プロ野球ファンに朗報?「ヤクルトの優待変更」は“神宮通い”に追い風か

MONEYPLUS / 2019年9月15日 7時30分

写真

プロ野球ファンに朗報?「ヤクルトの優待変更」は“神宮通い”に追い風か

ヤクルト本社が9月10日、株主優待の内容を一部変更するリリースを出しました。この変更、もしかすると、セ・リーグを中心とした全国のプロ野球ファンに関係が出てくるかもしれません。

なぜ、そんな事態になっているのか。まずは今回の優待内容の一部変更について、少し詳しく見てみることにします。


一時的な資金負担でゲットできたタダ券

個人投資家にとって、株主優待は配当と並ぶ重要な指標です。優待だけで生活費を賄う人がいろいろなメディアに登場している場面を目にしたことのある人も、多いのではないでしょうか。

ヤクルト本社は年に2回、優待を出しています。3月末時点の株主に対して6月に出している「3月優待」と、9月末の株主に対して翌年3月に出している「9月優待」です。前者はヤクルト製品の詰め合わせ、後者は明治神宮野球場で開催される東京ヤクルトスワローズのチケットとの引替権利証。今回、変更対象となっているのは9月優待のほうです。

実はこの9月優待、神宮球場に通う首都圏在住の熱狂的なプロ野球ファンにとって、かつては必須アイテムでした。なぜ「かつて」なのかは後述するとして、つまり優待を「投資した結果、付いてくるリターン」としてとらえているのではなく、チケットをタダで入手することを目的に投資をするという行動様式だったのです。

3月優待が権利確定の3ヵ月後にあたる6月には送られてくるのに対し、9月優待は翌シーズンのチケットが発売になる時点までに届けば良いので、送られてくるのは翌年3月。逆に言えば、翌シーズンのチケット狙いであるのなら、前年の9月末時点で株主になっておく必要があります。

同社は、優待対象に連続保有期間の縛りをかけていません。配当も年2回出していますので、3月末時点の株主に対して支払われる配当もいらない、3月優待もいらないというのなら、9月末時点で株主としての権利を確定させたら株を売却し、また翌年9月末の権利確定に間に合うように株を買えば、優待も配当ももらえて、資金が寝るのはほんの一時で済みます。

恩恵はスワローズファン以外にもあった

この優待を必須アイテムとしていたのは、スワローズファンだけではありません。ビジター球団のファンも同様です。

外野スタンドに通う熱狂的なファンは、遠征先に追いかけていく分も含め、年間に50試合近く観戦する人もまれではありません。それだけお金もかかりますから、1枚でも多くタダ券が欲しいわけです。

スワローズの対戦相手であるセ・リーグ5球団のファンの中で、ジャイアンツのファンは東京ドーム、ベイスターズのファンは横浜スタジアムと、それぞれホーム球場で見たいというマインドが強いので、さほど“神宮通い”に熱心ではありません。ドラゴンズファンはそもそもあまり人数が多くありません。

これに対し、カープとタイガースのファンは、ホーム球場が離れているうえ、熱狂的な人も多く、知恵を働かせる人の数もおのずと多くなります。

スワローズの観客動員数

先行販売狙いで、スワローズファンではないのにスワローズファンクラブに入会するのは基本中の基本。さらに踏み込む人は、ヤクルト本社の株式を買うところまでやっていたわけです。

そもそも神宮球場はビジター・ファーストな球場です。他の球場はビジターファンが応援できるエリアがかなり限定されていますが、神宮はかなりオープンなので、ビジターファンにとって極めて居心地の良い球場なのです。

3年前の全席指定導入で“使えない優待”に

では、なぜ過去形なのか。それは、スワローズが2016年シーズンから、外野席に全席指定を導入したことが原因です。

2015年シーズンまで、神宮の外野はグラウンドに近い下半分は指定席でしたが、上半分は自由席でした。しかし、1人で何席も占拠するファンに対する不満が別のファンから出たため、混雑が予想されるゲームについては全席指定とするようになりました。

しかし、優待で送られてくるのは「外野自由席と引き替えができる株主優待証」です。これを、観戦したいゲームの開催日当日の試合開始3時間前以降に球場のチケット販売窓口へ持っていくと、外野自由席のチケットがもらえるわけです。

引き替え可能な枚数は100株以上1,000株未満の株主は4枚、1,000株以上の株主は24枚。1度に行使できるのは4枚分までです。あくまで外野自由席のチケットに交換するというものなので、全席指定のゲームでは使えません。

全席指定のゲームは年々増え、今シーズンは神宮開催67ゲーム中、実に53ゲームが全席指定。優待が使えるゲームは14ゲームだけで、その14ゲームの内訳も、ベイスターズ戦が4ゲーム、ジャイアンツ戦と交流戦のソフトバンク戦が3ゲームずつ、阪神戦、中日戦、交流戦のロッテ戦、オリックス戦が1試合ずつで、カープ戦はゼロ。

つまり、カープファンにとってはまったく意味のない優待になり、カープ以外のビジター球団のファンにとっても、ほぼ使えないものになってしまったのです。

今回の変更でどう変わる?

今回の変更点は4点。まず、優待証に代わって引き替え申し込み用のIDとパスワードの交付になります。2点目が、全席指定ゲームでも使えるようになるという点。3点目が、ゲーム開催当日ではなく、それ以前に引き替えが可能になる点。4点目が、球場窓口ではなく、Webサイトやコンビニの発券機での引き替えが可能になるという点です。

全席指定ゲームで使えるのは朗報なのですが、実は「特定試合を除く」というただし書き付き。「特定試合」とは混雑が予想されるゲームで、来年2月頃、どの試合が特定試合になるのかが発表されます。

カープ戦は毎試合大混雑ですから、結局、来シーズン以降もカープ戦では優待は使えない状態が続く可能性があります。さらに、来シーズンは東京オリンピックが開催されるため、日程や開催場所が変則的になり、詳しいことは来年2月までわかりません。

それでも、9月末時点で株主になっていないと優待の対象にはなりません。ヤクルト本社株は1単元買うのに60万円前後かかります。業績が好調で、現在の株価は10年前の3.6倍です。

ヤクルト本社の業績

一時的とはいえ、個人には気軽に手が出せる金額ではありません。今回の変更をもってしても、9月優待狙いの買いが膨らむ期待は薄そうです。

(伊藤歩)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング