「ステルス値上げ」実施企業の株価は上がる?下がる?

MONEYPLUS / 2018年7月11日 19時0分

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「ステルス値上げ」実施企業の株価は上がる?下がる?

2年間の海外生活を終え、2ヵ月前から東京で生活をしていますが、いろいろなものの中身が少なくなったと思うことが何回もあります。コンビニエンスストアのお弁当やスナック菓子、牛乳やペットボトル飲料など、日常の中でよく手にする商品が軒並み小さくなった気がします。

皆さんはいかがでしょうか。今回は、この現象とそれがマーケットに与える影響を見ていきます。

日本で感じた違和感の正体

筆者が上記のような体験をした際、中身が少なくなった気がすると同時に、別の違和感を感じました。それは「値段は変わっていない」ということです。

中身が少なくなって値段も下がっているのであれば、それに対してさほどの違和感は感じません。しかし、中身が少なくなったにもかかわらず、値段は据え置かれているのはおかしいでしょう。

そんな違和感を持ちながら実際に統計データを見てみると、かなりの商品で同様の現象が起こっているようです。日本の消費者物価指数を発表している総務省のホームページを見ると、2012~2017年の5年間にジャムやふりかけ、アイスクリーム、マーガリン、チョコレートなど、主に加工食品を中心にこの事象が見られています。

このように、中身が少なくなったにもかかわらず、値段は据え置かれている現象を「実質値上げ」といいます。値段は変わらないのに中身は少なくなっているため、事実上は値上げをしているのに等しいからです。

少しうがった見方をすれば、中身を少し減らす分には消費者は気づかないだろうとコソっとやっているようにも思えるため、「ステルス値上げ」と呼ばれることもあります。こちらはレーダーに探知されにくいステルス戦闘機からきています。

消費者は値上げに気づいている

5月の全国消費者物価指数(生鮮食品・エネルギーを除く)は前年比+0.3%と、3ヵ月連続で上昇率が縮小しました。季節調整値で見ると前月比で変化なしですが、それまでは2ヵ月連続でマイナスとなっており、日本の物価は依然としてほとんど上昇していないことがわかります。日本銀行の掲げるデフレ脱却はかなり厳しい状態にあるといえます。

このように物価が上昇しづらい環境にあるにもかかわらず、日銀が発表している「生活意識に関するアンケート調査」を見てみると、消費者は物価が上昇していると感じており、かつ将来的にも物価が上昇していくと考えていることがわかります。

この理由の1つとして、実質値上げの影響も挙げられるでしょう。

統計には反映しきれないステルス値上げ

総務省は、実質値上げに関しては消費者物価指数に反映しているとしています。

たとえば、調査対象の商品が値段は据え置きのまま、容量が165グラムから150グラムに減らされた場合、調査対象商品の価格には1.1(=165÷150)を乗じてCPI(消費者物価指数)を算出するため、値段が据え置かれている場合はCPIが10%上昇する計算になります。ちなみに、生鮮魚介や生鮮野菜などに関しては、100グラム当たりや1キログラム当たりという形式で重量換算して計算をしています。

しかし、たとえば「外食」などでは「1人前」という単位で計算をしているため、値段を据え置いたまま減量されてしまうと、そのステルス値上げは反映されなくなってしまいます。

また日本では、違う形でのステルス値上げも少しずつ増えているように感じます。

アジア各国に住んでいた筆者からすると、日本は無料の付加価値提供が多いと感じます。しかし、もしサービス提供側が経済的に苦しいながらも、値上げによって顧客が離れていくことを恐れるとすると、値段を据え置く代わりに、これまで無料で提供していたサービスをやめると思われます。その場合も、事実上は値上げになるわけですが、このようなケースも統計には反映されないのです。

シュリンクフレーションの株価への影響

上記のように容量を少なくして事実上値上げすることは、最近では英語のshrink(縮む)から「シュリンクフレーション」と呼ぶこともあるようです。このコーナーはMarket Plusという名前ですから、シュリンクフレーションが相場にどのような影響を与えるのか見てみましょう。

食品関連の銘柄では、山崎製パンが今年3月、原材料である小麦粉や乳製品、油脂などの価格上昇、物流コストや人件費の増加、カリフォルニアレーズンの収穫量が過去にない低水準となったことなどを理由に、5月1日出荷分から「芳醇レーズンロール」など3品目を値段据え置きのまま、内容量を減らすことを発表しました。

また、森永乳業は今年4月、酪農生産者や乳牛の飼養頭数の減少により生乳生産量の減少傾向が続いていることから、同様に5月1日出荷分から「クラフト細切りチーズ」など3品目を値段据え置きのまま、内容量を減らすと公表しました。

両社の株価推移を見ると、山崎製パンは値上げ発表の3月から株価を上げ、一方で森永乳業は値上げ発表の4月から株価を下げています。つまり、シュリンクフレーションが株価を動かす要因にはなることは間違いない半面、好感されるか、はたまたネガティブにとらえられるかは、その企業によってバラバラなようです。

前述の山崎製パンの場合は、ステルス値上げによって採算性が向上するのではないかと、素直に評価された形です。一方、森永乳業は値上げ発表後に自社サイトでの情報漏洩などもあり、株価は軟調な動きとなっています。

どんな値上げ企業の株価が上がる?

現時点では上場企業におけるシュリンクフレーションの例がそれほど多くないので、裾野を広げて、本来の意味での値上げをした企業の株価の動きも見てみましょう。

基本的には、値上げは「採算性の向上」や「値上げできるほどブランド力がある」と前向きにとらえられるケースも多いようですが、その企業に競争力がない場合などは「値上げ=顧客離れ」と考えられ、株価が軟調になるケースが散見されます。

たとえば外食産業では、昨年値上げに踏み切った「すき家」を運営するゼンショーホールディングスの株価は年初から株価を上げ続けていますが、同じく昨年に値上げを断行した鳥貴族は年初から株価を下げています。

牛丼チェーンの場合、日本国内では大手3社による寡占状態にあります。そのため、牛丼の値上げをしても、セットの種類や、追加可能なトッピングを工夫することで、顧客を逃がさないことも可能です。

対して、居酒屋チェーンの場合、鳥貴族と似たようなコンセプトの店が大量にあります。それゆえ、値上げがそのまま顧客離れにつながりやすいと投資家が受け止めたと推察できます。

今後は値上げを発表しそうな企業の株式に投資する際は、このような過去の事例を研究し、シュリンクフレーションがその銘柄の株価にどう影響するかを想定して動く必要があると思います。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)

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