パワハラ、あおり運転に効果?「弁護士保険」とはどんな保険か

MONEYPLUS / 2019年9月2日 18時0分

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パワハラ、あおり運転に効果?「弁護士保険」とはどんな保険か

法的なトラブルに巻き込まれた時、「どこに相談したらいいのか……」と困った経験がある方もいるのではないでしょうか。そんな際に役立つかもしれない、弁護士を紹介してくれて、法律相談料や弁護士費用もカバーできる「弁護士保険」が、少しずつ広がっています。

8月には、フリーランス事業者を対象にした保険に、損保ジャパン日本興亜が参入すると発表。自宅に弁護士保険のステッカーを掲げる人もいるそうです。いったい、どんな保険なのでしょうか。


円満解決に役に立つ?

東京都内の40歳代の男性は今年、弁護士保険を使い、賃貸住宅を退去する際の大家とのトラブルを円満に解決できたといいます。15年間ほど住んでいた部屋を退去する際、大家さんから「原状復旧に100万円ほどかかる。敷金だけでは賄えないので追加で払ってほしい」と言われたそうです。

確かに、入居中に洗濯機のホースが外れて床板の一部が腐食するなど、心当たりはありました。しかし、提示された金額はあまりに高額。保険を使って弁護士に相談すると、大家と自分の負担分を整理してくれ、原状復旧の方法へのアドバイスをもらいました。弁護士の見解を元に復旧方法などを交渉し、5,6万円の費用負担で済むことになったそうです。

「どう交渉すればいいかわからず、感情的になりがちだったが、弁護士に相談したことで論理的に話ができた。納得感も大きかった。弁護士保険は争うための武器というより、円満解決のためのツールと感じました」と、この男性は話します。

弁護士が増えてもハードルは高いまま

2018年の弁護士登録者数は4万人を超え、ここ20年で倍増しています。近隣トラブル、離婚や相続などの家族問題、会社でのパワハラやセクハラなど、法的なトラブルは増えたようにみえても、弁護士が身近な存在になったとはいえません。

少し古い調査ですが、2011年に内閣府が行った法律支援に関する世論調査によると、「10年前に比べて法的トラブルが増えていると感じますか?」という問いに、「増えた」と答えた人は87.6%。「法的トラブルにあったときに相談できる弁護士がいない」と答えた人は80.4%に上りました。

また、弁護士への相談を迷う、または相談しないという理由に、62.8%の人が「費用が高そうだから」と回答。知り合いの弁護士がいないこと、費用が高額であることが、法律の専門家へのアクセスを妨げていることがわかります。

実際に、弁護士費用は安くはありません。仕事を依頼する前の「法律相談」で、相場は1時間5000~1万円ほど。離婚調停や交通事故の裁判では着手金だけで数十万円、さらに結果に応じた報奨金や実費がかかり、弁護士費用は総額で100万円を超えることも珍しくありません。

無料で法律相談ができる「法テラス」などもありますが、利用には経済状況などによる制限があります。

国内では2013年から販売

弁護士保険は、2013年にプリベント少額短期保険が国内で初めて販売を始めました。同社の創業メンバーである香月裕也さんは、知り合いの弁護士から「医療の世界には健康保険があるけど、弁護士の世界には保険がない。弁護士を付ければ救われる人がたくさんいるのに」と言われたことが、事業を始めるヒントになったと話します。


「やっと弁護士保険というものが知られるようになりました」と話す香月さん

それまでも、自動車保険に付帯する弁護士特約はありましたが、使えるケースは限定的でした。一方、個人向けの弁護士保険では、事故や災害などによる損害や、離婚や相続などの家庭問題、近隣とのトラブル、医療過誤など、さまざまな問題に対応できます。付帯サービスとして、電話やチャットで弁護士に相談し、アドバイスをもらうこともできます。

月額約3000円と手頃なこともあり、同社の加入者数は約1万4,000人を超えました。30~50歳代が多く、家族を持ったり、会社で管理職になったりと責任が重くなったりするにつれ、「トラブルに備えたい」と加入するケースが多いそうです。

特に相談が多いのは、自動車事故で過失割合に納得できない、相手が対応してくれないなどの自動車事故関連。また、パワハラやセクハラ、賃金未払いなどの労働問題も多く、支払い実績はすでに4,000件を超えたといいます。

ステッカーでトラブル予防?

日本弁護士連合会の資料によると、弁護士費用保険は、ドイツで全世帯の約4割、英国で人口の約6割が加入しています。香月さんは「自分の思いをちゃんと主張できる環境を持つことが大切です。高いお金を払わなくても弁護士を頼めれば、安心感を持てるし、トラブルを未然に防げる。必要な時に正しく弁護士を使ってもらえるサービスにしたい」と話します。

同社では加入者に、「被保険者証」と、「弁護士保険に加入しています」と大きく書かれた建物用、車用の2種のステッカーを配布しています。どちらもトラブル予防に効果があると好評だそうです。

ステッカーは警備会社「セコム」をヒントに作成。玄関に貼ると、「押し売りが減った」「ママ友が怪しい投資話をしてきたが、ステッカーを見た瞬間にいなくなった」などの声が寄せられたそうです。車用は顧客から要望で作ったもので、車の後方に貼ることで、あおり運転に合わないなどの効果を狙っています。

事業者向け保険も

弁護士保険を取り扱う会社は広がっており、現在4社が個人向け保険を扱っています。価格は最も安いもので月額1,000円程度。8月には大手としては初めて、損保ジャパン日本興亜がフリーランス事業者向けの保険に参入すると発表しました。

事業者向け、個人向けの両方を展開するフェリクス少額短期保険の広報担当者は、「法律の検討が十分にできず、泣き寝入りしている中小企業は多い」と話します。日弁連の調査によると、中小企業の約8割で顧問弁護士がおらず、約7割で法務部がないそうです。しかしヒアリング調査では、多くの企業が「法的トラブルを抱えている」と回答しました。

フェリクス少短の事業者向け保険では、社員との労務関連や未払いや契約関係などの取引先とのトラブル、債権回収などでニーズが高いそうです。広報担当者は「会計士、税理士はお金の問題は解決できますが、トラブルを包括的に解決できるのは弁護士だけです」と話します。

生活の中で訴訟に巻き込まれることは少ないかもしれませんが、「これって法律的にどうなの?」と思うことは多々あります。そんな時に気軽に相談できるツールがあれば、必要以上に悩んだり、腹を立てたりすることは減りそうです。弁護士の知り合いなんていない、という人は、保険を検討してみてもよいかもしれません。

(澤本梓)

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