カローラクロス投入で再注目! 上半期4位、地道に売れ続けるカローラの強み[カローラシリーズが売れている理由]
MōTA / 2021年9月24日 22時50分
トヨタの老舗ブランド"カローラ”に新たなラインナップ「カローラクロス」が誕生した。初のコンパクトSUVモデルである。ただでさえ安定的に売れ続けるカローラシリーズの販売がますます盤石なものとなりそうだ。カローラシリーズ安定の秘密とは一体何だろうか。カローラの強さについて改めて検証してみよう。
堅調な販売を誇るカローラにSUVモデル「カローラクロス」が加わり、かつての勢いを取り戻しそうだ
気付けばトヨタの「カローラ」の販売が好調だ。2017年こそ、年間販売ランキング(一般社団法人日本自動車販売協会連合会調べ・軽自動車を除く)で12位まで落ちたものの、2018年に新型「カローラスポーツ」、2019年に「カローラ」(セダン)と「カローラツーリング」(ステーションワゴン)を新型に切り替えることで順位を回復。昨年2020年は11万8276台を売って年間3位となった。また、今年は1~6月の前半で4位と、まずまずのポジションを守っている。これに9月、新たなSUVモデル「カローラクロス」が加わった。これは販売台数的に相当に期待が持てる。
なぜかと言えば、前例があるのだ。カローラのひとつ下のクラスであるコンパクトハッチバック「ヤリス」のことである。
ヤリスシリーズの大躍進はSUVモデル追加が鍵! カローラにも同じことが起きる!?
ヤリスは、昨年の8月末にSUV版である「ヤリスクロス」を登場させた。そして、そのヤリスクロスが爆発的に売れたのだ。表立って数字は出ていないが、昨年8月から今年8月までの約1年で、なんと約10万台が売れている。もしもそれと同じだけカローラクロスが売れると、カローラの年間販売台数規模は20万台を突破してしまう。そうとなれば、2020年1位であったヤリスの15万1766台を軽々と上回る、文句なしの1位だ。
またもし半分の5万台規模でも、従来が約12万台なのだから、それでも1位を伺える。このところぱっとしなかったカローラが、ついに復権となりそうなのだ。
しかし重要なのは、年間約12万台を売るハッチバックやセダンなどの既存モデルの人気だ。なぜ、カローラは、それほど人気があるのだろうか。
セダン、ワゴン、そしてハッチバックと多彩なボディタイプを用意するカローラシリーズ
まず、カローラはどんなクルマなのかを確認したい。クラスはCセグメント。ハッチバックのスポーツ、基本のセダンと派生のアクシオ、そしてステーションワゴンのツーリングとフィールダーがある。アクシオとフィールダーは、異例となる旧型の継続販売モデルだ。5ナンバーのコンパクトなサイズ、かつ廉価ということで残された。
価格はハッチバックが約220万円~290万円、セダン(アクシオを含む)で約160万円~300万円、ステーションワゴンで170万円~300万円。全体として100万円台後半から300万円未満。中心は200万円台だ。かつては売れ筋と呼ばれたゾーンだろう。
カローラと直接競り合うライバル車は意外と少ない
では、そんなカローラのライバルは誰なのか?これが、今、冷静に考えてみると、あまりいないことに気づく。日産は「リーフ」しかいない。ホンダは「シビック」。マツダは「マツダ3」。スバルの「インプレッサ」。三菱自動車、スズキ、ダイハツにCセグメントの車種はない。ところが、いま名前を挙げた中でも、リーフはEV(電気自動車)であるし、シビックは約320万円以上もしてしまうから、カローラの直接のライバルとはならない。
つまり、現状でカローラのライバルと言えるのは、マツダ3とインプレッサしか存在しないのだ。
カローラは個人ユーザーに加え、法人ユーザーからの支持が厚いのも強い
カローラと、マツダ3、インプレッサは、個人ユーザーが所有するクルマと見れば、それぞれに個性があって、張り合える存在と言える。しかし、これらのクラスは個人だけでなく、ビジネスユース(社用車)も多い。そうしたニーズであれば、ぐっとカローラが前に出てくるのではないだろうか。マツダ3やインプレッサはスポーティなイメージが強すぎる。カローラの真面目そうなキャラクターは社用では逆に強みとなるのだ。また一時期のハイブリッド人気で、カローラの顧客を奪ったプリウスも近頃は元気がない。今年前半のプリウスの販売順位は15位である。プリウスから、ハイブリッドモデルもラインナップに加えたカローラへ戻ったユーザーも多いのだろう。
初代カローラから続く「80点主義」とは”コスパの良さ“のこと!?
しぶといとまで言えるカローラの人気。その理由は、やはり初代から続く「80点主義」にあるのではないだろうか。「80点主義」は誤解されることも多いが、本来的には「大衆車の平均点が50点であれば、カローラはその上の80点を目指す」というもの。最近では、「お客様の期待を超える」という言い方になっているが、意味するものは不変だ。言ってしまえば「コスパが良い」ということだろう。
そうした基本コンセプトを50年以上にわたって守り続けてきた愚直さ。それこそがカローラの強さの理由だ。
昭和から平成にかけて、カローラはベストセラーの代名詞だった。しかし、平成終盤にかけて、プリウスの台頭などによりカローラは失墜。しかし、令和になって、またカローラが復活する気配が濃厚になった。1966年の初代モデルから55年。カローラの栄光の歴史は、まだまだ続きそうだ。
[筆者:鈴木 ケンイチ/撮影:TOYOTA]
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