ちょっぴりネガティブ「すみっコぐらし」が大人に刺さる理由

MONEYPLUS / 2019年7月1日 7時0分

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ちょっぴりネガティブ「すみっコぐらし」が大人に刺さる理由

「ここがおちつくんです」がキャッチコピーのキャラクターシリーズ「すみっコぐらし 」。企業とのコラボレーショングッズを含めて店頭で見かけない日はなく、3月25日に発表された「日本キャラクター大賞2019」では、見事グランプリを受賞しました。7周年を迎えた今も安定した人気を見せています。

すみっコぐらしはキャラクター商品全体の売り上げ累計は現在200億円。ライセンシー社数は、170社(2019年現在)となっています。すみっコぐらしはキャラクター開発とオリジナルデザインの文房具や雑貨の製造販売を手がける「サンエックス」のオリジナルキャラクター。「リラックマ」や「たれぱんだ」といった数々のヒットキャラクターを生み出してきた会社です。

老若男女から愛されるキャラクターデザインはどのように行われたのでしょうか。さらにファンを飽きさせない商品企画の背景について、すみっコぐらしの生みの親であるデザイナーのよこみぞゆりさんと、キャラクター事業部の桐野朋子さんに話を聞きました。


「かわいい」だけではないキャラ

すみっコぐらしのキャラクターは、寒がりで人見知りの「しろくま」、恥ずかしがり屋で気弱な「ねこ」、硬いから食べ残された「えびふらいのしっぽ」など少しネガティブ。この人気キャラクターを生み出したのが、デザイナーのよこみぞゆりさんです。

よこみぞさんがキャラクターデザインの職を目指したのは、子供の頃にサンエックスのキャラクターである「たれぱんだ」「アフロ犬」「リラックマ」にハマり、「この会社に入ってキャラクターを作りたい」という夢を抱いたことがきっかけだとか。美大を卒業後、無事に入社したよこみぞさんは、社内のコンペで学生時代にノートのすみっこに書いていたキャラを提出。見事採用となったものが、今やサンエックスで一二を争うヒットキャラクターになりました。

よこみぞさんの仕事の大まかな流れは、新シリーズの発売に合わせて、それぞれのテーマ・ストーリー・アートをチームで検討し、アートが完成したら、それぞれのアイテムにデザインを落とし込むというもの。自社商品の開発以外にも、出版やライセンス商品の監修など、多岐に渡る仕事に取り組んでいるのだとか。

「私個人の考えになりますが『ただかわいいだけではないキャラクター』であることが、弊社のキャラクター全体に共通する強みだと感じています」

サンエックスのキャラを一途に想い続けたよこみぞさんは、自社のオリジナルキャラクターの魅力についてこう語ります。

重要なのは“ひっかかり”

すみっコぐらし(C)2019 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

この「ただかわいいだけではないキャラクター」づくりのポイントが、シリーズの世界観の構築やキャラクター設定。これがサンエックスのキャラクターの持ち味でもあります。

「見た目のかわいさだけでなく、それにプラスして共感、シュール、ネガティブ、ちょっと変など、なにかひっかかりのあるコンセプトがあることを意識しています。また、平面だけでなく、(グッズとして)立体になった時のかわいさも、初期の段階から考えて制作しています」(よこみぞさん)

「〇〇のふりをしている」「〇〇なのに、〇〇」など、哀愁を感じさせるキャラクター設定にも、すみっコぐらしにファンがハマる要因があるようです。

よこみぞさんが入社した同年の社内コンペで評判が良かったというすみっコぐらしは、順調な滑り出しをしたように思われますが、キャラクターがデビューするまでに、かなりの試行錯誤があったのだとか。

「社内コンペで発表した時から、キャラクターのラインナップは何度も練り直しました。自分のこだわりや好みをどこまで通すか、他の人の意見の取り入れ方に悩み、もっとネガティブな方向へ振り切りたいという気持ちもありましたが、最終的には程よく『ちょっぴりネガティブ』なキャラクターにまとまりました」(同)

「キャラ好きな大人」が欲しいもの

キャラクターグッズというと子供のものと思われがちですが、「キャラ好きな大人」は日本にたくさんいるといいます。

「キャラクターを作る際は『自分がユーザーだったら好きか、欲しいか』を常に考えています。私自身『キャラ好きな大人』として、自分が欲しいものを作り続けていきたいと思っています」

