投資先選びの新基準?「水の使用量を減らした会社」の株価が好調な理由

MONEYPLUS / 2019年11月18日 6時0分

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投資先選びの新基準?「水の使用量を減らした会社」の株価が好調な理由

近年、「食料不足」と並んで、将来に向けた世界的な大きな懸念の1つとされているのが「水不足」です。

社会科学の分野には「仮想水」という考え方があります。その国が輸入している農畜産物や工業製品を、国内で生産するとした場合に必要な水のことです。

実は、日本ではこの仮想水の輸入がとても多い国です。それもそのはず、食料の多くを輸入しているからです。となると、「世界的な水不足 → 農産物が十分に供給できない → 日本の農産物の輸入ができなくなる → 日本の食糧不足」ということが心配されます。将来に向けて、私たちも水資源を大切にしていかなければなりません。

こうした姿勢は企業にもみられます。環境への配慮から「水使用の削減」を目標にする企業があります。排水を浄化して再利用したり、雨水を利用することなどで効率的に水を利用しようとの試みがなされています。

このような環境に対する企業の姿勢は、株式投資においてとても重要な観点です。いったいどういうことなのか、水使用の削減と株価との関係について考えてみたいと思います。


「水不足」がなぜそこまで深刻なのか

日本では今秋、大きな台風の上陸などで豪雨が相次いでいたので、水不足といってもピンと来ないかもしれません。しかし、一時的な大雨による濁流ではなく、私たちにとって必要なのは“清潔な水が年間を通じてコンスタントに供給されること”です。

国連環境計画(UNEP)の発表では、2025年までに、特に西アジア地域、北アフリカ地域、サハラ以南のアフリカ地域の国々を含む48ヵ国の18億人が「絶対的な水不足」に陥ると予測されています。

平たく言えば、特にアジアやアフリカなど中心に人口が増大しているため、生活に必要な水が不足する傾向にある、ということです。それだけではありません。食料を作るための農業や畜産業や、工業製品を造るにも水が必要です。

近年、環境に配慮する企業の株価パフォーマンスが高いという研究報告が少なからず見られています。その根拠は、環境への配慮ができる企業は長期的に収益面でも余裕があり、それが株高につながるということです。

また、環境にまで配慮できるということは、近年よく問題となる法令順守違反などの不祥事を許さない姿勢にもつながるとみられます。健全な企業経営により、長期的には安定した収益が期待されるからです。

「排出削減」では環境と株価に高い相関

実際に、前回の10月28日配信記事で「ゴミ排出量を削減した企業の株価が好調」である実証を取り上げましたし、9月27日配信記事では「温室効果ガスの排出を減らした会社の株価が好調」なことも示しました。

これらのゴミや温室効果ガスは、企業から排出されるものにクローズアップしたものでした。対して、今回のテーマである「水」は企業が使うものであり、過去2回の記事とは少し視点が異なっています。

「使うもの」という観点でも「削減」という企業側の行動が株価の好パフォーマンスにつながるようであれば、企業の環境に対する姿勢はさまざまな角度から見て株価に影響する関係が強い、といえそうです。

ただ、これまでの分析もそうでしたが、環境に関する情報を活用するにはちょっとした工夫が必要です。単純に「減らしたか否か」で見ると、たまたま工場の操業日数の問題で減ってしまったなど、企業の姿勢とは別の要因が影響してしまうからです。

「環境配慮で水を減らした企業」をどう分別?

そこで今回の分析は、次のように行っています。

東証1部で水使用量を公表している企業を対象に、毎年1回、8月末時点で取得できる水の量をチェックします。その量が3年前と比べて減っているかのデータで分類し、その後1年間の株式の平均収益率を見ました。

この「減らした企業」の取り扱いには注意が必要です。業況が将来厳しくなるとの見込みから工場の稼働を減らした場合には、水の使用も大きく減ります。会社全体の事業の活動量を示すものとして「売上高」を用いて「水使用量÷売上高」で判断しようとしても、売り上げと連動せずに、たとえば先行して稼働を減らすなどのケースもあるでしょう。

ですから、「大幅に減った」と、企業の環境への配慮を意図した中で水使用の削減として「ある程度減らした」とに分類します。それ以外は基本的には「水使用量÷売上高」が増えてしまった企業になります。

とはいえ、微妙な水使用量の変化が企業の努力か判断するのは難しいもの。そのため、「水使用量÷売上高」で見て、3年前と比べて0.000001ポイント以上減らした企業を「ある程度減らした企業」としました。分析の趣旨から、この「ある程度減らした企業」が水使用量の観点で環境への配慮姿勢を強めている、というものです。

なぜ温室効果ガスより関連性が強いのか

下表で示した収益率は、2010年以降でさらに平均しています。結果は、事前に予想どおりとなりました。「ある程度減らした企業」の平均株式収益率(その後1年間)は14.1%となり、他の分類を上回りました。

【東証1部上場企業の水利用の削減の有無とその後の平均株式収益率】

大幅に減った企業 ある程度減らした企業 それ以外の企業
その後1年間 11.7% 14.1% 13.6%
その後3年間 50.7% 62.6% 59.9%

(注)「その後1年間」は2010年以降、8月末での東証1部企業の水利用合計÷売上高が3年前と比べて「大幅に減った(0.001ポイント以上)」「ある程度減らした(0.000001ポイント以上)」「それ以外」で分類し、その翌月から1年間の株式収益率の平均をさらに時系列で直近まで平均。同様に「その後3年間」は翌月から3年間の株式収益率の平均をさらに時系列で直近まで平均
(出所)Bloombergのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

さらに、長期的な株式パフォーマンスを分析するために、その後の3年間の収益率の平均も見てみました。こちらも「ある程度減らした企業」の平均株式収益率(その後3年間)は62.6%と、他を上回りました。

水使用量の削減は、モノを大切にするという企業の意識ともつながってきます。再利用や雨水を利用することで、限られた資源を有効活用しようという発想があるからです。

環境への配慮という観点もそうですが、モノを大切にしようとする企業の株価パフォーマンスが高いのは、企業倫理が優れているという点からも当然の結果といえるでしょう。

(吉野貴晶)

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