運用成績を持たない新規設定のアクティブファンド、買うときには何で判断すべき?
MONEYPLUS / 2024年12月4日 7時30分
運用成績を持たない新規設定のアクティブファンド、買うときには何で判断すべき?
一般的に、「新規設定のアクティブファンドを買ってはいけない」といわれています。それには同意しますが、新規設定時に運用資金が集まらないと、そのアクティブファンドは運用を開始できません。どうすればこのジレンマを解決できるでしょうか。
新規設定のアクティブファンドを買ってはいけない理由
なぜ、新規設定された直後のアクティブファンドを買ってはいけないのかについては、いろいろなところで書かれているので、あまり詳しく説明しませんが、簡単にいうと過去の運用成績がないからです。
アクティブファンドは、日経平均株価やTOPIXなどの株価インデックスをベンチマークにして、それを上回るリターンを実現できるようなポートフォリオを構築して運用しますが、本当にベンチマークを上回れるかどうかは、運用を始めてみないと分かりません。だからこそ過去の運用成績が、運用の良し悪しを判断する際の重要な手がかりになるのです。
一方で、「マーケットの将来は分からないから、過去の運用成績は判断基準にならない」という意見もありますが、これは明らかに間違っています。
過去の運用成績は、リターンの再現性の有無を判断するためのものではありません。大事なのは騰落率ではなく、基準価額のボラティリティです。基準価額が最高値を付けた後、下落して底を打ったところまでの値幅を把握し、自身のリスク許容度と照らし合わせたうえで、そのファンドに投資するかどうか、投資するとしたら、いくらまで資金を投入できるかを判断するために、過去の運用成績が必要になるのです。
また株式市場をはじめとするマーケットは、景気動向に応じて、数年の時間をかけて大きなサイクルを描きます。こうした全体相場に対する基準価額の連関性を把握するためには、できれば5年程度の値動きは見ておきたいところです。したがって、新規設定から5年程度が経過したものを中心に選ぶのが、アクティブファンドを購入する条件になります。
日本版EMPに期待
ただ、そうなるとひとつ大きな問題が生じてきます。これは運用会社にとっての問題ですが、「新規設定ファンドを買ってはいけない」という認識が広まり、個人が皆、そのような行動を取ると、新規設定時の募集期間中に、運用資金が集まらなくなってしまいます。これでは運用をスタートさせることができません。
もちろん、規模の大きな運用会社であれば、自己資金を用いてパイロットファンドを立ち上げ、それを数年間運用して成果が上がったら、一般向けに公開販売するという方法を用いることができます。実際、野村アセットマネジメントなどは、幅広い投資家に向けた商品提供を前提にしたパイロットファンドを立ち上げて、運用しています。
問題なのは、独立系など何の実績も無い状態でスタートしなければならない運用会社です。前述したように、「新規設定ファンドは買わない」という認識が広まると、運用資金を集めることができず、運用を開始できません。
この問題をクリアするために、2023年12月からスタートしているのが、「日本版EMP(エマージング・マネジャーズ・プログラム)」です。これは銀行や保険会社など、多額の資金を運用している金融機関に、その運用先として新興運用会社を活用してもらうための施策です。三菱UFJフィナンシャルグループは中期経営計画で、EMP投資枠として2023年度の400億円を1600億円まで拡大する方針を打ち出していますし、三井住友トラスト・グループは2030年度までに、新興運用会社への投資を含めて最大1兆円規模の資産運用戦略投資枠を設定しています。
日本版EMPがスタートしてまだ1年未満なので、本格的な動きが出てくるのはこれからだと思われますが、EMP投資枠を通じて新興運用会社に運用資金が供給されるようになれば、その資金をベースにして、新興運用会社は運用成績を作ることができます。こうして5年程度の運用成績を作ったうえで、一般向けにファンドを販売すれば良いのです。
漠然とした運用哲学では駄目
とはいえ、日本版EMPで新興運用会社が大手金融機関から運用資金を引っ張ってくるためには、相応に大手金融機関が運用先に指定したいと思わせる「何か」が無ければ駄目で、それが叶わないならば、新興運用会社は自ら運用資金を集めるしか方法がありません。
一方、個人が過去の運用成績を持たない新興運用会社のアクティブファンドを購入するとしたら、唯一の拠り所は、その新興運用会社が示す運用哲学になります。それを腹落ちさせ、強く信じて長期間、保有し続けられるかどうか。それを自分自身に問う必要があります。
ちなみに運用哲学は、単に「いい会社に投資します」といった類の漠然としたものではダメです。どういう判断基準を用いて、どのようなプロセスで投資先の企業を選定しているのか。それを誰にでも分かりやすく説明できているかどうかを、チェックしてみて下さい。
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(鈴木雅光)
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