パイロットがいない!? 「AIRDO」の運休が深刻に

MONEYPLUS / 2017年11月27日 6時30分

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パイロットがいない!? 「AIRDO」の運休が深刻に

東京-札幌などの空路をつなぐ航空会社「AIRDO」が、2018年2月の大幅な運休を発表しました。理由はパイロットが確保できないためです。

このパイロット不足は「2030年問題」と呼ばれ、今後ますます深刻になるといわれています。日本の空は大丈夫なのでしょうか?

安い空の旅は続けられるのか――。状況をまとめてみました。

AIRDO大量運休の影に乗員問題

11月16日、AIRDOは2018年2月の計26便を運休すると発表しました。10月末には11月運航予定だった34便の運休が告知され、問題になったばかりでの新しい大量運休です。

原因は8月と10月に機長が相次いで退職したこと。結果、乗員のやりくりがつかなくなったというのです。

本当は副操縦士が昇格できるとよいのでしょうが、実はこれにはとても時間がかかります。規程の機乗経験時間を積まないと機長にはなれません。

そうなると外国人機長を雇うしかないわけですが、これがまた人材不足。つまりパイロット不足は日本だけでなく世界の問題なのです。

乗員不足にはふたつの要因があります。

ひとつは1990年代から2000年代の規制緩和によって航空会社の経営が厳しくなった際に、世界的にパイロットの雇用が抑制されたこと。もうひとつは、中国やインドなど新興国が成長し、主にアジアでの航空需要が増えたことです。

これらの現象には皮肉なタイムラグがあります。説明しましょう。

安く航空機に乗れるようになった結果

航空会社はIATA(国際航空運送協会)という組織の下で、長らく合法なカルテルが国際的に認められていました。

主に1990年頃までの話ですが、航空運賃はとても高く、その設定された運賃によって安定した航空会社の経営が行われていました。

ところがジャンボジェット機が登場して以降、この料金体系が崩れ始めます。機体が大きいため、正規料金以外の乗客も確保しないと座席が埋まらないのです。

そのため、団体用の航空券をバラ売りし、個人旅行客に販売することが黙認されるようになりました。これが格安航空券の始まりです。

1990年代になると、航空会社を守ってきた、さまざまな規制がアメリカを中心に緩和されるようになりました。規制を実体に合わせるためです。

アメリカで導入されたマイレージも、当初は「航空会社の収入を減らす」と日本では導入を見合わせてきたのですが、それでは米国系の航空会社に勝てないということで押し切られます。

こうして「航空料金は高い」というそれまでのイメージがなくなり、誰もが安く利用できるようになりました。しかし、その結果、航空会社の収益性は下がります。そして、日本、そして世界的にパイロット採用が抑制される流れができたのです。

遅れてきた新興国ブーム

さて、それから10年ほど遅れ、新興国ブームが起こりました。

今では中国も先進国入りをしていますが、2000年ぐらいまではまったく違う状況でした。現在、北京や上海の道路を埋め尽くすのは自動車ですが、90年代、市民の大半は自転車で移動していたものです。

そこから中国経済は急成長。中国人が大挙して日本を訪れたり、日本だけでなくアジア諸国にも頻繁に出かけたりするようになりました。それに少し遅れ、ベトナムやインドネシアといった近隣諸国でも同様の経済発展が始まります。そして、航空需要が急増するのです。

それなら、新しいパイロットを採用すればいいじゃないかという話なのですが、残念ながらパイロットの育成には時間がかかります。入社から訓練期間が4年、20代後半でようやく副操縦士になりますが、機長になるためはさらに10年以上かかります。

つまり、先見の明を持ち、中国経済が伸び始めた頃にパイロットを採用した航空会社で、ようやく今、新しく機長に昇格できる人材が育つ。それほどに時間が必要なのです。

生き延びるために決行された大量リストラ

航空業界には、2030年問題と言われる大きな悩みごとがあります。

この時期、大量の機長が退職する予定にも関わらず、後釜となる副機長が十分に養成されていないのです。現在、パイロットは少子高齢化型のいびつな年齢構成になっています。

この理由は、リストラです。911テロ、リーマン・ショック……、その度、企業として生き延びるために航空会社は大量のリストラを行いました。需要が下がり、便数を減らしたので、地上職の社員だけでなくもちろん給料の高い乗員もリストラ対象です。

その際に、機長を温存しながら、即戦力ではなかった副機長を大量リストラしてしまったのです。

そして、今になって2030年問題がクローズアップされているのですが、今から採用を始めても微妙に間に合わない。

そして機長を育成したとしても、問題が勃発する頃には資金に余裕がある航空会社に引き抜かれてしまい、先行投資をした会社が割を食うことにもなりかねません。

現実に、日本の航空会社は「外国人パイロットの確保を強化して、この問題を乗り切る」と言っているのですが、海外の航空会社から見れば、これは先行投資をしたがゆえに損したことになってしまうわけです。

業界全体で起きるパイロット不足――解決のためには世界的な取り組みが必要となりますが、さて、どう乗り越えていくのでしょうか。

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