倍率7倍も珍しくない「公立中高一貫校」、公立中学と何が違うの?

MONEYPLUS / 2019年7月15日 18時0分

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倍率7倍も珍しくない「公立中高一貫校」、公立中学と何が違うの?

中学受験に関する数字を森上教育研究所の高橋真実さん(タカさん)と森上展安さん(モリさん)に解説いただく本連載。

首都圏では、根強い人気を誇る公立中高一貫校。高倍率、高偏差値で「私立中学以上に受かるのが大変」というイメージを持っている人も多いことでしょう。

公立であるにも関わらず、「対策なしでの合格はまずない」と言われる理由とは?その人気の秘密についてお二人に教えていただきます。

今回の中学受験に関する数字…一都三県22校


高い人気の公立一貫校、東大合格が二桁の学校も

<タカの目>(高橋真実)

首都圏にある公立中高一貫校(以下公立一貫校)の数は現在22校。内訳は、埼玉3校、千葉3校、東京11校、神奈川5校です。

公立一貫校の先駆けは埼玉県立伊奈学園中学校で2003年の創立。伊奈学園総合高等学校に併設するかたちでスタートしました。公立一貫校には、完全一貫型の中等教育学校と、伊奈学園のように高校からの入学生もある併設型の2つのタイプがあります。

その後、2005年の都立白鴎高等学校附属中学校を皮切りに、公立一貫校が次々と開校していきます。特に「6年一貫教育に興味はあるけど、私立はコスト的にちょっと…」というご家庭を中心に人気が高まっていきました。

選抜方法は適性検査型入試と小学校からの報告書によるもので、早い時期から塾に通って受験対策をすることに抵抗感のある保護者をとらえたことも人気の要因の一つとなりました。

その後、東大をはじめとする難関国立大や早慶への進学実績が出ることで、ますます人気が高まります。今年、都立小石川中等教育学校では16人(1学年約150人)が東大に合格しています。また、首都圏のほとんどの公立一貫校が東大合格者を出しています。

公立一貫校の人気は中学受験全体に影響を与える

このような実績もあって公立一貫校の人気は定着し、当初ほどではないものの、最近でも4~7倍と高い実質倍率になっています。特に女子の倍率が高いのが特徴です。

そして、高い人気によって偏差値も高くなっています。たとえば、都立小石川中等教育学校では男女ともに66、千葉県立千葉中学校では男子65、女子66とかなりハイレベルになっています(偏差値は四谷大塚による)。

こうした公立中高一貫校人気は、様々な面で中学入試に影響を及ぼしています。
 
1つは、私立中学での適性検査型入試の広がりです。公立中高一貫校の人気が高まるにつれ、私立中学では、同様の適性検査型入試を行う学校が増えました。これによって、公立と私立を併願する受験生や、公立の「お試し」として私立中学を受験するケースが増えました。

公立一貫校受検に対応したクラスを持つ塾の中には、公立一貫校不合格者の1/3が私立中学に進学するというところもあり、私立中学にとっては、新たなチャンスが広がったとも言えます。

もう1つの影響は、地域の進学価値観の変化です。公立一貫校ができるまで、ほぼ無風状態と言われていた地域で「中学を受験する」ということへの意識が高まり、中学受験そのものが活発になったところもあります。

倍率、進学実績と、話題の多い公立一貫校ですが、本来の魅力はどんなところにあるのでしょうか。

公立一貫校と公立中学は何が違う?

<モリの目>(森上展安)

タカの目さんが今回取り上げた公立一貫校の校数が一都三県で22校というのは興味深い数字です。そのうち半分の11校が東京、そのまた半分が神奈川の5校で、千葉、埼玉は3校ずつと、そのように意図したわけでないないにせよ、私立中志望率に似た塩梅になっているように思います。

倍率7倍が珍しくなく、進学実績もその多くが「のべ数」だけでいえばGMARCHに8割台をマークするという、いわば付属並みの実績(ただし進学者数実数ではありません。念のため)と「話題が多い」公立一貫校の改めて魅力とは何かというのが今回の「お題」です。

