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第1号被保険者の場合は手取りが増える? 社会保険の適用拡大により恩恵を受ける人とは

MONEYPLUS / 2024年9月24日 11時30分

第1号被保険者の場合は手取りが増える? 社会保険の適用拡大により恩恵を受ける人とは

第1号被保険者の場合は手取りが増える? 社会保険の適用拡大により恩恵を受ける人とは

2024年10月から、従業員数51人から100人の企業等で働くパートやアルバイトの方たちが一定の条件のもと社会保険に加入するようになります。今回は社会保険加入のメリット・デメリットをパターン別に解説します。


「被用者保険」とは?

ご存じの通り日本は「皆保険・皆年金」制度ですから、すべての方は何かしらの社会保険制度に加入します。自営業者などは、国民健康保険と国民年金に、会社員は「被用者保険」といわれる健康保険と厚生年金に加入します。

「被用者」は雇われている人という意味ですが、どういうところで雇われているのかによっても社会保険制度が異なります。まず「株式会社」などの法人は適用事業所となり厚生年金に加入します。従業員がおらず一人で事業をしている方も同様です。

2022年10月からは、従業員が常時5人以上いる弁護士、税理士といった士業の事業所についても社会保険加入が義務づけられました。適用事業所以外の勤め先であっても、従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となることもできます。

2024年10月から社会保険に加入することになるパートやアルバイトの皆さんは、まずお勤め先が社会保険加入をしている適用事業所であることが第一の条件です。その上で、これまでは同じ勤め先でもはたらき方により、社会保険に加入する人、加入しない人がいました。

その区分を端的に表現した言葉が「年収130万円の壁」です。なじみがある方もいるかも知れませんが、概ね年収130万円までであれば、お勤め先が厚生年金適用事業所であってもご自身は厚生年金被保険者にならず個人で国民年金に加入するまたは厚生年金被保険者の扶養の配偶者となります。

「年収130万円の壁」が「106万円の壁」に

しかし、2024年10月からは、年収130万円が106万円に変ります。具体的には以下の4つの条件をすべて満たした方は社会保険に加入します。

・週の勤務時間が20時間以上
・給与が月額88,000円以上
・2ヶ月を超えて働く予定がある
・学生ではない方

例えばご主人がサラリーマンでパートに出られている奥さん、つまり第3号被保険者の方々です。一方、同じ奥さんでもご主人がサラリーマンではないため、ご自身で国民年金保険料を払っている方やシングルの方も同様です。後述の方達を第1号被保険者と呼びます。

「年収の壁」という言葉と共にネガティブに情報が伝えられることもある適用拡大ですが、自らが社会保険に加入することで生じる影響は、第3号被保険者か第1号被保険者かによって大きく異なります。

第1号被保険者の場合は手取りが増える?

第3号被保険者の場合、これまで年金保険も健康保険も「被扶養者」として保険料を一切払わずとも社会保険に加入できていたので、同じ収入であれば適用拡大で自らが社会保険料を負担することになるため手取りが減少します。

厚生労働省が提示する例によると、月額給与98,000円で働いている第3号被保険者は現在の手取りが96,900円です。(雇用保険と所得税が差し引かれる)

しかし、2024年10月から社会保険に加入すると健康保険料が月4,900円、厚生年金保険料月9,000円の新たな負担が増えるので、月の手取りは83,500円になります。(自らが支払う社会保険料が全額所得控除となるため、所得税の支払はなくなります。)

これまでと収入は同じなのに年間16万800円も手取りが減るのですから「年収の壁」で損をしてしまうと言われるのも納得がいきます。

では、第1号被保険者の場合はどうなるのでしょうか。厚生労働省は、月98,000円のアルバイト代から国民健康保険料3,800円、国民年金保険料17,000円、雇用保険料600円差し引かれるので、手取りは76,600円というシミュレーションを示しています(自ら社会保険料を負担しているため、その額が所得控除となるため所得税の負担はありません)。

第3号被保険者と同様、社会保険に加入すると手取りが83,500円になりますので、第1号被保険者の場合、逆にこれまでより手取りが増えることになります。これは被用者の健康保険と厚生年金の保険料は労使折半といって雇い側が半分負担してくれる恩恵と言えます。特に国民年金保険料が17,000円だったところが厚生年金の自己負担保険料は9,000円ですから約半分に負担が減るわけです。

手取りが増える以外のメリットとは

給付面でもメリットが大きくなります。厚生年金に加入すると国民年金に上乗せされ2階建ての年金制度に加入できます。つまり、これまで国民年金の給付しか受けられなかったのが、厚生年金の給付も併せて受けられるようになるのです。年金は老齢・遺族・障害の3つの保険のパッケージですから半分の保険料で保障が拡大することになります。

例えば月98,000円の収入で厚生年金に20年継続して加入すると老齢厚生年金が約12万円上乗せされます。終身年金の受給期間を30年と仮定するとその価値は360万円です。さらに手取りが月6,900円増えた分を年平均3%で運用できれば20年で226万円もの資産を作ることができます。

またこれまでは、病気などで仕事を休むとその分だけ収入が減ってしまいましたが、被用者の健康保険であれば、4日以上働くことができなければ健康保険から所得補償として傷病手当金が最長1年半にわたり給付されます。金額は、給与の3分の2ですから大きな安心になるでしょう。

このように適用拡大によって第1号被保険者は大きな恩恵を受けることができます。いわゆる「年収の壁」に相当するデメリットはひとつもないと言えるでしょう。これが働き方にかかわらず等しく保障を受けられるようにという国の方針です。

扶養のままでいることは本当にいいのか

では第3号被保険者については、なぜ手取りの減少という明らかなマイナスを承知で適用拡大を行うのでしょうか? もちろん手取りの減少を収入の増加が上回れば、解消されることではありますが多くの方が、これまでと同様の働き方で手取りが減ってしまうことをネガティブ要件と考えています。

国としては、「被扶養者」は養われているのだから、万が一病気になって収入が減っても生活に困ることはないよね、老後も厚生年金の上乗せ分がなくても、養われているのだから問題ないよね、と考えているのではないでしょうか?

新聞報道などでは、今回の適用拡大で厚生年金に加入できるだけ働いていた人が、あえて働く時間を減らし扶養のままでいることを選んでいるケースもあるとしています。しかし筆者は本当にそれで良いのかと2つの疑問を感じることがあります。

まず、「安い労働力」に対する疑問です。雇い主としても、会社負担が増える適用拡大を嫌うところもあるでしょう。すると同じ賃金で社会保険料負担がない扶養のままで働く人は「安い労働力」として都合良く扱われているのではないかという疑問です。

もうひとつは、経済的リスクの備えに対する疑問です。配偶者が仕事を失ったり、病気になったり、あるいは亡くなったりした場合の備えとしては、自身の社会保険加入はひとつの選択肢となり得るでしょう。

適用拡大は、第1号被保険者の方であれば、手取り増を運用するなどさらに増やす計画を、第3号被保険者の方であれば、長期的な視野でご自身の生き方を考えるきっかけにされると良いのではと思います。そして働くすべての方がご自身の労働に対し正当な報酬を受け、それによりさらに豊かな暮らしを手に入れることが理想ではないかと考えます。

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(山中 伸枝)

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