キャラクター愛を持ったデザイナーが手がけたからこそ、子供のみならず大人のユーザーの心も離さないキャラクターに成長したともいえそうです。

すみっコぐらし(C)2019 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

キャラクター事業部の桐野朋子さんによると、すみっコぐらしのターゲット層は大別すると、「子供を中心としたファミリー層」と「20〜30代のコアユーザー」。このように、メジャーなキャラクターでファン層が2つあるのは珍しい現象だそう。大人の男性のファンも増えていて、すみっコぐらしの世界観に癒されているようです。

「最近、大人の男性からも注目され始めていると実感しています。お子さんや彼女が好きで知ったなど、周囲の方からの影響でファンになっていただけるケースが多いようですが、最近はキャンペーンや店頭で見かけたり、LINEやスマートフォンのゲームアプリ、書籍からなどと入り口が多岐に渡っています」

大人も子供も疲れている時代

すみっコぐらしに対して、ヒットキャラクターであるたれぱんだ、リラックマも幅広い層のファンを持ったキャラクター。どれも「ほっこりする」「ゆるい」「癒し系」などが共通項として挙げられます。

「それぞれ、キャラクターとしてのデザインだけでなく、深いストーリー性と共感性の強さが特徴です。アイコンとしてだけでなく、『生きている』お友達のような存在に近いものと解釈しています」(桐野さん)

さらに大人がキャラクターに「癒し」を求める背景については、次のように考えているそうです。

「たれぱんだが登場した頃は、今ほどにSNSが発達していませんでした。また、リラックマが登場した頃は世の中の経済状況が厳しく、社会人を中心に『癒されたい』という気持ちが強まっていて、違った時代背景があります。すみっコぐらしが登場した今日は、大人だけでなく子供も疲れていたり、不安な気持ちや人間関係の悩みを抱えることが多くなっているように思います。

弊社としても、『売れるキャラクター』ではなく、その時代に必要な『癒し』を持ったキャラクター、コミュニケーションツールとなるキャラクターが、結果的に評価され続けているように感じています。すみっコぐらし、たれぱんだ、リラックマはそれぞれ、期せずして子供から大人まで皆に『寄り添う』存在として、あり続けたのだと思っています」(同)

時代の変化とともにキャラクターに求められる癒しの形・効果は、時代と共に細かい変化はありますが、本質的には変わらないと感じていると桐野さん。人に寄り添う姿勢が、幅広い世代に愛されるポイントのようです。

チームで「すみっコぐらし」の世界観を構築

文房具、雑貨、書籍、ゲームソフトからライセンシー商品まで、多様な商品展開を見せるすみっコぐらし。たくさんのキャラクターを持つシリーズの特徴を活かし、コレクションが楽しめるアイテム(「てのりぬいぐるみ」を始めとする『すみっコぐらしコレクション』など)の開発・展開には特に力を入れてきたといいます。

すみっコぐらし(C)2019 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

海を舞台にした「すみっコとうみっコ」など、定期的に異なるテーマを設けたグッズを発表するなど、世界観の拡張にも抜かりがありません。こういった商品の企画のデザインは、キャラクターの作者であるよこみぞさんが全てを行なっていると思いきや、チームで検討しているとか。

「商品化する際のデザインは、よこみぞを含めたチーム全体で行っています。キャラクターの世界観作りについてもチームで行い、作者の意向も尊重しつつ、多くのスタッフの意見を取り入れることで、より深みのあるキャラクターの世界を構成していきます」

じわじわと右肩上がりに成長

こうしてユーザーからの共感を獲得し、認知度も抜群の人気ぶり。そんなすみっコぐらしも、2012年頃にはすでに目立つ存在となっていた印象がありますが、発売当初は文字通り店舗のすみっこに置かれているキャラクターだった、という話もあるそうですが……。

「『発売直後は奮わない』というのは、全てのキャラクターが必ず通る道なので全く気になりません。ただ、すみっコぐらしに関しては突出して低いことはなかったと思います」

人気に火がつく起爆剤となった商品や企画が気になるところですが、はっきりとした転機もなかったといいます。

「すみっコぐらしに関しては、特別なターニングポイントなどはなく、常に右肩上がりの直線グラフのように、じわじわと成長してきました。この成長し続ける持続力と、安定した実績こそがすみっコぐらしの強みだと思います」

今後の展開については、すみっコぐらしをまだまだ知らない方が多いので、知ってもらうきっかけや入り口をたくさん作っていき、商品からのアプローチだけでなく、コラボやイベントなど新しい切り口の見せ方にもどんどん挑戦していきたいと桐野さんは話します。

さらなる深耕拡大を目論むすみっコぐらしは、今後ますますの成長を見せそうです。

(石水典子)

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