モリの目としては、そもそもこの校数に注目をと申し上げたい。公立一貫校と公立中学は何が違うか。

ともかく校数が大違いです。通常、公立中学3校で公立高校1校の割合ですから、そもそも公立高校は3倍の倍率があってよいわけですが(高校進学率100%を前提としたとき)、実際、調べると東京に関しては通常の教育をする都立が186校で区市町村立中学が604校とありますからザッと3倍あるわけです。しかしそれでは高校全入時代の教育ニーズに合わないので、私立高校もあって推薦制度も加わると高校の倍率は基本的に1倍台です。

とはいえそれは最後の調整された倍率であって、可能性としては600の公立中学に対して進学重点校とそれに準ずる高校は合わせて14校ですから、25倍になります。しかしそこに内申による規制が入ります。

トップクラスはオール5に近い中学生に絞られますから7%として校数に置きなおすと42校。ですからこれに対して14校ですから3倍。実際はこれに学力テストの偏差値による更なる冷却化(受験しても合格しない可能性を示すことによって志望先をより低い偏差値校に変えさせる働き)を受けて、進学重点校でも2倍程度に落ち着くわけです。

オール4以上の成績の子が対象?

これに対して公立中高一貫校は公立小学校1286校に対して11校ですから単純に考えて100倍あっておかしくないのですが、ここでも内申でオール4以上に近い小学生を想定していますから、15%に当たる生徒の数を校数に置き換えると該当小学校数は200校。

これに11校(都立一貫校の数)となるので20倍程度ということになります。ただ小学生の場合、内申は中学ほど厳格ではありませんし、そうした成績層は国私立に半分抜けますから10倍程度が想定されることになります。

もちろん、オール4以上というのはモリの目の勝手な想定であり、都立高校のような明確な基準があるわけではありません。また「半分私立に抜ける」というのは公立中高一貫校の多くが立地する三多摩および下町地区の私立中進学率が10%弱であることからの想定です。

もっといえば公立一貫校を「トップクラスと位置付けている」としているのですが、これもあくまで受験界の見方であって、公立一貫校の全てがそういう学校像を目指しているわけではありません。

一学年200人、リーダーを養成する目的を持った学校が多い

とはいえ多くの公立一貫校はリーダー養成校であることを強調しているケースが多いことや設立の経緯から考えて受験界の見方は妥当だと思います(たとえば、小石川中等教育学校は事前に開成他、私立トップ校をリサーチしていた)。

もう一つ大事な点は小さな学校だということです。通常、公立高校は定員500人弱のところが多いのですが、公立中高一貫校は200人にかける定員で小さな学校が通例です。

この人数は全ての生徒の顔を先生が把握できる人数とされており、私立難関校でも灘、武蔵、桜蔭、女子学院、栄光などと多くの私立や筑駒など難関国立大付属校が採用している学校サイズです。

高校で学年400人規模ですと等積変形で中高一貫にすると学年200人規模になりますね。そう考えるとわが国の一貫校としての適正規模がこのくらいの人数だとも考えられますね。

学費の安さと共学校である点も魅力

最後に指摘したいのは「適性検査」方式の導入です。事実上の入試の導入です。

私立国立中学のように従来型の入試は「正解は一つ」のクローズドエンド。この入試問題形式は「定員」通りの合格者数をコントロールするのに適したやり方ですが、まさにそれは生徒数(定員)の制約からくるものであり、本来は学力の「質」で選抜したいので、そうするとオープンエンド(正解は一つとは限らない)の適性検査型こそ選抜に向いているといわれています。

公立一貫校はこれに内申を加味することで「量(生徒数)」をコントロールしているのだろうと思います。

このようにして公立一貫校の魅力はよく考えられて設計されたものだと思います。それにもっとも魅力的なのは国立大付属中学と同じで保護者負担が皆無に近いことですね。それと特に東京、神奈川にあって際立つのは「共学」の魅力でしょう。私立難関校の多くが別学の私立である東京、神奈川にあっては著しい特徴です。

以上、私立と差別化できる公立一貫校の魅力を考えてみました。

(森上教育研究所)

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