてもらうようにしました。

コレクションがある人は、優先したいモノが決まっているわけです。スペースは決まっているのですから、コレクション用保管スペースの「枠」を決め、それ以外の場所はコンパクトに。これはお金や時間と同じこと。1か月の収入も、家のスペースも、1日の時間も決まっている。重要なことを優先するためには、残りを工夫していくしかないんです。モノ、時間、お金は、実は同じこと。何かひとつが上手くいくと、残りも全部上手く回り始めますよ。モノのよどみがなくなると時間の使い方も、お金の使い方も上手くなります。

――井田さんに教えていただいたルールは、どれも自分を軽くする、暮らしを楽しくするためのものなんですね。

著作に「幸せをつくる整理術」とつけたように、整理する目的は、幸せになること。「片付けなきゃ」ではなく、「片付けた瞬間から幸せになる!」と、楽しみながらやれた方がいいですよね。余白がないと、新しいことも入ってきません。モノを減らすことは、自分を軽くしてくれますし、悩みを減らし、楽しい方向へと連れて行ってくれますよ。


片付けとは関係なさそうなことが、実は片付けと、そして幸せに生きることと結びついている。自身の経験と豊富な訪問片付け実践から紡がれる井田さんの言葉は、力強いものでした。井田さんは、「手を動かしてさえいれば、確実に目に見えるものが変わってくる。そして、気分がすっきりする。それが片付けです」と話します。全2回にわたってお送りした井田さんの整理術。実践できそうなことから、試してみてはいかがでしょう。

「『ガラクタのない家』幸せをつくる整理術」(婦人之友社)

ガラクタのない家
NHK総合テレビ「あさイチ」などに出演し、“スーパー主婦”“片付けの達人”と呼ばれる井田典子さんの著書。3人の子育て中に工夫した整理収納、時間の使い方などを発信し続けてきた井田さん。その井田さんが、娘さん夫婦と二世帯同居をすることに。60歳を前にしての“暮らし替え”の様子とともに、その整理術を紹介。また、一般家庭への片付け訪問でのビフォア、アフターも収録。シンプルライフの極意が学べる一冊。

(仲川僚子)

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