極細繊維で吸音性を高める:三菱ケミカル [人とくるまのテクノロジー展2018横浜]
MotorFan / 2018年5月23日 14時15分
超極細繊維によるダッシュインシュレータを展示していた三菱ケミカルホールディングスのブース。細くすると何が得られるのか、担当者に話を訊いてみた。
XAI(サイ)の繊維径は0.1dtex(直径3μm)。従来品が3.3dtex(直径20μm)というから、いかに極細であるかがわかろう。繊維を細くすると生地にしたときの間隙が小さくなる。繊維径が太いとすき間から抜けていきやすいのに対して、細かいとエネルギーが吸収されて音を小さくすることができる。
ならばなぜ、これまで細くしなかったのかと訊けば、生産性と価格という課題がある。このような繊維を製造する際には、シャワーヘッドのようなところから樹脂を押し出すという方法をとるが、細い繊維ということで面積当たりの穴を増やすと押し出された樹脂が隣同士でくっついてしまう。生産性を上げたいから穴をたくさん穿ちたい、しかしそうすると不良が生じてしまう。そのバランスが求められる。
超極細繊維自体は新しいものではなく、これまで同社では紙に用いたりという例があった。吸音材としての特質に着目し、トライし始めたのが約2年前という。
吸音性能が高まると、軽量化にも寄与する。薄くしても従来同等の性能が得られるのだ。下のグラフにその実力が現れる。従来品が黒い実線で、XAIを10wt%混合したものが緑、同じく30wt%が青、50wt%が赤い実線。とくに1000Hzまでの著しい減衰が特長だ。いっぽうで従来同等性能に照準を合わせ、軽量化に着目したのが緑の破線。XAIは10wt%の混合率で、重量は半分まで軽減できている。
近年、ハイブリッド車や電気自動車に端を発し、高級車に限らず静粛性を求められる車両が増えてきた。モーターやインバータが発するノイズ除去には親和性が高いかを訊いてみたところ、じつはこれらの高周波のエネルギー減衰はさほど難しくはなく、従来品でも可能だという。むしろ低周波のドーンというようなノイズ対策は難しく、上掲のグラフでも低周波から高周波までまんべんなくカバーできる性能が見て取れる。
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