焦点はG20後、長期化する貿易戦争下で注目すべき投資先は?

MONEYPLUS / 2019年6月25日 11時30分

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焦点はG20後、長期化する貿易戦争下で注目すべき投資先は?

G20サミットと米中首脳会談が今週末に迫ってきました。5月5日にドナルド・トランプ米大統領が突然、対中追加関税引き上げ発言を発して以来、対中関税第4弾の可能性や中国通信大手ファーウェイとの取引禁止、それに対する中国からのレアアースの対米輸出禁止の検討と、激しい攻防が続いてきました。

しかし6月18日には、トランプ大統領がG20に併せて米中首脳会談を持つとの意向を示し、再び米中協議の軟着陸への期待が高まっています。

とはいえ、米中通商協議の本質が「米中の覇権争い」であり、トランプ大統領が来年の米大統領選挙にかけて、外交政策での切り札として利用し続けると予想されるため、米中貿易摩擦は強弱を変えながらも、長期化する可能性はあるでしょう。

こうした局面での投資対象としては、対外輸出依存度や米中向け輸出依存度が低い国、つまり内需の成長力が大きい市場が選好されるとみられます。米中貿易摩擦の影響を受けてもなお、成長が期待できそうなアジア、オセアニア諸国を分析してみたいと思います。


7%の成長を見せたのは?

まず注目したいのは、ベトナムです。米中貿易戦争における「漁夫の利」を得ると期待されています。中国と競合する電子・電機や繊維などの輸出増が見込まれるためです。

昨年は良好な雇用環境を背景にした民間消費や、生産拠点の移転等を背景にした対内直接投資が堅調に推移し、2018年の実質GDP(国内総生産)は前年比+7.1%と14年ぶりに7%を超えました。

GDP

2018年末にはCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)を批准するなど、政府は外圧を通じて経済構造改革を進める姿勢を示しています。2019年も海外投資の流入や輸出増などを背景に、6.5%超の成長が見込まれています。

選挙後の安定政権に注目

次に、3月から5月にかけて選挙が実施されたアジア、オセアニア諸国が浮かび上がってきます。

選挙結果がポジティブサプライズとなった豪州では、政権交代予想に反して、与党・保守連合(国民党・自由党)が過半数超で勝利しました。

野党・労働党が掲げた富裕層の住宅取得に悪影響を及ぼしかねない政策が回避されたばかりでなく、与党が選挙公約に挙げた追加の住宅政策の効果が期待されます。これまで手控えられていた住宅投資や企業投資が動き始める見通しです。

インドでも、ナレンドラ・モディ首相が率いる与党・インド人民党(BJP)が予想外に議席数を伸ばし、下院の過半数を確保しました。政治的な不透明感の払拭で、様子見にあった民間投資や自動車購入等の内需を中心に景気は持ち直すでしょう。

モディ首相が1期目に掲げた雇用改革や土地収用法の審議が進展すれば、市場は持続的な成長への足掛かりと評価しそうです。特に注目される政策は、今後5年で約160兆円に上るインフラ投資の加速です。農家所得の倍増政策も消費の下支えとして期待されます。

ようやく民政化したタイ

タイでは、2014年に発生したクーデター以降、軍事政権が続きましたが、3月の選挙を経て民政へ移管されました。とはいえ、プラユット・チャンオーチャー暫定首相が首相に選出されたことで、実質的な親軍政権は継続。親軍政の「国民国家の力党」は連立で下院の過半数を確保しましたが、これまでの軍政権下よりも政治の決定スピードは緩やかになるでしょう。

新政権の注目は、CPTPPへの参画です。これまでは軍事政権に対する国際社会からの批判もあり、通商政策を進めにくかったのですが、今後は民政下で信認を築き、交渉が進捗するものと期待されます。

タイはカナダ、メキシコとは自由貿易協定(FTA)を締結していないため、輸出の拡大余地は大きいでしょう。このほか、大規模投資が行われる東部経済回廊(EEC)の開発や、重要産業として掲げる医療機器や自動化機器、バイオ関連などの政策が継続される見通しです。

インドネシアでは、ジョコ・ウィドド大統領の再選により穏健改革路線が継続される見通しです。選挙の様子見で手控えられた自動車購入が回復に向かうでしょう。さらに、政府が2018年11月に示したものの棚上げになっている、外資出資比率規制の緩和策(対象25業種)などの改革進展が注目されます。

フィリピンでも、総選挙で支持されたロドリゴ・ドゥテルテ大統領による体制強化の下、同政権が掲げるインフラ投資の拡大や税制改革の進展が引き続き注目されます。

米金融緩和観測は追い風

さらに、金融政策の転換観測はアジア新興国にとって追い風となりそうです。米国の利下げ観測の台頭とともに、アジアでも金融緩和に動いており、2019年に入ってからインドは3回の利下げを決定。5月以降、マレーシア、フィリピン、豪州が相次ぎ利下げを決定しました。

中国は5月6日、中小銀行の預金準備率を10~11.5%から8%へと、5~7月に3段階で引き下げる方針を発表。6月7日には、易綱・人民銀行総裁が「金融政策を調整する余地は膨大にある」と言明しました。

昨年までの米利上げ局面では、通貨安対策を視野に、アジア各国中銀は金利を引き上げざるを得ませんでした。しかし、米利下げ局面への転換観測と各国の落ち着いたインフレ見通しを背景に、今後は利下げが各国景気の下支え役として働く見通しです。

<文:シニアストラテジスト 山田雪乃>

(大和証券 執筆班)

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